ForgeRockとの提携やOpenStandiaにみるNRIのオープンソース戦略
OSSをワンストップで導入するOpenStandia
NRIは2006年から、企業がOSSをワンストップで導入するためのOpenStandiaのビジネスを展開している。
OpenStandiaは、大きく分けて3種類のサービスからなる。1つ目は、約50種類のOSSを一手にサポートする「ワンストップサポート」だ。障害の一次切り分け支援から、セキュリティやバグフィックス情報の定期レポート、独自パッチの開発と提供、障害予防のための定期診断までサポートする。オプションメニューで、24時間365日のサポートにも対応する。
2つ目が、OSSの導入支援と基盤構築だ。導入のための評価や設計などの「導入支援」、実際の構築や設定、構築後の運用などの「システム構築運用」、障害から一般的な質問までの「サポート」などが提供される。
3つ目が、OSSを組み合わせてアプリケーションのシステムをワンストップで提供する「OpenStandiaソリューション」だ。前述したシングルサインオン&ID管理ソリューション「OpenStandia/SSO&IDM」をはじめ、ポータルサイトソリューションやERPソリューションなど、いくつかのソリューションを用意している。
NRIがOpenStandiaの一番の価値として考えているのが、ワンストップであることだ。「1製品だけなら、商用サポートのあるOSS開発元から直接買ってもいい。しかし組み合わせると、問題が起きたときの切り分けが大変になる。われわれがそうした障害解析などをサポートする」と高橋氏は強調する。
OpenStandiaの契約数は現在、延べ1000以上。ユーザー層は、高橋氏によると「先進的なネット企業などは自分たちでOSSを導入しますが、それ以外の企業で積極的な企業がOpenStandiaでOSSを導入しています」とのことだ。
OpenStandiaは最初、社内でJBossの経験を積んだものを社外に提供したのが始まりだったという。そうした経緯から、サポートする約50のソフトはほとんど自社で経験のあるものだ。「たとえば、ApacheとJBoss、Tomcatを組み合わせたときに、昔はバグや仕様の問題などで、どのソフトが悪いのか切り分けるところから対応してきました。最近はそのようなことは少なくなってきましたが、業務系アプリケーションでカスタマイズすると、普段は踏まないバグを踏むこともあります」と高橋氏は苦笑まじりに語る。
ミドルウェアやOSなどからスタートしたOpenStandiaも、現在、業務ソフトなどのアプリケーションまで幅広く扱っている。「最近はアプリケーションのレイヤーのOSSも枯れてきていて、商用業務システムに遜色ないものも出てきている。そこを積極的にサポートしていく」と内山氏は説明する。さらに最近では、AWSなどのクラウドプラットフォーム上でのシステムもサポートし、問題発生時の切り分けなどに対応しているという。
こうしたOSSの中でNRIが注目している4つを高橋氏が紹介した。1つ目は、ドキュメント指向NoSQLデータベースの「MongoDB」。RDBMSと違った使い方などを含めてNRIがサポートしている。Web系のほかに、製造業のログ情報活用などでの採用例もあるという。
2つ目は、ECM(企業内文書管理)の「Alfresco」。Think ITでも何度か取り上げたOSSだが、「スマートデバイスにも対応するなど、最近特にこなれてきた」(高橋氏)。
3つ目は、BIスイートの「Pentaho」。ダッシュボードやレポーティング、多次元分析、データ統合、データマイニングなど、各職種に対応したさまざまな機能を持つ。「最近、BIやビッグデータが盛り上がって注目しています」(高橋氏)。
4つ目が、レポーティングソフトの「Jaspersoft」だ。もともと帳票ソフトだが、現在ではデータを分析してレポートを作成するようなBIの機能も備えている。
「昔は企業においてOSSは特殊なものでしたが、今は一般的なものになりました。32%の企業がOSSを採用し、OSSを活用している企業はビジネスも成長している、という統計もあります」と高橋氏。
内山氏も「OSS利用に積極的なネット企業以外でも、情報システム部門と事業部門が密になって、OSSをトップライン(売上高)の道具に使っているケースが見られる。経費削減の守りから、攻めに視点が移っているのかな、と思う」と語った。
最後に今後のID管理やOpenStandiaの事業について質問したところ、高橋氏は「マーケットや業界を見ながら柔軟に動いていくつもりだが、"認証"を基点に広がる領域、例えばBIやECMなどのアプリケーションに近い基盤へと連携を広げていきたい」と答えた。
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