なぜmixiの牧場アプリはヒットしたのか
ポイント1「ソーシャルグラフ」―リアルの繋がりが生きてくる
mixiには約2102万人のユーザーがいます。PCが52.3億PV、mobileが245.4億PVあります(2010年7月時点)。これだけアクティブなユーザーが存在するサービスがプラットフォームを公開すればそれだけの反響があります。mixiアプリの大きな魅力の1つとして、このmixiからの流入による膨大なPV数がありますが、単にPV数を当てにして、外部のコンテンツを持ってくるだけのアプリを作成しても、いずれは思ったほどアクセス数やユーザー数が伸びない、という壁にぶつかるでしょう。mixiアプリの本当のバリューはPV数ではなく別のところにあります。
mixiの成長の原動力であるリアル中心の「ソーシャルグラフ」を使ったアプリケーションを作れることがmixiアプリの一番の魅力です!
ソーシャルグラフとは、いわゆるマイミクやフレンドなどと呼ばれる友達との関係図のことです。ソーシャルグラフ(マイミク)の情報を使ったアプリはソーシャルアプリやソーシャルゲームと呼ばれ、それを開発する企業をSocialApplicationProviderと呼びます。mixiには日記、アクティビティ、招待、メッセージと言った強力なクチコミの手段があります。SNSの強みの1つに、クチコミの広まりやすさがあります。ユーザー1人当たりの平均マイミク数は約27人(2010年7月時点)ですが、若年層になると100~200人程度の人が多く、マイミクのマイミクとなると500人を超え、マイミクのマイミクのマイミクとなると指数的な広がりを見せます。これからはソーシャルが重要な考え方になるのです。
mixiのソーシャルグラフがほかのSNSと違うところは、実際に知っていたり、会ったことがある人が多く、実際の友達同士が繋がっているところです。乱暴な言い方をしてしまえば、赤の他人が書いた日記を読んでも何の感想もわきませんが、友達が書いた日記はそれだけで魅力的なコンテンツになります。“ツッツキ”たくなる人がそこにいる。そこがリアル中心のソーシャルグラフの面白さです。
ポイント2「コミュニケーション」―ただのゲームは流行らない?
mixiアプリを作るうえで踏まえておきたいのは、ユーザーはmixiにゲームをしにきているのではなく、暇つぶしをすること、そして「友達とコミュニケーションする」ためにアクセスしているということです。mixi内でよく使われる言葉に、「全国大会」と「マイミク大会」という言葉があります。単純な点数を競うタイピングゲームがあったとします。普通に遊んだあとに「あなたの順位は1万位です!」と言われてもそこに強い感情は生まれませんよね。これが「全国大会」です。ですが、遊んだあとに「あなたはマイミクの中で2位です!」と言われ、マイミクの点数がずらっと並んでいたらどうでしょう。友達に点数が負けていたら、「追い越してやろう」という気持ちや、「どうやったらそんな点数が取れるか聞きたい」という気持ちが沸いてきます。これが「マイミク大会」です。
ここで重要なのは、比較しやすいように遊んだ履歴を数字(レベルや得点)にすることと、コミュニケーションが発生するような設計にすることです。
コミュニケーションが発生しない:
- ブログパーツを設置したら終わり
- ただゲームが遊べるだけ
コミュニケーションが発生する:
- マイミクにイタズラしよう!
- マイミクと競争しよう!
- マイミクと一緒に敵を倒そう!
- マイミクと秘密を共有しよう!
ゲームの熱量というものは熱しやすいですが、比較的すぐに冷めてしまいます。しかしコミュニケーションの熱量はなかなか下がりません。mixiアプリはリアルの友人中心のソーシャルグラフというコミュニケーションで高い熱量を維持しているからこそ、これだけ幅広い人に受け入れられたのです。
mixiアプリ設計のポイントはこれだけではありません。第2回ではmixiユーザーにフォーカスする方法、ソーシャルグラフを最大限に活用する方法、そしてアプリの提供を続ける上で重要なマネタイズ手段について解説していきます。
- [編集部注] 3ページ目のPVの表記に誤りがあったため、修正しました。(2010.09.06)