Linux版だけじゃない―事業継続ソリューションのWindows Server対応
DKCEとWSFCの連携
DKCEとWSFCの連携では、DKCEが指定したディスクに対するミラーリングのみを行い、WSFCはアプリケーションなど定義された保護対象の監視とフェイルオーバーの動作を行う。DKCEとWSFCの連携を使用する際にはいくつかのインストール要件があるが、ここでは、利用イメージの紹介に必要なポイントをピックアップする。
まず、DKCEをWSFCと連携させる場合には、DKCEのインストール前にWSFCをインストールしてクラスターグループを構成しておく必要がある。そのため、環境を準備する際にはWSFCを構成するための要件を満たす環境を準備しなくてはならない。WSFCを構成する際はクォーラム形式(クラスターの構成情報データベース)を選択するが、DKCEとの組み合わせでは基本的に共有ディスクを使用しない構成であることが考えられる。よって、クォーラム設定は共有ディスクなしで構成できる「ノードマジョリティクォーラム」または「ノードとファイル共有マジョリティクォーラム」をノード数などによって選択する。
クラスターグループを構成した後、DKCEをレプリケーション対象となるサーバー全てにインストールし、レプリケーションの設定を行うことになるが、この時、レプリケーション対象とするボリュームとレプリケーションに使用するネットワークが構成されている必要がある。レプリケーション対象となるボリュームは、各ノードで同じボリューム文字、同じサイズで作成して、NTFSでフォーマットする。この際のボリュームサイズについてはDKCEとしては制限を設けていない。OSで作成可能なサイズであればレプリケーションに使用することができる。
レプリケーションに使用するネットワークについてはDKCEがレプリケーションに使用するポートが解放されている必要がある。OSのFirewallが有効になっている場合、DKCEをインストールする際に必要なインバウンドルールが自動的に追加される。
必要な準備が全て完了し、DKCEのGUIから起動する設定ウィザードに従って必要な選択を行うことでレプリケーションの設定は完了する。WSFCがあらかじめ準備されている場合には、設定ウィザードの完了直後に、このボリュームをWSFCの共有記憶域に登録するかどうかを確認するポップアップウィンドウが開く。この確認に「はい」で同意すれば、設定したレプリケーションボリュームはWSFCの管理画面上に「使用可能記憶域」として表示されるようになる。図3は実際に登録された状態を表示したものである。
そうした手順を経てWSFCの共有記憶域として登録された後は、一般的な共有ストレージを使用した場合と同様に、そのボリュームをHAクラスター共有記憶域として使用することが可能となる。また、ミラーリングのステータス確認などもWSFCの管理画面を通して行うことができる(図4)。そのため、登録した後はDKCEの管理画面を使用せずにWSFCの管理画面のみを使用して運用することができる。
DKCE+WSFCによるSQL Serverの保護
DKCEとWSFCの組み合わせにおいて、保護対象のアプリケーションとして動作を確認しているものとしては、SQL Server、Hyper-V仮想マシン、ファイルサーバーなどが挙げられ、中でも特にSQL Server は冗長化対象として検討・導入されることが多い。SQL Serverの冗長化の方法の1つとして、SQL Server 2012から使用できる「AlwaysOn」の利用が考えられるが、SQL Server Enterprise EditionでAlwaysOn構成の場合、稼働系・待機系ともにライセンスが必要となる。一方、SQL Server Standard Edition+DKCE+WSFC構成で必要になるライセンスは、稼働系用のライセンスのみであるため、導入費用を抑えながらシステムの冗長化を実現することができる。また、DKCE+WSFCを使用したSQL Serverの冗長化は、すでに実際の株式会社ガリバーインターナショナル様をはじめとした導入事例があり、当社でもSQL Serverを保護するための構築手順などの製品マニュアルに加え、別途クイックスタートガイドを作成し積極的に情報を発信している。Window Server 2003のサポートも間もなく終了となるため(2015年7月15日)、既存環境の更新や新規構築を検討されている方も多いと思われる。その際、本稿をきっかけとしてDKCE+WSFCの利用をご検討いただければ幸いである。
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