GEから独立したGenpactが人工知能に対する取り組みを紹介
GEから分社したGenpact(ジェンパクト)は都内で記者説明会を実施し、AIの応用に関する製品やサービスの概要、計画などを解説した。GEは1892年創業のコングロマリットとして知られている超巨大企業だが、その中の一部門として顧客のアウトソースを行う部門としてできた組織を2005年に独立させたのが、Genpactだ。日本でもオペレーションのアウトソースとして、ビジネスを拡大しているという。
今回の発表は、米国では2017年9月20日に発表された人工知能に関する調査の紹介と、Genpactの持つ人工知能のためのフレームワーク「Genpact Cora」の概要を本社のチーフデジタルオフィサー(CDO)であるサンジェイ・スリバスタバ氏が説明するというものだ。
スリバスタバ氏は冒頭で、Courseraの創業者でGoogle Brainの元責任者、そしてBaiduの前チーフサイエンティストであったスタンフォード大学のAndrew Ng氏のコメントを引用し、「AIが新しい産業革命を起こす」と説明。人工知能の応用に先行する企業と、遅れを取っている企業に人工知能の必要性について大きな差があることを紹介し、人工知能に積極的に取り込まない企業は将来的に不安を抱えることになると示唆した。
そして企業が人工知能を取り入れるための課題として、必要とする「データ」の量、人工知能による結果を追跡するための「トレーサビリティ」、人工知能のプロジェクトを成功させる「予算、スケジュール管理」、人工知能導入に抵抗する企業の既存の文化を払拭するための「チェンジマネージメント」を挙げて、それらを解決するためのソリューションがGenpact Coraであるという。
Coraはあくまでもプラットフォームであり、その上に各業界に特化したアプリケーションが載り、それを適用するコンサルティングサービスを加えて完成するというのがGenpactのメッセージだ。
「Genpactは人工知能のリーダーとなる」という意欲的な説明もあったが、実質的にはオープンソースソフトウェアとして開発されているTensorFlowやCaffeなどのコンポーネントを活用するという方向のようだ。「重要なパーツとなる機械学習そのものを自社で開発せずに、オープンソースソフトウェアを組み合わせて使うのであれば、No.1にはなれないのでは?」という筆者の意地の悪い質問には「GoogleやAmazon、それにMicrosoftがやっていることは、誰もが使えるインフラとなる人工知能に関する技術の提供で、その上に業界ごとに特化した知識や経験を活かした人工知能システムが必要になる。Genpactはそのバーチカルに尖った部分をやることで、それらのインフラのプレイヤーとは競合しない」という回答を得た。
そしてGenpactの強みとして「オープンアーキテクチャー」と「モジュラリティ」の2つを強調したスリバスタバ氏だったが、オープンアーキテクチャーは「様々なオープンソースソフトウェアを取捨選択できること」であり、「モジュラリティ」はそれらを組み合わせて使えるようなフレームワークである、という。しかしながら、ビッグデータ関連のソリューションにおいて明らかなように、Hadoop関連だけで相当数あるオープンソースソフトウェアを自在に組み合わせて使いこなすことは相当難しく、MapRやCloudera、Hortonworksなどのベンダーでさえも自社で検証したコンポーネントを使ってパッケージ化していることを考えると、パブリッククラウドとオンプレミスのソフトウェアを組み合わせて「90日以内に人工知能のシステムの導入を完了」というのは、野心的と言って良いだろう。
実際にはRAGE-AIという2017年3月に買収したRAGE Frameworksという会社のソリューションと、2016年6月に買収したイスラエルのPNMsoftという会社のカスタマーサポート及びワークフローのソフトウェアがベースになっているようで、スライドの中で利用されたスクリーンショットもそれぞれの会社のソリューションのものであるようだ。つまり、ある程度完成された人工知能を応用した業務アプリケーションを顧客に導入することは短期間で可能と読み取るべきなのであろう。
またトレーサビリティについては、各コンポーネントを管理するコマンドセンターというソフトウェアがあることが差別化だとスリバスタバ氏は語ったが、「Genpact AIシステムによる規制、コンプライアンス、セキュリティを確保するための追跡機能」に関しては詳細な解説が行われなかった。機械学習などの結果について追跡を行うというものであれば、相当野心的と言えよう。この部分に関しても、詳細な解説が行われなかったのは残念だ。
Genpactの製品のポートフォリオを、スライドから紹介しよう。コマンドセンターを中心にデータ分析、人工知能がプラットフォームの要素として記述されている。Digital Coreがインフラストラクチャー、Data Analyticsがビッグデータ、そして自然言語、会話、コンピュータビジョンなどが人工知能として分類されている。興味深いのは、機械学習がData Analyticsの一部として区分けされていることだろう。
また日本での施策について「人工知能のリーダーとみなされるためには日本での露出が少ないのでは?」という質問にはGenpact Japan株式会社の代表取締役社長である杉浦英夫氏が「これまでのBPO(アウトソース先)の顧客から、人工知能のシステムを提案していきたい」と回答した。ここでも「人工知能だからといって特別なことをするのではない」という姿勢が垣間見えたと言えよう。
Genpactの日本法人が真剣に人工知能のリーダーになりたいのであれば、顧客事例を発表するだけではなく、まずはホームページをUSに同期させ、人工知能製品に関する日本語ページを公開し、人工知能という検索ワードからも流入が起こるようにするべきだろう。また業務アプリケーションをベースにして導入を進めるのであれば、業務プロセスや用語など多くの部分を日本語対応する必要があると思われる。自然言語処理においては日本語対応が終わっているとスリバスタバ氏は回答したが、それがどこまで業務で使われる専門用語に対応しているのかなどについては、今後の日本での導入事例を待ちたいと思う。
参考:日本法人のHP http://japan.genpact.com/jp/
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