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アイトラッキングがもたらす当てずっぽうマーケティングの終焉

2017年12月18日(月)
ReadWrite Japan

自分がどこを見ているかを周りの人全員が知っているとしたらどうだろう? 誰かと話している時、自分が女性の目や胸を見ていると知られたり、隣人との会話で自分の視線が泳いでいると知られたとしたら。

数年前、セールスマンがシースルーのゴーグルを使った視線追跡のデモンストレーションを行うのを見る機会があった。彼はブースでゴーグルを着用し、その彼がどこをみているかを表示するスクリーンがあった。その製品はさまざまなことに応用できるもので、その一つがどのシリアルが売り場の目を引くかなどの市場リサーチだ。また車のダッシュボードのレイアウト決めなどのインターフェースデザインにも使えるだろう。しかしこの技術のデモを行うにあたり、セールスマンは社会的な問題を避けるためのトレーニングを受けなければならなかっただろう。

将来、VRゴーグルと視線だけでゲームやWeb閲覧ができるようになったらと想像してみよう。まず大きな利点はある。視線の中心は高精細、その周りは低精細でいいのでレンダリングは速くなる。UIのエレメントが視線に反応するようになることからインターフェースも簡単なものになるだろう。バーチャルなキャラクターとのやりとりもより自然なものになるはずだ。アバターにウインクしたり悪者を睨みつけたり、バーチャルの鏡に自分を映して、鏡の中の自分が同じように視線を動かしているのを見ることもできる。

これは同時に、システムから常に視線をモニターされるということでもある。マーケッターにとっては天国のような話だ。あなたが何に気を引かれたかを予測する必要はなくなる。全方位動画の何に注意を向けたか、どの広告が一番効果的だったか、何が原因で興奮や恐怖を指し示す瞳孔の拡張収縮が起きたかなど全てわかるようになる。

プライバシーはどうなる?

視線追跡には多くの利点があるが、深刻なプライバシー上の懸念も付いてくる。ユーザーは利点の方がずっと大きいからということでこれを受け入れるだろうか? 視線追跡の利用を特定の目的のみに制限する方法はあるのだろうか?

ある人はこんなものはWebの閲覧履歴みたいなものだというだろう。Googleそのほかはあなたが何をクリックしたかを分析している。あなたが見かけるWeb広告は訪れたサイトに影響されている。携帯の位置情報も同じだ。では視線追跡も同じだろうか?まぁ答えはYesと言えるだろう。

TobiiやSMIなどの視線追跡を扱う企業はこの点を気にしている。Tobiiの場合、データの利用について明示的な同意を得ることを勧めている。マウスでリンクを開くのと異なり、視線は半分無意識に向けられるものであり、自分がシェアすることを同意した範疇以上のことを開示してしまうかもしれない。

プライバシーと利用契約は時には一般的な企業を通じて扱われることもある。ここで述べたようなことがいつ頃現実のものとなるかは定かではない。Khronos OpenXRはVR/ARにおける標準化の取り組みの一つである。その標準に視線追跡が最初から範囲に入るかどうかは明らかではないが、範疇だったとしてもプライバシーの扱いまで取り上げられる保証はない。

視線追跡はゲームやネットサーフィン以外にも強力な使い方ができるものだ。障害者の生活を大きく改善することや、視覚障害者がよりよく物を見えるようになることだって可能だろう。プライバシー上の懸念は視線追跡技術を捨てる理由にはならない。VRゴーグルで使われるようになりつつある今、我々はようやくこのことについて考えるようになったのだ。

この記事は仮想現実シリーズの一部である。上図の高精細版はこちらからダウンロード可能だ。

YUVAL BOGER
[原文4]

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