先月21日、サンフランシスコで行われたTechCrunch主催の会議、Disruptにおいて、仮想現実を推進する3人が登壇し、仮想現実の可能性と落とし穴について語った。
会議では、ソニーの研究開発部門トップのリチャード・マークス、Felix & Paul Studioのポール・ラファエル、HTCのクロード・ゼルウィガーというVRのパイオニアである3人により、活気に満ちた議論が行われた。しかし、これまで見てきたものから判断すると、従来のテクノロジーは、未来の可能性に比べればまだ序の口である。
バーチャル・リアリティの多様な用途
拡張現実および仮想現実は、教育から医療、建築、不動産販売まで、あらゆる分野において既にツールとして機能しうる存在だ。
たとえば、医師を例に挙げよう。ある病状について読んで知ったり、2D画像を見るだけではなく、「(拡張現実や仮想現実は)疾患の中に入り込むことができるのです」とHTCのゼルウィガーは述べた。彼の所属するHTCでは、間もなく発売されるVive VRヘッドセットを開発している。学生は歴史的な出来事の起きた場所を訪れたり、世界のどこからでも偉大な芸術作品を体験したりできる。
この新たなテクノロジーで成功するための秘訣は何か?ラファエルによると、それは3つに要約されるという。「(このような体験は)見栄えがする、気持ちよく感じる、魅力的である、というものでなければなりません。これら3つのうち、いずれかでない場合は失敗です」。
VRはまだ完璧なメディアというわけではない。テクノロジーを提供する側にとって扱いにくい分野の一つはオーディオだ。フラットな音により「雰囲気が台無しになる」可能性があるとラファエルはつけ加えた。
新規参入者のために、VRを使いやすく
初めてVRを試してみるようなVR否定論者ですら、このテクノロジーを利用すれば「物語に加わっているように感じられる」とマークは述べた。ソニーの場合、とりわけゲームや映画など、エンターテインメントに深く関与しているのは明らかだ。同社は、初めて利用するユーザーが、多くの場合、「VRに入りこむことがとても楽しいと知って非常に驚く」ことを指摘している。
ラファエルは、セットアップは一見するとかなりヘンな外観であることを認めつつも、「非対話型コンテンツですら、VRの空間にはあるレベルの相互交流がある」と述べた。
「外から見ると、人間文化の終わりが始まったようですが、内側で体験しているVRは、フラットな画面を見るよりもずっと『人間的』なのです」。
だが、たとえ没入型環境であっても、それはまだ目と耳を覆われた孤独な体験である。しかし、いつかその孤独も過去のものとなるだろう。
「ユーザーは、この仮想世界で一人ではなくなるでしょう」。マークは、未来の仮想現実がはるかに社会的な体験となる可能性があるとほのめかした。
ゼルウィガーはそれに同意して「VRをとりまく状況は急速に進むことになるでしょう」とし、共有体験を楽しむことのできるこのテクノロジーが「スポーツ・アプリやエクササイズなどの分野にも開かれるべきだ」と述べた。
Felix & Paul Studioは公務にも参入しているようだ。ラファエルは、TechCrunchの司会者、ドリュー・オラノフから促され、同社が元大統領ビル・クリントンとのプロジェクトに取り組んでいると述べたが、それ以上の詳細は語られなかった。われわれはそのプロジェクトが実現されるのも待たねばなるまい。
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※本記事はReadWrite Japanからの転載です。転載元はこちらをご覧ください。