ワンソース・マルチユース&UXソリューション最前線 〜TOBESOFTセミナー・レポート〜

2014年1月31日(金)
崔 彰桓(チェ チャンファン)吉政 忠志

製品・サービスに重要なUXが日本で普及しないワケ

さて、このコラムの後半はUXについて触れます。

日本市場はUXに興味があってもなかなか実行に移さない企業が存在しています。アップル製品や、Google系製品など評価されているIT系製品・サービスなどでは、UXが採用されていないものはないといっても過言ではないくらいに活用されているにもかかわらずです。

UXが活用されないと、そのシステムは、使い勝手が悪いと評価されたり、ゆくゆくは使われないシステムになったりする可能性もあります。実際に使い勝手が悪いといわれる業務システムはものすごく多く存在していますよね。全てのシステムにおいて、使い勝手を良くしたいと思われているにも関わらず、使い勝手が悪くなるシステムがあるのです。

何故でしょうか?その根本的な原因は開発の進め方やプロジェクトの考え方が悪いからであると考えています。UXのプロジェクト方法論にあわせて開発を進めれば、使い勝手が悪くなることはありません。日本の業務システムではUIを意識してもUXを意識せずに開発が進められているから、使い勝手が悪くなるシステムが生まれてくるのだと思っています。

ちなみにUXとUIは何が違うのかという話もよく出ますが、UIは、人と機械間の相互作業のための空間として定義できます。UIの目的はユーザーが効果的に機械を操作し、機械がユーザーの意図どおりに動作し、人にその結果をフィードバックできるようにすることです。一方でUXは「eXperience(体験)」です。つまり、UIは客観的な事実であり、UXは主観的な感じ方ということです。例えば、「自動車(客観的な事実)」と「運転(主観的な感情)」と同じ関係です。自動車がUIで運転がUXなのです。UXは主観的な感じ方なので、人によって違います。

このUXがどのくらい効果を上げるかといえば、コンシューマー製品やパッケージ製品やスマホアプリなど既製品は販売時に画面が決まっているので、はっきり言えば売り上げに影響が出るくらいのインパクトがあります。韓国のスマホ関係のメディアでは、UXの出来がスマホの売り上げの明暗を分けたという記事もよくでています。それにそもそもiPhoneが売れている最大の理由の一つにUXがあげられています。

このUXは実は日本人が弱い分野でもあるような気がします。特にIT分野ではそうかもしれません。IT分野でUXに秀でた日本のIT製品ってありますでしょうか?UXの分野でよくあげられる成功事例はアップル製品、Google系製品などすべて海外製のものばかりです。これらの製品、サービスは使いやすく、マニュアルを読まなくてもよく、使うだけでワクワクしたりしますよね。ワクワクするのはコンテンツだけではなく、UXがかなり効いています。

一方日本の業務システムはUXがだめというか、全く意識されていないといってもよいくらいのものだと私は感じています。日本の業務システムの画面はどのように作られていますでしょうか?顧客の窓口の人に対して提案をして、お客様が社内で検討して、合意したものを開発します。しかし、スケジュールや予算、技術的な理由で、結果的に違う画面になることもしばしばです。そもそも画面設計者は上流工程でおしまい、そのあとプロジェクトに顔を出さないケースも多いですよね。なんだか機能主義で、画面に関することは全く意識されていないように思えてしかたがないです。

UXが採用されているシステム開発は、最後の検証時においてもUXデザイナーが検証して、UXデザイナーが基本合意した画面と違う場合は、要件未達として修正要件に上がります。日本の業務システムの開発プロジェクトでは考えられないことですよね。ただ、海外でUXが採用されている開発プロジェクトでは当たり前の話なのです。なぜなら使いにくければそもそもそのシステムは使われなくなったり、業務効率を悪化させるからです。ユーザー、開発者、関係者全員が不幸になります。

何故、そこまでUXにこだわるのでしょうか?

海外ではUXを採用した業務システム事例が多くあります。その事例を見ると残業代が減少したり、生産性が20%向上したりと、明確な数値向上事例が多くあります。業務生産性が20%向上したら売り上げが上がりそうですよね。残業代が減れば、コストが下がりますよね。しかも、生産量を変えずにこれらを実現できるのです。

これこそが、UXの神髄なのですでも、UXの導入方法やプロジェクトの進め方など知らない人がほとんどではないでしょうか?UXは開発者の領域ではないという方も多いですが、知っておくべき技術ですし、場合によっては開発者からUXデザイナーに転じることも考えてもいいと思っています。

これこそが、UXの神髄なのです。でも、UXの導入方法やプロジェクトの進め方など知らない人がほとんどではないでしょうか?

今回のセミナーでは、そのUX導入方法論についても解説いたしました。当日講演をしたトゥービーソフト社のチェ・インヒがThink ITでUX導入方法論を寄稿しましたので、そのコラムを最後にご紹介します。

ビジネスUXを効果的に導入するための4つのステップとは?(チェ・インヒ)

また最新のUX導入方法論の概説資料は以下よりダウンロードできますので、あわせてご覧ください。
> TOBESOFT サポートセンター
(※上記の資料番号「28」です。)

著者
崔 彰桓(チェ チャンファン)
株式会社トゥービーソフトジャパン 取締役COO

03年、韓国外国語大学を卒業し、韓国貿易ITアカデミーのエンベデット課程を卒業。大学時代からプログラミングが好きで、大学に通いながらシステム開発のアルバイトをしていた。卒業後の04年、教保情報システムズの日本法人に入社。06年にトゥービーソフト(韓国)に入社し、08年からトゥービーソフト東京支社長を経て、現在はトゥービーソフトジャパンのCOO(最高執行責任者)として同社の日本市場における営業全般を総括している。

吉政創成株式会社 代表取締役

IT業界のマーケティング分野で20年近い経験を持つマーケッター。株式会社トゥービーソフトジャパンをはじめとするベンチャー企業から大手企業まで幅広くマーケティング支援を行う。現在はマーケティングアウトソーシング会社である吉政創成株式会社の代表取締役を務めつつ、PHP技術者認定機構 理事長、Rails技術者認定試験運営委員会 委員長、ビジネスOSSコンソーシアム・ジャパン 理事長も兼任。

連載バックナンバー

Think ITメルマガ会員登録受付中

Think ITでは、技術情報が詰まったメールマガジン「Think IT Weekly」の配信サービスを提供しています。メルマガ会員登録を済ませれば、メルマガだけでなく、さまざまな限定特典を入手できるようになります。

Think ITメルマガ会員のサービス内容を見る

他にもこの記事が読まれています