性能監視がデータセンターにもたらす大きな価値とは

2012年6月27日(水)
塚本 浩之

取り組むべき性能監視のあり方 

仮想化/クラウド化が急速に進行しつつある現在のデータセンター環境では、SNMPベースで性能情報を収集することで、運用管理上の課題の多くを解決できる。

では、どのような運用管理を実施すれば良いのだろうか。最後に、求められる要素をあらためて整理しておこう。

収集した情報を的確に伝える

まず、データセンター内で利用される様々な機器に対して高精度の監視ができることが必須となる。ユーザーが利用している機器を監視対象に含められないようでは意味がないし、精度が低い監視では障害の兆候を見落とす可能性が出てくる。
仮想化の普及によって仮想サーバ数が急増することもあるため、こうした多数の仮想サーバの監視にも対応できるよう、監視ツール側がスケールアウトに対応することも必要だろう。そして、実は何よりも大切なのは、収集した性能情報を必要な人に的確に伝える可視化の部分だ。

異なる立場の担当者が共通の意識を持つ

現在のITシステムの構築、運用には多数の人が関わるが、相互の意思疎通がしにくい状況になっている。例えば、アプリケーションの開発者、システムの運用管理担当者、アプリケーションを利用するビジネス側の担当者は全て異なっているのが一般的だろう。
こうした各担当者が連携して、システムに期待されるサービスレベルを維持するために取り組んでいくことになるが、それぞれが異なる視点からシステムを見ていることから、意思疎通が難しく、共通認識を共有することは簡単ではない。しかし、詳細な性能情報は、こうした様々な立場の担当者全てに共通する指標となり得る。

客観的な指標による素早い判断

運用管理担当者はシステムの稼働状況を最も正確に把握できる立場にあるが、問題が顕在化してきた際にどのような対処が可能かは独断では決められないことも多いだろう。処理負荷が増大してきて性能劣化の兆候が見られる、といった場合に、リソースを増強するのか、インフラを作り替えるのか、あるいは新たなデータセンターを設置するのか、様々な手段が考えられるが、どれが実現可能かは予算や今後のビジネスの成長見通しなども踏まえて検討する必要がある。
ともすれば「運用管理上の工夫でしのいで」といった話になってしまうことも考えられるが、性能情報のような客観的な指標があれば、現状のままで対応できるのはどこまでか、といった判断もより正確に下せるようになるはずだ。

さらに、こうした情報は運用管理者が独占的に扱うのではなく、関係者全てが共有できる状態になっていることが望ましい。例えば、ユーザー向けのセルフサービスポータルなどでこうした情報が見られるようになっていれば、運用管理者がアクションを起こして始めて対応が始まる、といった事後対応的なやり方よりも迅速かつ的確な対応が可能になるだろう。

図3:性能監視情報の共有(クリックで拡大)

過剰な不要リソースを的確に判断する

クラウド環境のコストを押し上げる要因として、リソースの追加は随時可能だが、不要なリソースの解放は実施しにくい、という問題もある。レスポンスが悪化し始めるなど、リソース不足の兆候は比較的わかりやすいが、現状のリソースは過剰になっている、という判断はなかなか下しにくいものだ。リソースを解放することでパフォーマンスが劣化するのを避けようと思うと、どうしても過剰なリソースを確保してしまいがちになる。
詳細な性能情報が収集されていれば、リソース過剰状態に対する判断もより正確に下せるようになるなど、システムの稼働状況に対する現状把握がより高精度になるはずだ。

最終的には、システムに関わる全ての担当者が全員で同じ情報を共有し、それに基づいてそれぞれの立場から検討を行うことでタイムリーなアクションが実行可能になることが望まれる。こうした体制を確立する上での基盤となるのが、精密な性能情報だということになるのである。

アイビーシー株式会社 技術部 部長

メーカー系SIでICTインフラ環境のインテグレーションを経てIBCに入社。製品やコンサルティングサービスを含めたソリューション全般を担当し、IBCのミッションである「ICTインフラの安定稼働」に対し、技術的な立場から何が出来るのかを日々検討しながら活動。

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