クラウドで利用できるRDBMSとしてのSQL Azure

2009年9月15日(火)
田中 主夫

PHPプログラムもクラウドに移行

 簡易的にではありますが、WordPressの『データ』をWindow 2008 Serverで稼働するSQL ServerからSQL Azure のデータベースに移行することができました。このWindows 2008 ServerのIIS7で動くWordPressが使用するデータベースをローカル[1]からクラウド[2]に変更してみます(以降[1]~[4]について図3-1参照)。

 インターネット越しのデータベースアクセスですので、さすがに表示速度が落ちましたが、通常の画面は動作するようです。また管理画面も遅いものの、機能自体は動作しているようです。

 しかし、内部エラーとなる処理があり、IISの失敗のトレースを設定し、ログファイル(図3-2参照)を確認したところ30秒前後で終了していることから、php.ini のmax_execution_time の値をデフォルトの30秒から60秒に変更したところエラーは収まりました。またWindows Azure関連の制限事項かと思いましたが、原因はphpの設定でした。

 次に30秒以上の処理時間がどう変化するか「プログラム(PHPとWordPress)」もWindows Azureホスティング・サービス[3]へ移行してみることにします。

 ここではWindow Azure本番環境へのPHPプログラムのデプロイ手順について詳しい説明はしませんが、PHPの設定を済ませたWindows Azure環境であれば、ローカルのIIS7環境で利用しているWordPressのフォルダのコピーを配布先に追加し、クラウドへ再配布することで作業完了、WordPressがクラウドで動きだしました。30秒以上かかっていた処理もプログラム、データの両者をクラウドに配置[3]することで、元通り[1]の速度で動作するようになりました。

 さらに、nvarchar(4000)で一時的に対応した列データや添付ファイルをWindows Azure Blobに格納[4]し、またデータ量が膨大となるテーブルは Windows Azure Tableを利用するようにプログラムを改訂すれば、本格的なスケーラビリティーを誇るシステムが完成するわけです。

【補足】クラウドに移行後、SiteUrlをWordPressの管理画面から更新する必要がありますが、自動的に旧サイトにリダイレクトされてしまうため新しい管理画面に遷移できないことに気がつきました。こうした際にSSMSやsqlcmdでデータベースに接続できて、SQLで直接データを更新できるのには助けられます。

update wp_options set option_value = 'http://6a829af42dad4cb7a2d5810a42a22181.cloudapp.net/wpazure' where option_id = 1


■SQL Azure Databaseの制限事項

 今回の範囲で感じた主なSQL Azureの制限事項は以下のとおりで、大半はテーブル作成の際のものです。

・1つ以上Clustered Indexが必要
・text、image型が利用できない
・既存のシステムのテーブル定義用のスクリプトがそのままでは利用できない、など。

 また接続制限のガイドラインとしては、Guidelines and Limitations(SQL Azure Database)[※2]に記述があり、次の項目がリストされています。一番のポイントは現在の制限時間は5分に設定されていて、大きなトランザクションはこの時間内に収まるように小分けにすることが推奨されている点です。

・Excessive resource usage
・Long-running queries
・Long-running single transactions, between the BEGIN TRAN and END TRAN statements
・Idle connections

 SQL Azureの操作にSQL Server Management Studioを使っていると、たびたび再ログインを求められ、アイドルコネクションは5分より短いのではないか(?)というのが実感です。

今回のまとめ

 SQL Azureはいくつかの制限事項はあるものの、クラウドで利用できるRDBMSであるといえます。実際にPHPで書かれたオープンソース・ソフトをSQL Azureを使い稼働させることができました。

 ただし、既存のプログラムをそのままで動作させるには、速度面の問題からデータベースだけでなくプログラム側も同じクラウドであるWindows Azureで動作させる必要がありました。

 次回はこれまでの総括として、クラウド環境でのストレージに何を求めるのか、問題点は何か、また将来的な可能性について考察していきます。

※2 Guidelines and Limitations(SQL Azure Database)(http://msdn.microsoft.com/en-us/library/ee336245.aspx)(アクセス:2009.09)

ERPの導入支援に携わりOracle, SQL Server, DB2などのRDBMSを扱う。クラウドの出現により、これで速度劣化のトラブルから開放されるかと思いきや、ストレージ面ではRDBMSの便利さにあらためて感心する面も。インストールマニアックス2008では苦労の甲斐(http://iis.museum-in-cloud.com)あって勝利。褒美のマイクロソフト本社訪問でWindows AzureのSQL機能を知る。

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