ブレード仮想化の統合メリットと先進性
PowerVM仮想化によるUNIXブレードの先進性
■AIX 6のメモリーページ保護強化とWPARを使用した仮想化
POWER6+搭載のJS23とJS43では、仮想メモリーページの上書きによる障害を防ぐストレージ・キーが8個から16個に増えています。従来のユーザー用、カーネル用アドレス域に加え、POWER6+では新たにハイパーバイザーのアドレス域も対象となっています。ハイパーバイザーはCPUやメモリーなどの資源細分化やLPAR割り当てといった仮想化の重要な処理を行うため、仮想化の堅牢性をさらに強化しています。
AIX 6では、Power Hypervisorのハードウエア論理分割とは異なる、OS論理分割のWPAR(ダブル・パー:Workload Partitionの省略形)があります。WPARは、旧来AIXで提供されているプロセス、もしくはユーザー単位でCPUやメモリーの使用率割合を配分するワークロード・マネージャー(WLM)の進化形とも言えます。
WPARは、WPAR仮想化ではVIOS内のIVMを必要としないため、ブレード内でLPARを区切らずに単一OSを導入して仮想化するという手軽さもあり、またPOWER6だけでなくPowerPC970やPOWER4、POWERなどのプロセッサー5上でも使えることが利点です。
■POWERブレードにおけるVIOSの役割
VIOSはI/Oアダプターを仮想化するためのソフトウエアで、POWERブレードにおいてはHMCに代わってLPAR管理を行う重要な役目も担っています。AIXやLinuxではVIOS無しで単一OSをPOWERブレードに導入することが可能ですが、IBM iではVIOSのIVM機能と共にLPAR環境として構成する必要があります。
プロセッサ・プールはHypervisor、HMCの連携により実現できますが、メモリーをプール化するActive Memory Sharing(AMS)はHypervisor、HMC、VIOSの連携を必要とします。それはなぜかというと、メモリー・プールのページングディスクをVIOS経由で供給するからです。
このように資源によってプール化の手法が異なることから、クラウド要素としてあげられる資源プールのしくみは、資源に応じて異なる技術を組み合わせて実現されていることがわかります。POWER6のLive Partition Mobility(LPM)でもVIOSは必須条件のひとつで、POWERブレードの環境でも利用可能です(図3参照)。
■Lx86でx86環境の資産を有効活用する
PowerVMスタンダードにはLx86ソフトウエアが付属しています。まずPowerアーキテクチャ向けのRedHatもしくはSUSEを導入し、Lx86ソフトウエアを導入してx86 Linuxアプリケーションの実行環境をつくると、x86 Linuxサーバー上のアプリケーション資産を無駄なくPOWERブレード上で実行できるようになります。Lx86はいわばエミュレーションですが、PowerVMでは仮想化機能のひとつと位置づけています。
統合時の煩雑さを回避するIBM Systems Director
ブレードによる物理統合や論理統合が進むと、一つひとつの仮想マシンやプロセッサー・アーキテクチャの異なる各ブレードをばらばらに管理することはとても煩雑になり、また操作ミスなどのヒューマンエラーも気がかりです。
IBM Systems Directorは全体インフラの最適化が進んできた環境に適したソフトウエアです。各サーバーやブレードの筐体電源のON/OFF、ハードウエアのエラー監視、ネットワークのトポロジー表示に加え、LPARや仮想マシン単位の開始/停止やCPUおよびメモリー使用率の把握などの機能を提供します。Directorはさらに、IBM Tivoliソフトウエアとの連携で組織単位課金といったプロビジョニングを目指しています。
Directorのアドオン機能Active Energy Manager(AEM)では、POWER6の場合、EnergyScaleテクノロジーにより、CPUクロック速度を制御し省電力モードとして動作させるEnergyScaleテクノロジーにより、省電力化を実現します。ラック搭載型モデルやブレードはラック内での集約度が高いので、温度監視や省電力モードでの稼働は環境対策やコスト削減の観点で威力を発揮します。
またDirectorアドオン機能の仮想マシン管理ツールであるVMControlは、PowerVMのAIXに対する実装であり、仮想マシンをLPARにみたて、AIXのNIM(Network Install Manager)イメージの作成、キャプチャー、デプロイを行います。
今回はブレード仮想化の統合によるメリットについて解説してきましたが、いかがだったでしょうか。異機種混在のブレード環境では、今後VMControlのようなマルチプラットフォームの仮想マシン管理ツールが積極的に用いられることでしょう。