アプリケーションを仮想化するCitrix XenApp

2009年8月17日(月)
竹内 裕治

アプリケーションを利用する3つの方法

 XenAppでアプリケーションを利用するには、ユーザーの特性や利用する場面に応じて、次の3つの方法があります。

■オンライン1(サーバーホスティング)

 従来から利用されている「公開アプリケーション」と呼ばれる方法で、クライアントアプリケーションをXenAppサーバーにインストールして実行します。アプリケーションの画面イメージをICAプロトコルに載せて、ユーザーの端末に表示します。ひとつのWindowsサーバーOS上に複数のアプリケーションを起動し、ユーザーに提供します。

 IAサーバーの高いコストパフォーマンスを最大限に利用し、接続セッション単位で最も高い費用対効果を実現します。サーバーデスクトップを「公開デスクトップ」として、ユーザーに提供することも可能です。

 ユーザーは、Citrix環境へログオンした後、目的のアプリケーションを起動して利用するか、あるいはサーバーデスクトップを表示し、そこから目的のアプリケーションを起動することもできます。

■オンライン2(VMホスティング)

 XenApp 5.0 Feature Pack 2では、これまでのアプリケーション利用方法を補足し、仮想環境でも100%のアプリケーション互換性を実現します。

 VM(ハイパーバイザ上の仮想マシン)上のクライアントOSにアプリケーションをインストールし、実行します。画面イメージをXenApp経由でICAプロトコルに載せ、ユーザーの端末に表示します。アプリケーションとしてはクライアント環境相当に存在し、実行されますが、ロケーションはサーバー側、データセンターに集約され、集中管理されます。

 XenDesktopでも、この仕組みを動かないアプリケーションの救済として利用しますが、XenAppではVMにつきひとつのアプリケーションに限定し、必要があるアプリケーションセッション分のVMが作成されます。つまり、1アプリケーションセッションに対して、1VMが割り当てられます。

 VMのみでなく、ブレードPCやクライアント端末として利用していた通常のPCも利用可能です。現状のCPU性能やIAサーバーのコスト効果を考慮すると、セッション集約率が最も高い上記のサーバーホスティング型を補足し、TS/RDS未対応のアプリケーションを利用可能にするオプションとして使うことをお薦めします。

■オフライン

 独自のアプリケーションストリーミング技術を使い、クライアント端末のキャッシュ上でアプリケーションを実行するので、オフラインでもアプリケーションを利用できます。シャットダウン、リブートにより元の状態に戻ります(ストリーミング配信されたパッケージは消去)。

 .ini、.dllなどアプリケーション実行に必要なリソースファイルをプロファイルとして定義し、ファイルサーバーに保存します。プロファイルは実行可能なアプリケーション実行パッケージで、SMBプロトコルを経由してクライアント端末へストリーミング配信されます。実行環境はパッケージ内で完結するので、同じアプリケーションの異なるバージョン(例:Excel 97、2003、2007)も同時に利用可能です。

 XenApp上で実行するアプリケーションの互換性を高める技術、アプリケーション分離環境(AIE)を利用したもので、ネットワーク接続環境のないオフラインでも必要なアプリケーションが利用可能にすることに加え、サーバーへのアプリケーションインストールが不要、サーバー集中化管理などのメリットも享受できます。

プロビジョニングサービス

 これらのアプリケーション利用方法をバックエンドで支え、管理効率を高め、コストを抑制する革新的なツールがプロビジョニングサービスです。

■シングルイメージを一括配信

 サーバーで実行するアプリケーションセットのイメージ、VMやブレードPC等で実行するアプリケーションセットのイメージ、またあらゆるXenAppサーバーの構成イメージをそれぞれひとつのゴールデンマスター(テンプレート)から、ネットブート技術により複数の対象に一括配信します。

 これも仮想化技術のひとつで、仮想ディスク(vDisk)を複数のマシンから呼び出して実行するため、複数のコピーを作成するコスト、それらを保存するストレージコストは発生しません。同じイメージを展開しても、ユーザー固有環境は別のサービス(移動ユーザープロファイル、プロファイル管理)により実現できます。

 プロビジョニングサービスにより、必要な時にイメージが展開され、実行環境が整えられるので、常にメンテナンス済みの最新、最適な状態のサーバー環境が用意できるのです。

■システムそのものを仮想化する

 最後に、すべてのXenAppコンポーネントは物理環境はもちろんのこと、仮想環境にも構築し、ホストすることが可能です。しかも追加費用は不要です。すべてのXenAppエディションには、サーバー仮想化プラットフォーム、XenServerが付属します。

 XenServerはクラウドで最も実績ある仮想化エンジン+GUI管理コンソール+ライブマイグレーション・リソースプール+基本ストレージサービスと言えます。Webダウンロードして10分ほどでインストール、初期設定まで完了してしまうほど簡単に使えますが、何よりもメリットはXenApp実行のために最適チューニングが施されていることです。従来は40%強あったパフォーマンス劣化を、8%程度に低減し、仮想環境でも物理環境と遜色(そんしょく)ないレベルです。

 仮想化技術を広範に適用した結果、Citrixのアプリケーション仮想化システムはかつてないほどの柔軟性と運用管理性を提供するに至りました。しかも、ユーザー体験と生産性とセキュリティーを高いレベルで両立します。

 Citrixのクライアント環境の仮想化は、XenDesktopによってデスクトップ環境を、XenAppによってアプリケーション環境を、それぞれ別に集中管理しながらもユーザーとしては両者を透過的に、どこにいてもシームレスに利用できます。

シトリックス・システムズ・ジャパン株式会社
テクニカルコミュニケーションサービスプロバイダー、米系ソフトウエアメーカーを経て、2002年Citrix入社。以降、製品管理・マーケティングを担当。テクノロジーは理解され、使われないと意味がないという認識に立ち、自社製品の真の価値を伝え、普及させる活動を展開。XenAppラインが担当だが、全製品をまとめる窓口でもある。

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