AIは究極の悪になりえるか? Tim O'Reillyの答えは?

2018年1月12日(金)
松下 康之 - Yasuyuki Matsushita
オライリーのAI Conferenceレポートシリーズの最後は、Tim O'Reillyによるクロージングセッションと、会場の様子をお届けする。

AIは悪になりうるか?

オライリー開催のAI Conferenceレポートの第9弾、そして最後の記事は、イベント全体の振り返りとタイトルにあるように「映画のターミネーターで描かれたような人工知能が究極の悪になりえるのか?」についてイベントの主催者であるO'Reilly Mediaの創業者でありCEOであるTim O'Reilly氏の言葉を紹介しよう。結論から言えば、Tim O'Reillyは人工知能に関しては非常に楽観的なようだ。

クロージングトークを行うTim O'Reilly氏

クロージングトークを行うTim O'Reilly氏

人類と社会は、ナチズムをはじめとして多くの災いに遭遇していたが、結果的に多様性のある思想や人間そのものの弾力性によって、一気に悪い方向に行くことはなかったと語ったが、参加者にとって一番説得力のあったのは次に示すこのスライドではなかっただろうか。

Andrew Ng氏の「まだ人工知能は意識を持てない」という説明

Andrew Ng氏の「まだ人工知能は意識を持てない」という説明

Ng氏はスタンフォードで人工知能を教える教授の肩書の他に、かつてBaiduで人工知能のトップであり、シリコンバレーでは人工知能の第一人者と言って良い人物だ。

スライドのコメントを筆者なりに訳してみる。

「我々のように第一線で人工知能のコードを書きながら、人工知能の可能性に期待を見出している者にとって、ソフトウェアが意識を持つという現実的な道筋はまだ見えていない。

知能と意識には大きな違いがある。将来、殺人ロボットを作るための競争が激化する可能性はあるが、私にとって、人工知能が悪にならないようにする努力は、火星に移住した人類が人口過密にならないために努力するのと同じ程度に必要性を見いだせないことだ。

もしも人類が火星を植民地としたとして、そこに多くの人類が移住を始め人口が増えたのであれば、それについて何かをする必要があると思うが、まだその必要はない。それと同様に、人工知能を悪にしないための仕事をする必要はないと考える」

つまり、まだ人工知能はそのレベルに到達していないのに、心配をする必要はないということだ。

今回のカンファレンスでは、ほとんどのセッションでこうした楽観的な気分が漂っていたように思える。それくらい「今の技術で可能な範囲で、人間がマニュアルでやれない規模のことを高速に行う」ために、人工知能は役目を果たすという立ち位置は通底していたように思う。

次に紹介したいのは、GoogleとMicrosoftのこんなスライドだ。

Microsoftのスライド

Microsoftのスライド

Googleのスライド

Googleのスライド

Microsoftは「Enterprise-Proven Solution」「Open and Flexible Platform」というポイントを挙げて、これまでMicrosoft、つまりエンタープライズの開発者にフレンドリーなプラットフォームの会社、そして今のMicrosoft、つまりプロプライエタリなソフトウェアから決別してオープンソースソフトウェアに舵を切った会社、その両面から人工知能の訴求を行っているように見える。

一方のGoogleは、人工知能の利用者を「エンジニア」と「データサイエンティスト」に分けて訴求している。つまりGoogleは、ビジネスに責任を持つ人には語りかけていないということが見て取れるスライドであった。この2枚のスライドは、キーノートが行われる会場のセッションの合間に無限ループで表示されるスライドだ。つまりここには、スポンサーとして伝えたいことが凝縮されていると見てもいいだろう。この辺りに2社の違いが垣間見える点も非常に興味深い。

軒を競う大小様々なブース

最後に、カンファレンスにはつきものの展示ブースを紹介しよう。

主催者であるO'Reilly Mediaのブース。無償の冊子を配布していたお陰で、いつも大盛況であった。

O'Reilly Mediaのブース

O'Reilly Mediaのブース

同じく主催者であるIntelのブースもいま一番の売り出し中のNervanaを中心に大きなブースを展開中。

Intelのブース

Intelのブース

スポンサーでは最大のIBMも、ビジネス向けWatsonをメインに展示。

IBMのブース

IBMのブース

一方、IBMに次ぐ規模のスポンサーであるMicrosoftとGoogleのブースは、数枚の液晶モニターの近くに担当者が立っているだけというもので、ひとことで言えば地味だった。基本的には、聞きにきたら相手をしてあげるよというぐらいの態度である。しかしこれはこの2社に限ったことではなく、基本的には欧米のブースのスタイルはこういうものだろう。キレイなコンパニオンがノベルティを配りまくる日本のIT展示会が、むしろ特異であると言える。

Microsoftのブース

Microsoftのブース

Googleのブース

Googleのブース

他にもApache Sparkの主な開発を行っているDatabricksやSAPなどもブースを展開していた。

Databricksのブース

Databricksのブース

全体的にメジャーな企業は鷹揚に構えている一方、多くのスタートアップは最小サイズのブースにテーブルとモニター、さらに複数の社員を張り付けて、精一杯主張をするというのが全体の傾向だろう。

狭い会場には常に人が溢れていた

狭い会場には常に人が溢れていた

全体を通じて、元気のあるスタートアップとGoogle、Intel、IBM、Microsoftなどの大手が狭い会場に詰め込まれてしのぎを削っているという感じのカンファレンスであった。来年はどんなベンダーからどんな話が出てくるのか、また日本からも参加者や出展者、セッションスピーカーが増えることを期待したい。

著者
松下 康之 - Yasuyuki Matsushita
フリーランスライター&マーケティングスペシャリスト。DEC、マイクロソフト、アドビ、レノボなどでのマーケティング、ビジネス誌の編集委員などを経てICT関連のトピックを追うライターに。オープンソースとセキュリティが最近の興味の中心。

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