世界各地から開発者が集結!日本初のDrupal Camp、京都で開催
4月12日、春の京都は祇園、しかも神社という絶好のロケーションで、日本で初めてのDrupal Camp、「Drupal Camp Japan Kyoto 2014」が開催された。Drupalは世界で最も普及しているオープンソースのCMSであるが、これまで日本での知名度は低いままだった。しかし、昨年来から採用事例も大幅に増え、コミュニティの活動も活発になってきている。
世界各地で開催されているDrupalコミュニティのイベント「Drupal Camp」が日本開催される意義は大変大きい。いよいよ日本でも世界標準のCMS、Drupal普及の兆しが見えてきた。
京都の神社に、世界各地のDrupal開発者が集結
今回の会場となった安井金比羅宮は、「縁切り縁結び碑(いし)」で有名な神社。良縁結びと悪縁切りのパワースポットとして、休日は常に行列ができるほど人気の神社である。ここに、日本は北海道から沖縄まで、海外は、アメリカ、カナダ、フランス、スペイン、フィリピン、オーストラリアから、100名超のDrupalerが集結し、会場は朝から大盛況となった。
会場内は畳敷きで、参加者は座布団に座る寺子屋スタイル。国際色豊かでフレンドリーな雰囲気は、世界に1,100以上あるDrupalコミュニティ共通のもの。
参加者は、正座をしたり胡座をかいたり、または寝そべったり、リラックスした姿勢で各セッションを楽しんだ。
セッション内容
Drupal World Community Session
セッションは、Drupalアソシエーションのディレクター、Megan Sanicki氏からののビデオレターで幕をあけた。世界でアクセストップの10万サイトのうち、12%がDrupalで構築されているが、さらに普及率を上げるため、積極的にマーケティング活動と投資を行っていると、Drupalアソシエーションの活動状況を紹介。日本のDrupalコミュニティの活躍にも期待を寄せた。
紀野 惠「Entity Translationで作る マルチリンガル+マルチサイト:大阪大学での事例」
実行委員長でもあるANNAIの紀野氏は、フィールド単位でのマルチリンガルを可能とするEntity Translationモジュールを使って、大阪大学人間学部のWebサイトを構築した事例を紹介。併せて、マルチサイトを簡単に利用可能にする自作システムについても解説した。
Luc Bezier「Drupal を使ったデータ移行について」
フランス出身で、現在はフィリピンで開発に従事するLuc Bezier氏は、Migrateモジュールによるデータ移行について解説。同モジュールは、非常に柔軟なデータマッピングが可能で、OracleやMS SQLもサポート。大規模なエンタープライズ系サイトでも実績豊富な、そのパワーについて解説した。
濱田孝治「CropnetをDrupalでリニューアルするまで。データ移行とパフォーマンスの苦悶と解決策」
(株)CACの濱田氏は、自社の家庭菜園向けSNS「Cropnet」をSymfonyによるシステムからDrupalに移行した事例を紹介。Feedsモジュールでのデータ移行方法と、Drupalのパフォーマンス・チューニングについて詳細なノウハウを公開した。
Chris Luckhardt「Drupal8 の紹介」
カナダから参加したChris Luckhardt氏は、トロントDrupalユーザーグループのリードオーガナイザー。近日中にベータ版リリースが噂される、Drupal 8の新機能を紹介した。コンテンツ編集者、モバイルプラットフォーマー、サイト管理者、開発者、デザイナー、それぞれのメリットを解説した。
染田貴志「つなぐ、つなげる Drupal とヌーラボのサービス」
(株)ヌーラボの染田氏は、PHPおよびDrupalでの開発経験がない状態から、自社の3つのサービス、「Backlog」、「Cacoo」、「Typetalk」とDrupalを連携させるモジュールを開発した経験について語った。3つのモジュールの開発に要した時間は、わずかに1日。豊富なAPIと、シンプルで使いやすいHookシステムのおかげで、素早くコーディングできたと感想を述べた。
Colin Watson「Sass/Compass, SMACSS と モダン・グリッド・システムの紹介」
スペインから参加したColin Watson氏は、Drupalのフロントエンド開発の最前線を紹介。SMACSSという考え方に基づいた、Sass/Compassの利用について解説した。併せて、Zen Grids、Singularityといったパワフルなグリッドシステムの紹介も行った。
おく たすく「Display Suiteでコンテンツ出力の簡単カスタマイズ」
おくたすく氏はDrupal 7から導入された、Display Suiteについて解説。あまり利用されていないことを嘆きつつ、コンテンツの表示形態を条件によって柔軟に変更できるそのメリットについて、デモしながら丁寧に解説した。
Micheal Cooper & Francesc Travesa Centrich 「沖縄科学技術大学院大学における学内・学外コミュニケーションのためのDrupal活用事例」
Micheal Cooper氏とFrancesc Travesa Centrich氏はそれぞれ、ディレクター、エンジニアとして、沖縄科学技術大学院大学(OIST)のWebサイトをDrupalで構築した事例を紹介。紀野氏の大阪大学の事例と同じく、OISTのサイトもマルチリンガルサイトとして構築されている。
四方 智「Drupal専用PaaSの紹介と開発の実際」
本サイト「Think IT」の開発担当者でもある(株)インプレスビジネスメディアの四方は、現状のメジャーなパブリックPaaS上でDrupalをサービスする際の数々の問題点を指摘。Drupal専用のPaaSである「Aquia Cloud」、「Pantheon」を紹介し、そのメリットを解説した。
上田善行「Drupalを使った大企業サイトの開発について」
シーアイアンドティー・パシフィック株式会社の上田氏は、開発者ではなくビジネスマネージャー視点から、海外の大企業の多くでDrupalが選ばれているその理由を解説。Drupalはその柔軟性、セキュリティ、エコシステム、スケーラビリティによって、もはや単なるCMSではなく巨大なプラットフォームとなっており、日本でも海外と同様に、大企業での普及が進むはずだと指摘した。
Drupalコミュニティの盛り上がりを実感
セッションの後は、ライトニングトーク、プレゼント抽選会、懇親会と大いに盛り上がり、朝から夜までDrupal漬けのイベントは幕を閉じた。
9月には大阪で、12月には東京で「Drupal Camp」の開催が予定されている。ワールドワイドなDrupalの熱気が、ようやく日本にも押し寄せてきたことを実感した1日だった。
米・欧で年2回開催され、毎回数千人規模の開発者が集結するDrupalコミュニティ最大のイベント「DrupalCon」が日本で開催される日も、そう遠いことではないはずだ。
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