Drupalビジネスコンソーシアムが第1回説明会で今後の活動方針を発表
今後のトレンド
今後の企業システム開発については「既存のシステムと新規の開発に二分されるのではないのか」と同氏は予測する。新しいものに関しては手組せずにPaaS上でレゴブロックの様に組み立てるのが効率的で、今後の主流になるのでは? と説明。しかしPaaSは閉鎖的な部分も多いと指摘し、1社がコントロールしているサービスも多く、実際の使い勝手についても疑問を唱えた。
オープンPaaSの分野ではCloud FoundryやOpenShiftという技術もあるが、米国ではRuby on RailsやDrupalで構築する事例が多いと語る。更にはメンテナンス制を考慮して、Ruby on RailsからDrupalに移行するケースも増えているそうだ。Drupalは「OSS PaaSの中核になる」ものであって、必ずしも商用PaaSとは競合しない。競合するのは「閉鎖的なPaaS」に限定されると強調する。
Drupalの信頼性
Drupalの信頼性について指摘される事もあるが、米国のホワイトハウスやNASAの導入事例を示し、堅牢さが実証されていると説明。一方で国内の事例はまだまだ少なく、本格的な普及には至っていないと言う。その理由は単純に「日本語の情報が無い」事に集約される。今まではコミュニティの有志によって情報が補完されては来たが、DBSJとしても、「フレームワークとしてのDrupal」に注力し、大手のSIerを巻き込んだ活動を啓蒙していきたいと語った。
海外の動向とビジネスチャンス
海外でのシェアを見るとWordPressの割合が高いが、大規模で多言語対応されたサイトはDrupalの比率が高くなっている※1。100言語以上の多言語化が容易なDrupalの強みが発揮されている。商用CMSに求められるのは大規模サイトにおける安定性だが、NASAではDrupalを用いておよそ26万ページが安定運用されており、商用CMSに対しても遜色無いと強調する。またDrupalの利点の1つとして現在2万個以上存在するモジュールを挙げ、それらを組み合わせるだけで、プログラムを書く事なく大規模サイト構築も可能ではないかと言える。
※1 http://trends.builtwith.com/cms/open-source
また、日本においてのDrupalビジネスの展開の例として
- ISVでは追加機能(モジュール)を作成して有償でサポートする
- デザイン会社では背景画像(テーマ)を作成して有償提供
- SI企業では業種に特化した形でディストリビューションを提供する
事実海外では、農業向け、メディア社向け等々200以上のディストリビューションが出回っている。東京オリンピックを見据えた市場の拡大要求である、多言語化にもスムーズに対応するので十分なビジネスチャンスもあるかと思われる。
Drupal 8について
現在最新バージョンは2014年8月6日にリリースされた7.31であるが、年内にリリースされる予定のDrupalバージョン8が控えている。開発バージョン8.0xーdevであるがバージョン8の詳細はこちらに開示されている。トピックスとしては
- はじめからモバイル端末に対応
- 多言語化機能を更に強化しあらかじめ組み込まれたUIよりメニューなどを手軽に翻訳
- ファイルシステムをベースとした設定管理によって、データとの分離がなされ、バージョン管理等を効率的にする
- セマンテックWeb、HTML5をはじめとするアクセシビリティを向上させるテクノロジーをサポート
開発バージョンはこちらからダウンロードし試す事ができる。しかし、実際に設定を行うのは難しい場合にはバージョン8を簡易に試すことのできるsimplytest.meというサービスもある。またDrupalの利点としてはメジャーバージョンのサポートが一定期間続くことも挙げられる(ホワイトハウスはバージョン6を利用)。エンタープライズ向けの重要な特性だと言える。今後は新バージョンへの移築などのノウハウも同コンソーシアムで共有されるとの事だ。
質疑応答では現場で活躍する参加者からの忌憚のない意見も多く飛び交い、それに真摯に応える運営側の姿が特に印象的であった。副理事の池田氏からも、同コンソーシアムは「新参者(新規企業)、初心者ウェルカム」の姿勢が語られ、真にオープンな環境を目指している事が伺える。
次回の開催は定員を増加し10月2日(木)に開催されるので、ビジネスを模索する読者諸氏は参加されてみてはいかがだろうか。
http://kokucheese.com/event/index/214573連載バックナンバー
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