『Androidアプリケーション技術者認定試験 ベーシック』
Androidに関する確かな技術力の証明。
最先端の現場で活躍したいエンジニア必携資格!
IT系の資格認定試験等を取り上げる本連載の第一回目では、今まさに旬といえる「Android技術者認定試験制度」を取り上げる。iPhone/iPadの登場以降、急速な拡大を続けるスマートフォン・タブレット端末市場。満を持して登場したGoogleのAndroid端末によりその市場拡大はさらに加速し、国内での携帯電話市場における出荷台数としては、2015年にはスマートフォンは一般的な携帯電話(フィーチャーフォン)を抜き、50%以上となると予測する向きもある。現状、国内でのスマートフォンはiPhoneが優勢ではあるが、世界的に見ればすでにAndroid端末が優勢となっており、今後さらに市場シェアを伸ばしていくことが予想される。
このような状況の中で、いわゆる組み込み型Android端末の開発エンジニアへのニーズは必然的に高まることが想定されるが、同時にエンジニアのスキル評価基準が重要な課題となる。
今回は、世界に先駆けてAndroid開発者の評価指標になりうる「Android技術者認定試験制度」を立ち上げた、OESFの満岡秀一氏(左)と、認定試験の運営に携わるOESF ACE運営事務局の近森満氏(右)に、試験制度の意義や狙いについて聞いてみたので、Androidビジネスにかかわる方は参考にしてほしい。
2010年、一般社団法人OESF(Open Embedded Software Foundation)は「Android技術者認定試験制度」を立ち上げ、同年11月に認定試験を開始した。ちなみに、Android技術者認定試験制度は、その英語名(OESF Authorized Certification Engineer for Android)の一部頭文字を取り「ACE(エース)」という呼称が与えられている。
Android技術者認定試験制度は、広がりを見せるスマートフォン/タブレットPC市場で、Android組み込み端末が確実にシェアを拡大しているという状況において、技術者不足の解消やスキルレベルの向上と、ひいては開発会社における品質レベルの向上と安定化を目指すもの。Android端末の組み込み系エンジニアや、Androidアプリケーション開発者の底上げが狙いだ。
アプリケーション技術者認定試験ベーシック
Android技術者認定試験制度では、大きく2カテゴリの認定試験が用意されている。ひとつはAndroid端末そのものの組み込みシステムを開発するエンジニア向けの「プラットフォーム技術者認定試験」。もうひとつはAndroidプラットフォーム上で動作するアプリケーションの開発エンジニア向けである「アプリケーション技術者認定試験」。いずれも「ベーシック」と「プロフェッショナル」という2つのレベルが設定されている。
図1:認定試験の一覧表。このうち2010年11月から実施されているのが、「アプリケーション技術者認定試験ベーシック」(クリックで拡大) |
OESFでは、認定試験の実施に先立ち「Android技術スキル標準」を策定。Android製品の開発に携わる技術者を「アプリケーションを開発・保守できる人」と「プラットフォームを開発・移植・改造できる人」の2つに分類し、各分野のエンジニアのスキル測定やトレーニングプログラム実施に活用可能な項目を定義している。
現在実施されている資格認定試験「アプリケーション技術者認定試験ベーシック」は、「アプリケーションスキル for Android」で定義されているスキル項目が出題範囲となり、アプリケーション開発に関連するシステムアーキテクチャからUI、通信、ネイティブ開発環境、アプリケーション管理/配布など、ベーシックといえどもかなり広範囲な内容。より具体的には、アプリ開発に必要なAndroidの基礎知識から、Androidプログラミング、Java、スクリプト言語などに関連するオブジェクト指向プログラミング知識、開発環境としてのEclipse、SDK、ネイティブ開発キットであるNDK、さらに全般的なデバッグ手法/技術に関する知識が問われることになる。
図2:スキル分野一覧表の一部。詳細はこちら(クリックで拡大) |
Android系エンジニアのキャリアアップを支援
ところで、Android技術者認定試験制度を実施するOESFとは、どんな組織なのであろうか。OESFは資格認定を主目的とする組織ではなく、その名にあるようにEmbedded Software、すわなち組み込みシステムの開発を支援するためにさまざまな活動を行うことを目的として、2009年に設立された一般社団法人だ。
携帯情報端末用OSとして登場したAndroidを、さまざまな機器に向けたオープンな組み込みシステムとして活用するために、そのソフトウェア技術に関する標準化を推進したり、共通フレームワーク・プラットホームの開発することなどを目的としている。さらにその枠組みにおいて、技術者の教育や育成などにも取り組んでいる団体だ。
OESFのエデュケーションワーキンググループでコーディネーターを務めており、Android技術者認定試験制度の策定にも携わっている満岡秀一氏によれば「日本では、組み込みシステム開発にたずさわる個々のエンジニアに日が当たることがあまりありません。またエンジニアの意識も、『自分のスキルで仕事を取る』といった考え方が乏しく、あくまでも会社に属して仕事をするといったスタンス」であるという。一方、米国など海外のエンジニアは「自社以外のコミュニティにも積極的に参加し、技術的な情報交換や、新たな技術へも貪欲に取り組むエンジニアが多く、個人的な活動を通じて直接仕事を受注できるケースも少なくない」という違いがあるそうだ。
Androidというオープンなプラットフォームの登場によって、「国内の組み込み系エンジニアも、アプリケーション開発にも関心を持つ人が増え、プラットフォームとアプリケーションの垣根が低くなり、互いに歩み寄りが可能な環境」となってきたことで、組み込み系エンジニアにも日が当たる可能性が広がっている。また、日本の文化的土壌では企業側も個を積極的にフィーチャーするという認識はまだまだ少ないが、「スキルを有するエンジニアをフィーチャーすることで、優秀なエンジニアを抱える企業自体が評価される傾向が生まれるはずだ」という。
そこで、Androidをプラットフォームとした組み込み系開発企業支援だけでなく、個々のエンジニアのスキルアップ支援とキャリアアップにつなげるには、第三者機関による評価が重要だと考え、そのための制度として、Android技術者認定試験制度が実施されたのである。
◆◇◆◇ コラム:資格取得者の声 ◆◇◆◇
実際に資格を取得したSE兼PGのA氏(30歳代、女性)に、試験についての感想を聞いてみた。
「Androidはこれから普及する技術で技術者も足りないという話を聞いていたのと、上司の勧めもあり受けてみました。参考書やサートプロの試験対策イーラーニング※を使って、3カ月間1日30分から1時間程度勉強して試験に臨んだところ、あまり難しく感じませんでした。ただ、結果を見ると自分が想定していたより点数が取れておらず、ギリギリの合格でした。資格取得によってAndroid開発案件の受注がしやすくなったと、社内の営業に言われたのは嬉しかったです」