日本人エンジニアが働きやすい国、インドネシアでの起業を考える(前編)
3月24日から26日の期間、インドネシアで開催された日本人向けセミナー「ITベンチャー企業がジャカルタに進出、撤退、再進出して9年間戦って学んだこと」と現地コミュニティ主催の「Jakarta WordPress Meetup」に参加してきました。本コラムでは、セミナーの内容と合わせて、現地を訪問して感じたことを紹介していきます。
前編では、現地のエンジニアの仕事動向やビジネス動向について書きます。後編では、インドネシアのWordPress事情に絡めて、「Jakarta WordPress Meetup」についてご紹介します。
まず簡単にインドネシアの首都、ジャカルタを紹介します。現在、ジャカルタは1000万人が居住する世界屈指の人口を持つ都市になっています。「渋滞しなければジャカルタじゃない」と言われるくらい交通渋滞が激しく、バイクと自動車が1mと間隔を空けず、大河のように流れていきます。鉄道はありますが、多くの人は車かバイクで通勤しています。通勤事情はあまり良いとは言えないかもしれませんが、日本のラッシュアワー時の満員電車よりも良いかもしれません。
街全体は活気がありますが、同時に穏やかな雰囲気もあり、礼儀正しい人も多いので、ある程度の上流層が暮らす場所で活動するのであれば、とても住みやすい国という印象を持ちました。
多くの日本企業が進出し、現地新聞社の調査結果によると、年収で25万米ドル以上を稼ぐ外国人で一番多いのは日本人ということから、働きやすく成功しやすい国ということが言えると思います。また、インドネシアにとって日本が最大の輸出国ということもあってか、とても親日な国です。そういう意味でも、同じ東南アジアにある他の国よりも働きやすいと言えるかもしれません。
ITビジネス市場が本格的に形成され始めたのも割と最近で、市場にはメインフレームも、もちろんオフコンもなく、開発・構築案件は、ネットワークとLinuxやWindowsベースのファイルサーバー、Webサーバー系のシステムが大半を占めている印象でした。一方で急速にスマートフォンが普及してきており、B to C系のシステムではスマートフォンを対象とした機能要件は必須になります。
また、Facebookの普及率は非常に高く、IT系に関わるほぼ全ての人が使っているイメージがあります。企業への問い合わせもFacebookページから受け付けている会社があるほど浸透していて、今後、Facebookに関連した大きな開発案件やビジネスも出てくるのではないかと考えられます。
また、4年制の大学や専門学校にあたる3年制の大学を除き、IT系の教育機関は確認できませんでした。特に、OSS系の技術者はネットの情報を基に独学で学んでいる技術者が多いようです。そういった事情もあり、IT系の書籍は以前よりも減ってはいますが、最新の技術を題材にした書籍は多く、PHP一つとっても100冊以上出版されています。多くの書籍はプログラムが収録されたCDを同梱しており、操作しながら学べる仕組みになっています。書籍の価格は5万ルピア※ 以下で購入できます。
※日本円で440円程度(2014.04現在)
IT系のエンジニアの年収はこの10年で2倍になっており、日本人のエンジニアと年収レベルではあまり変わらなくなってきました。以前は賃金の安いインドネシア人エンジニアが重宝されていましたが、日本人のエンジニアは勤勉でしっかりした技術を持っているため、英語かインドネシア語を話せることができれば、より難易度が高い案件で求められるようになっています。
現在、現地の日本人プログラマーの平均年収は400万円(額面給与)ほどで、25%の税金がかかるそうです。日本国内のプログラマーの平均年収が400万円前後ですので、物価が日本よりかなり安いインドネシアでは、平均的な日本人プログラマーは割と良い生活ができることになります。特に多いのは、WordPressを活用したECサイト構築やPHPによるフルスクラッチ案件です。インドネシアにはOSやDBをセットアップした経験があるエンジニアがまだまだ少ないので。LAMP構成を構築できるエンジニアは重宝されているようです。
市場ではまだまだ少ないECサイトですが、国土が広い分、今後は多くのECサイトが立ち上がっていくことが予想されます。そのため、もう少しすると深刻なIT人材不足になるかもしれません。インドネシア語か英語が話せる、有名大学の卒業経験もしくは難易度が高いワールドワイドの認定資格を持っているエンジニアであれば、十分チャンスがあると思います。
インドネシアはブランドやお墨付きが価値を持つ国ですので、高い学歴や難易度が高いワールドワイドの認定資格、インドネシアでも知られるくらい著名な会社で開発経験がないと、現地での就職は難しくなる可能性があります。インドネシアで就業を希望される方で学歴に不安がある方は、インドネシアでも実施している高難易度の技術資格を取得してからチャレンジした方がよいかもしれません。
ちなみに、当たり前の話ですが、日本で仕事を得にくいエンジニアがインドネシアに渡航しても、成功することはほぼありえません。技術力でもコミュニケーション力でも、人間性でも、何か日本で仕事を得にくい原因が考えられますので、その原因を修正してから、インドネシアに渡航されることをお勧めします。
なお、現地での就職を考えている方は現地の人材紹介会社にコンタクトするのがよいでしょう。今回のコラムで紹介するセミナーで登壇されたJAC Recruitment Indonesia は日系の人材紹介会社でもあり、ITエンジニアの求人案件も扱っていますので、興味がある方は打診してみるとよいと思います。
海外で働きたいと考えるエンジニアには、海外で起業を考えている方も多いと思います。特にインドネシアのようなこれからの大きな発展が期待される国では、成熟した国よりも起業をしやすいと思います。そんな方は、この後のセミナーレポートをお読みください。
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