ストレスが引き起こす病気と症状
こころの病気:不眠
ストレスが引き金となり、こころの病気に発展してしまうことも少なくありません。具体的には不眠症、うつ病、適応障害、パニック障害、急性ストレス障害、アルコール依存症などさまざまな種類があります。ここでは代表的な病気を取り上げてみました。
1つ目が「不眠とアルコール」です。精神的なストレスから不眠になってしまう方は多くいます。また眠れないため、寝酒をたしなむという方もいらっしゃるのではないでしょうか?以下は実際によくあるご相談の一例です。
Q:私は単身赴任をして半年になります。21時過ぎには帰宅し、23時ごろにはベッドに入るのですが、数ヶ月前からなかなか眠ることができず、結局ウイスキーのロックを2~3杯飲んでやっと眠れるといった感じです。夜中にトイレに起きることも多く、朝も目覚めがすっきりしません。どうしたら以前のようにぐっすり眠れるのでしょうか?
夜なかなか寝つけない、朝の目覚めが悪い、ぐっすり眠れたと感じられないという症状はつらいものです。この方の場合は入眠障害、中途覚醒、熟眠障害などが考えられますが、いずれも睡眠障害でこのような症状が週3日、1ヶ月以上続いている場合は不眠症と考えられます。
不眠にいたる原因はいろいろありますが、ストレスや悩み、心配事などの心理的原因も大きな要素となります。また、単身赴任による生活習慣の変化、運動不足や食生活の乱れなども不眠と関連がある可能性があります。しかし何が原因であるかは別として、眠るためにアルコールを飲むのはよくありません。
アルコールには覚醒の働きを抑える働きがあるため、寝入りばなに効きやすく、またいったん眠ると深い眠りに陥るため、「よく眠った感」が出やすくなります。これがアルコールの催眠効果です。
しかし、少量であってもアルコールを「寝酒」として習慣づけると、脳はアルコールに対する耐性を作り出し、徐々に強いアルコールでないと効きにくくなります。このように飲酒量や度数を増やすことになり、さらに強い耐性が作られ、より強いアルコールを...といった悪循環を繰り返してしまいます。こうした状況が昂(こう)じると、深い眠りを求めるためにアルコールへの依存が増していき、アルコール依存症への道を歩む危険があります。
酒は百薬の長ともいわれ、適量を飲むのはよいのですが、眠るためのきっかけとして習慣づけるのは、脳や体にとっては負担となるだけでなく、結果不眠症を引き起こし、アルコール依存症にもなりかねません。ナイトキャップは、たまのお楽しみとして「たしなむ」程度にとどめておいた方がよいのです。
こころの病気:うつ病
一生に一度以上うつ病にかかる人の比率は15人に1人(厚生労働省「こころの健康についての疫学調査に関する研究」)、12歳以上のおよそ8人に1人はうつ病、うつ状態の可能性がある(ファイザー製薬調べ)といったニュースを耳にしたことがある方もいらっしゃると思います。
またWorld Health Organization(WHO)の調査ではうつ病は生活に支障を来し、場合によっては死亡の原因ともなる疾患として4番目に多く、2020年までには虚血性心疾患につぎ、第2位の疾患になると予想されています。このようにうつ病は大変ポピュラーかつ増加している疾患なのです。
ではうつ病の症状とはどんなものでしょうか。単に「気分が沈む」というだけでなく、こころとからだに図2のような症状があらわれます。
からだの症状が先に出て、内科で調べても特に異常がない、ということでメンタルクリニックに行く方も多くいます。気になる症状があれば早めに専門家に相談するようにしましょう。
うつ病については、再度第4回で詳しくお届けいたします。次は、こうしたこころとからだの病気への対処方法について、紹介しましょう。