CMSをツールだと考えるのは間違い

2011年3月17日(木)
生田 昌弘

Webサイト構築前に必要な要素

CMSツールを利用した、Webサイト構築を行う場合、大前提として、以下の3つは構築の前に実施しているという想定でお話しします。

  1. コンテンツは、お客さまの問題解決ができるに十分にある
  2. お客さまごとの導線は、検証されている
  3. クライアントの成しえたい事(どんなサービスを展開したいか?)を理解している

最初にやる事は、コンポーネントの粒度の設定です。

キノトロープでは、見出しや写真、図版1枚の単位を“エレメント”と呼んでいます。エレメントが組み合わさって、日本語の正しい文章構造(理解しやすい)になって状態をコンポーネントと呼んでいます。ですから、エレメントの粒度設定がCMSツール導入の肝と言えるかも知れません。

粒度設定が一定でなければ、コンテンツの一元管理は、意味をなしません。粒度とは、例えばお客さまデータの最小単位を設定すると言う事です。

郵便番号、住所(これも5つぐらいに分解可能なはず)氏名(これも2つに分解可能)電話番号、Eメールアドレス等々、細かく分けると、データの使い回しが容易です。

氏名が最小単位なら、お客さまの名前をどのページでも利用できるように制作できるわけです。情報全部が、1つのエレメントであれば、どんな場合でも、この単位で表示されると言う事です。

エレメントは、常に最小単位で考え、コンポーネントの組み方で、表示形態を構築するように設計しています。こうすると、粒度設計に不備があった場合でも、新しいエレメントを作成して投入すれば、問題を解決する事ができるからです。

共通コンポーネントを作る

まずはじめに、サイトで共通に利用する「共通コンポーネント」を作成します。共通で利用するであろうコンテンツ(ヘッダー、お申し込み、ニュースの一覧表示、グローバルやローカルメニュー、パンくずナビ等々)を、コンポーネント化していきます。

ここで注意する事は、これらの共通コンポーネントは、全く同じ表示ではないと言う事です。ヘッダーのように、どこで使用しても、表示形態が同じで内容も同じなら、分かりやすいのですが、例えばパンくずナビは、共通コンテンツに分類されつつもページによって表示は違います。お問い合わせのパーツなどは、表示形態も、表示内容も違う場合も想定されます。

こう考えると、共通コンポーネントを制作すると言う事は、そもそもサイトの仕様を決めていく事とイコールになります。ですから、共通コンポーネントを制作すると、CMSツールで必要な機能がほぼ洗い出せます。

そして、導線ごとにページを制作して、追加で必要なコンポーネントを洗い出します。共通コンポーネントと、そのページ専用で使用するコンポーネントを利用して、導線ごとのテンプレートを作成します。

テンプレートの枚数は、導線数×各導線のページ数になります。どんな小規模なサイトでも、この段階でテンプレート数は30枚を下回る事はないです。キノトロープで受注している案件だと2-300枚のテンプレート数になる事も珍しくありません。

そこで、各ページのコンポーネントを整理していきます。共通コンテンツではないですが、同じコンポーネントで、問題がない場合は、共通化していきます。また、取る詰め、繰り返しで対応できる部分も、共通化していきます。コンポーネントの順番を変えないで、実装可能な、最低限度のコンポーネントとテンプレートにしていくのです。

できれば10枚程度、多くても30枚までに押さえられなければ、人間が管理できるCMSツールにはならないかも知れません。もちろん、管理者のリテラシーに依存しますので、管理運用者のヒアリングが必要になるわけです。

蛇足ですが、キャンペーンやプロモーションのように、企業から提案するプッシュ型コンテンツに関しては、CMSツールへの適用に、意味がない事をご理解ください。あくまでもCMSツールが有効なのは、お客さまの問題解決となるプル型のページです。

次回、構築手法の具体的な説明をしたいと思います。

図3:コンテンツも表示形態も同一のコンポーネント<左下>
コンテンツは同じだが表示形態が違うコンポーネント<上>
コンテンツの表示も表示形態も違うコンポーネント<右下>(クリックで拡大)

一元管理すべきコンテンツかどうかの見極めは、コンポーネント化できるかどうかがポイント。出来ないコンテンツは、CMSツールに登録しても無意味!
株式会社キノトロープ

1993年12月にキノトロープを設立。一貫した方針で数々のWebソリューションを築き上げる。現在もネットエバンジェリストとして布教活動を行い、積極的に講演も努める。
著書に「Webブランディング成功の法則55」(翔泳社)、「CMS構築成功の法則」(技術評論者)、「Webサイト運用成功の法則」(ソフトバンククリエイティブ)等。
 

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