CMSをツールだと考えるのは間違い

2011年3月17日(木)
生田 昌弘

情報に“壁”があってはならない

CMSの概念はWebサイトを究極の小売店に変ぼうさせる事ができます。例えば下町の商店街にある魚屋さんに、買い物中の主婦が訪れた場合を考えてみましょう。

「○○さん、いらっしゃい!」
これは、インターネットでよくある、「○○さん、こんにちは」というマイページです。

「今日はおいしいマグロが入ったよ」
新製品の紹介やお勧め情報。これはインターネットで言うリコメンドに当たります。

「4人分に切っておいたからね」
この魚屋のおじさんは家族構成も知っています。これが顧客データベースです。

「味噌つけて焼くとおいしいよ」
これは高付加価値情報に当たるでしょう。

こういった、お客さまとOne to Oneの関係を構築する事は、これまでの日本企業は苦手としてきました。しかしCMSの概念があれば、Webサイト上でこれを可能にします。

ただ、企業内の壁がWebサイトの成功を阻害している場合は多くあります。

例えば、プリンターを買いたいお客さまがいたとします。自分の使っているPCが、そのプリンターに対応しているか、Webサイトで調べたいと思ったとしましょう。

自分の欲しい機種のページにはプリンタードライバの情報が全く見当たりませんでした。なぜならプリンターを作っている事業部とドライバを開発している事業部が異なるため、Webサイトには関連する情報として掲載されていなかったのです。事業部縦割りで作られた事が原因ですが、これでは顧客の満足は得られるはずがありません。

企業内の壁はあってもいいでしょう。しかしお客さまとの接点において、それを感じさせるものであってはなりません。お客さまひとりひとりに対応して、ニーズに合わせたページを展開できるCMSの概念では、この企業内の壁を取り去りお客さまの満足度を高める事が可能です。

CMSの概念を理解してツールを正しく使う

CMSの概念が成しえる事は、お客さまの問題解決であり、お客さまの満足度をより高めるために、企業が検討しなければならない概念です。

この概念を具現化するのは何もCMSツールだけではありません。静的なページでも、100%ではないにしろ、この概念を利用すれば、お客さまの満足度を高める事ができるのです。

お客さまの問題解決になるコンテンツを、お客さまのニーズごとに整理整頓しておく。簡潔に言えば、これができていればよいのです。

プライオリティーが高いのは、CMSツールではなくて、問題解決ができるコンテンツであると言う事です。

もしCMSツールの導入をご検討されている企業の担当者がいたら、そのツールで一元管理すべきコンテンツはありますか?と自問自答していただければ、それがWebサイト構築の第一歩だと言えるでしょう。

コンテンツはたくさんあって、でもうまくWebサイトが構築できていない。そんな場合は、ぜひCMSツールの導入を検討してください。CMSツール導入の失敗の多くは、CMSツールを魔法のツールだと勘違いしているところに起因しています。

  • CMSツールは、コンテンツそのものを自動生成するわけではありません。
  • CMSツールが、データを整理してくれるわけではありません。
  • CMSツールが、自動でお客さまにデータを最適化してくれるわけではありません。
  • CMSツールが、自動でページのスペースに合わせて、文字数を調整してくれるわけではありません。
  • CMSツールが、勝手に承認者を決めてくれるわけではありません。

すべて、CMSツールを導入した会社がやれねばならないのです。

もちろん、上記の中には、無理をすればできる事もあります。しかし無理をする必要があるでしょうか?費用対効果が悪すぎます。

結論として、CMSツールは、表示されるデータが一定のフォーマットであり、コンテンツのくくり単位で、どこにでも表示可能なようなページの作りが必要になります。文字の増減にも対応できるページレイアウトが必要な事も、言うまでもありません。

図2:CMSの概念は、ユーザーが情報をストレスなく探せる構造を実現する(クリックで拡大)
規模がある程度大きくなったWebサイトにおいて、ユーザ視点で情報整理をする上で、CMSは有効に機能する。
株式会社キノトロープ

1993年12月にキノトロープを設立。一貫した方針で数々のWebソリューションを築き上げる。現在もネットエバンジェリストとして布教活動を行い、積極的に講演も努める。
著書に「Webブランディング成功の法則55」(翔泳社)、「CMS構築成功の法則」(技術評論者)、「Webサイト運用成功の法則」(ソフトバンククリエイティブ)等。
 

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