次世代エンジニアはここから生まれる!?ロボットオリンピックWROの新たな挑戦とは

2013年7月4日(木)
Think IT編集部

日本の、そして世界の小・中・高校生たちがロボットを使ってモデリングやプログラミング技術を競い合うWRO(World Robot Olympiad)。6月に都内で行われた発表会では、初心者向けの新設クラスやルールなど、2013年度の大会概要が紹介された。

「世界中の子どもたちが、ロボットを使って、同じルールで競い合う大会をはじめよう」という、シンガポール国立サイエンスセンターの提案で2004年からスタートしたWRO。今回が10回目の大会となる。

WRO Japan 理事長 山口俊治氏(クリックで拡大)

WRO Japan理事長、山口俊治氏の挨拶に続き、実行委員長を務めるアフレル 小林靖弘氏より2013年大会の概要が説明された。小林氏は、中学校でプログラミングが必修化された背景などから、プログラミング教育の必要性を説き、ロボットを使ったWROでの国際的な次世代エンジニア育成について熱く語った。

WRO Japan実行委員会 実行委員長 小林靖英氏(クリックで拡大)

WROに参加するには?

参加者は、7月から開始される国内公認予選会に参加する。勝ち残ればWRO Japan決勝大会に進み、さらに上位チームが国際大会に進むことになる。国際大会は11月にインドネシアで行われる。

2012世界大会の様子(クリックで拡大)

純粋なコース攻略を競う「レギュラーカテゴリー」

WROでは決められたレギュレーション、ルールに則ってロボットを制作し、指定されたコースを攻略するための自律プログラムを搭載。ハードウェアとプログラムの組み合わせで優劣を競い合う。

競技には指定されたコースを攻略するレギュラーカテゴリーと、テーマにそって制作したロボットをプレゼンテーションするオープンカテゴリーの2つがある。さらにレギュラーカテゴリーには今回からエキスパートとベーシックという2つのクラスが新設された。

エキスパートは従来通りの競技で、ベーシックはこれから大会に参加する人のために、必要な要素技術を少なくし、利用部品も制限するなど、より簡易な内容にしたものだ。年々参加者の技術レベルが上がり、初級者とベテラン参加者のレベル差が広がったことが原因だが、逆に考えれば、参加者の技術レベルが向上していることも示している。

レギュラーカテゴリーではコース攻略の優劣を競い合う(クリックで拡大)

テーマにそったロボットを作りプレゼンテーションする「オープンカテゴリー」

もう一方の「オープンカテゴリー」では、毎年事務局が決めたテーマにそってロボットを制作。プレゼンテーションを撮影したビデオを事務局に送り、審査が行われる。勝ち残ったチームは審査員の前でプレゼンテーションを行う。ハード、ソフトの技術だけではなく、制作したロボットの優秀さをきちんと伝えられるかも評価の大きなポイントとなる。

さらに国際大会では英語によるプレゼンテーションとなるため、参加者は事前にスピーチの内容を作ったり、質疑応答に答えられるよう準備する必要がある。大変ではあるが、国や地域を問わず活躍できる人材を、競技を楽しみながら育てられるメリットは大きい。

昨年2012年のオープンカテゴリーは「社会の一員としてのロボット」だった。生徒たちの自由なアイデアによって、生活を助けたり介護に役立つ様々なアイデアのロボットが登場した。

2013年のテーマは「世界遺産」。日本でも富士山が世界遺産に選ばれたばかりだが、このテーマでどんなロボットが生まれるのか楽しみだ。

オープンカテゴリーではプレゼンテーションが勝利の鍵となる(クリックで拡大)

インドネシアの特色を持つレギュラーカテゴリーの各コース

レギュラーカテゴリーは小中高生それぞれでコースが異なる。各クラスで使用するコースは以下の通り。今年は国際大会の会場がインドネシアのため、現地に生息するコモドドラゴンやボロブデゥール遺跡などの要素がコースにも取り入れられている。

小学生部門「バティック -インドネシアの色-」

インドネシアの伝統衣装であるバティックの完成品を色に合わせて3つの店に届け、途中に置かれた原料を工場まで運搬しゴールに戻る。

小学生部門「バティック -インドネシアの色-」(クリックで拡大)

中学生部門「BOROBUDUR ボロブデゥール -寺院再建-」

仏像を囲っている“ストゥーパ”を外す。中から現れた仏像の色の違いを判別して、修復の必要なものを見つけ出し、指定場所まで運搬する。

中学生部門「BOROBUDUR ボロブデゥール -寺院再建-」(クリックで拡大)

高校生部門「コモド島の環境保全」

インドネシアのコモド島に生息するコモドドラゴンの保護のため、卵を回収し、悪路を乗り越えて安全な地域まで運搬する。

高校生部門「コモド島の環境保全」を紹介する技術委員の吉野和芳氏(クリックで拡大)

事前に準備してくるといっても、当日はゼロからロボットを組み立てなければならない。また、通常ルールに加えて、競技当日に発表される“サプライズルール”に対応することも求められる上、組み立てと試走を120分以内に終わらせなければならない。そのため、チームワークが非常に重要になってくる。

ベーシッククラスのコース

同じレギュラーカテゴリーでも、ベーシックは国際大会がなく、専用のコースを使用する。前述した通り、エキスパートより簡単な内容となっていて、コース自体も3年ほど継続して使用できるよう、予備のマーカー・ポイントが配置されているなど工夫されている。

ベーシック競技のコース(クリックで拡大)

おわりに

WROも10回目という節目を迎え、参加者のレベルアップと新たな参加者に向けた工夫が感じられた今回の発表会。次の世代がWROを通してどのように育っていくのか、現役のITエンジニアたちは彼らを知る良い機会ではないだろうか。
9月には7年ぶりの新機種となるレゴ マインドストームEV3が発売される。原稿のNXTよりもさらに多くの機能を備えているため、今後の大会に登場することを期待したい。

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(リンク先最終アクセス:2013.07)

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