データベースの最近の変化と動向
「NoSQL」が増える
リレーショナルデータベースは、非常に幅広い分野で使うことができます。そのため、現在のデータベースの市場では、リレーショナルデータベースが圧倒的に使われています。ただ、すべての場合においてリレーショナルデータベースが最適であるかと言うと、そうではありません。
例として、Twitterを考えてみます。Twitterは、ユーザー数が非常に多く、次々とデータが更新されていきますので、高速に大量のデータ(特に書き込み)を処理することが求められています。一方、データの構造は比較的シンプルです。また、扱っているデータは個人のつぶやきであり、金融関係などのデータと比べれば、重要度はさほど高くありません。このようなデータは、重厚なリレーショナルデータベースで処理するよりも、もっとシンプルで高速に動作するデータベースで処理する方が向いています。
このように、昨今ではリレーショナルではないデータベースが求められる場面が増えつつあります。その流れの中で、「NoSQL」と呼ばれるようなデータベースが徐々に広がっています。
「NoSQL」という語感からは、SQL(で操作するリレーショナルデータベース)に対して「No」を突き付けるようなイメージがあります。ただ、実際にはそうではなく、現在では「Not Only SQL」(SQLだけがデータベースではない)というような意味合いで、NoSQLという用語を使うことが一般的です。
NoSQLには、「これがNoSQL」と言うような明確な定義はありません。ただ、以下のような特徴があることが多いです。
- リレーショナルデータベースと比べて、何か(速度やスケーラビリティ等)に特化する傾向がある
- 大量のデータの処理に適している
- リレーショナルデータベースのテーブル定義とは異なり、明確なデータ構造を決める必要がない
- データの整合性を100%は保証しない
また、NoSQLに分類されるデータベースとしては、「キーバリューデータベース」「列指向データベース」「ドキュメント指向データベース」などがあります(図3)。これらについては、次回以降で具体的な例を紹介します。
図3:最近のデータベースの分類 |
HTML5でWebブラウザでもデータベースを扱える
インターネットの利用が広がるにつれて、Webブラウザ上で動作する「Webアプリケーション」が一般的になってきました。例えば、Webブラウザ上でメールの送受信を行う「Webメール」や、Webブラウザ上で動作するワープロ等のビジネスアプリケーションなどが存在しています。
しかし、Webアプリケーションを作る上で、従来のHTMLは機能的に決して十分だとは言えません。そのため、現在ではHTML5の仕様策定が進められていて、各WebブラウザもHTML5への対応にしのぎを削っています。
現状のWebの仕組みでは、Webブラウザ側にデータを保存する機能として「Cookie」があります。しかし、Cookieは扱える容量が小さく、Webアプリケーションのデータを保存するには不十分です。そのため、現状のWebアプリケーションでは、大きなデータはサーバーに保存するようになっています。
しかし、Webブラウザ側でデータを保存することができれば、これまで以上に便利なWebアプリケーションを作ることができるようになります。そこで、HTML5では、Webブラウザ側で大きなデータを保存できるような仕組みが搭載される予定です。
最終的に仕様が決まるまでにはまだ紆余曲折がありそうですが、現状では「Web Storage」「Web SQL Database」「Indexed Database API」という3つの規格が提唱されています。
本連載の後半では、これらのWebブラウザ上で動作するデータベースについて取り上げる予定です。
- 【参考文献】
- 藤本 壱『これだけは知っておきたい データベースの常識』技術評論社(発行年:2009)