IoT時代のデータストア・NoSQLの実力は? 書き込み性能から見る活用ポイント 1

NoSQL登場の背景

NoSQL登場の背景

NoSQLとはリレーショナルデータベース(RDB)以外のデータストアの総称で、その意味は「Not Only SQL」の略とされています。近年、NoSQLが開発されてきた背景として、インターネット利用の拡大に伴う、データ量およびアクセス数の増大が挙げられます。

図1: Webシステムの構成(クリックで拡大)

一般的なWebシステムは図1のような3階層アーキテクチャを採っています。Webシステムへの負荷が増大した場合、Webサーバやアプリケーションサーバは物理マシンの追加(スケールアウト)により負荷分散するのが一般的です。これに対してデータベースサーバ(RDB)では、物理マシンが持つハードウェアリソースの追加・増強(スケールアップ)が一般的です。
しかしハードウェアリソースの追加・増強には限界があり、日々増大していくデータ量・アクセス数に対して、スケールアップで対応を続けるのは困難でした。そこで、この問題に対応可能なスケールアウト型のデータストアとして、NoSQLは開発されてきました。

NoSQLの特徴

データストアの課題 NoSQL RDB
1) 大量データの蓄積 スケールアウト型アーキテクチャ スケールアップ型アーキテクチャ
2) 高速な書き込み処理 高速なデータアクセス 速度よりもデータ整合性を重視
3) 非構造データの保存 スキーマレス スキーマ定義が必要

表1: センサーデータのデータストアの課題に対するNoSQLおよびRDBの適合性

NoSQLは様々なものが開発されてきており、現在では100以上の実装が存在すると言われています(参考:NOSQL Databases)。それぞれに特徴が異なるため、共通する特徴を列挙することはできませんが、概ね次の特徴を備えているようです。

1.スケールアウト型アーキテクチャ

上述の開発背景からスケールアウト型のものが多いです。複数の物理マシンでクラスタを構成し、全体として1つのデータストアを作ります。冗長化構成をとれるものが多く、高い可用性を持ちます。

2.高速なデータアクセス

メモリ活用によりディスクアクセスを抑え、データアクセスを高速化しています。また、トランザクションやSQLなどの高度な機能を使わず、独自APIによる限定的な機能を使うことで、データアクセスのオーバーヘッドを小さくしています。分散構成やデータ複製を利用してアクセスを並列化し、速度を向上させるものもあります。

3.スキーマレス

RDBではデータ保存に先立って、保存予定のデータ構造の定義が必要です(スキーマ定義と呼ばれます)。運用開始後は、通常はスキーマの変更はできません。それに対してNoSQLでは、運用開始後にスキーマ変更できるものや、スキーマ定義が不要なものがほとんどです。異なる構造のデータを区別せずに保存できるため、非構造データの保存にも適しています。

表1に示したとおり、RDBはセンサーデータの蓄積というユースケースには、あまり適していないと言えます。一方でNoSQLは、その特徴がデータストアの要件と適合しており、センサーデータ蓄積に適していると言えます。

NoSQLの分類

上述のとおりNoSQLには様々な実装があります。ここでは主要な3つのデータモデル(アプリケーションから見たデータ構造)に分類されるNoSQLをご紹介します。

データモデル Key-Valueストア(KVS) カラム指向 ドキュメント指向
データ構造のイメージ
特徴 ・データアクセスが高速
・小さい多数のデータの蓄積が得意
・一部のものはスキーマ定義が必要
・カラム指定での範囲検索・集計処理が得意
・ドキュメント毎に異なるデータ構造を持てる
・属性に対する検索・集計が可能
活用例 ・キャッシュサーバ
・ログ蓄積
・オブジェクトストレージ
・ログ蓄積
・ログ分析
・大規模データ処理
・ログ分析
・Webシステム
・オンラインゲーム
OSS例 ・okuyama
・Riak
・memcached
・Redis
・Cassandra
・HBase
・Hypertable
・MongoDB
・CouchDB
・Couchbase Server

表2: データモデルによるNoSQLの分類

1.Key-Valueストア(KVS)

データストア内で一意なKey(識別子)と実際に保存するデータであるValue(値)の、ペア形式でデータを持ちます。Valueの中に複数のサブキーを持たせてグルーピングができるKVSもあります。

2.カラム指向

Keyに対して複数のカラムを持ち、リレーショナルモデルに近いデータ構造を持つことができます。カラムにネスト構造を持たせられるものもあります。また、テーブルやカラムのスキーマ定義が必要なものもあります。KVSと比較して検索・集計処理を得意としており、ログデータの分析などに適していると考えられます。

3.ドキュメント指向

Keyに対して、「ドキュメント」と呼ばれるJSONやXMLなどの形式のデータを持ちます。ドキュメント内はネスト構造や配列などの複雑なデータ構造を採ることができます。スキーマレスであり、ドキュメントによって異なるデータ構造を持てます。
データ構造の自由度が高く、アプリケーションから使いやすい形式でデータを保存できるため、Webシステムのバックエンドなどに適していると考えられます。

これらの中でKVSは構造が最もシンプルであるため、センサーデータ蓄積システムのような小さくて大量のデータの蓄積や、高速なデータアクセスが必要な用途に最適と考えられます。

図2: KVSの位置づけ(クリックで拡大)

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