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工数見積もりの見える化

2008年10月6日(月)
松本 健一

既製モデルに基づく工数見積もり

 既成の工数見積もりモデルの一般形を図2-1に示す。

 ここで、Eは開発工数(一般には、仕様決定後からシステムテストまでの工数)、Lは開発規模(ソフトウエアサイズ)で、pは生産性調整係数、cは定数である。

 先ほど、「ソフトウエアの特性や開発プロジェクトの特性をパラメータとして与える」と書いたが、多くの工数見積もりモデルでは、開発規模(ソフトウエアサイズ)が主要なパラメータとなる。古くは、プログラム行数(LOC: Lines of Code)が、最近では、ファンクションポイントが用いられる。なお、行数などはプロジェクト開始当初にはわからないので、工数見積もりモデルにパラメータとして与える開発規模の値そのものが見積値であることも珍しくない。

 また、生産性調整係数pは、開発規模と工数の関係、つまりは生産性に影響を与える要因によって決定される係数とされているが、定数cと同様にあらかじめ与えられている場合も多い。モデルを利用する立場からすれば、その来歴はともかく、モデルに含まれるもう1つの定数に過ぎない。

 この形のモデルの最も初期のものの1つが、WalstonとFelixによるモデルである。1977年に発表されたモデルを図2-2に示す。

 先ほどの一般形に当てはめると、生産性調整係数p=5.2、定数c=0.91である。このモデルは、IBM Federal Systems Divisionのおける60個のプロジェクト(規模:4,000~467,000LOC、工数:12~11,758人月)のデータに基づいて作られたものである。

COCOMOの工数見積もりモデル

 その後1981年に、B.W.BoehmがTRW社で収集したデータに基づき提案したCOCOMO(COnstructive COst MOdel)が、この形の工数見積もりモデル(コスト見積もりモデル)としては最も有名である。COCOMOはいくつかのモデルで構成されるが、最もシンプルな初級COCOMOでは、開発規模と工数の関係は図2-3のように表される。

 COCOMOでは、見積もり対象プロジェクトを次の3つのタイプに分類している。

 1つ目が「organic」である。これは比較的小規模の開発チームによる自社開発のような、熟練度の高い開発形態だ。在庫管理システム、科学技術計算用パッケージなどの開発が当てはまる。

 2つ目が「embedded」で、開発チームが大規模なタイプである。厳しい制約条件の下で要求仕様の変更も頻発する開発形態だ。OSの開発などが当てはまる。

 3つ目が「semi-detached」で上記2タイプの中間的形態となる。

 そして、タイプごとにモデル式の生産性調整係数pと定数cの値を与えている。したがって、例えば、見積もり対象プロジェクトの開発規模が同じ100KLOCであっても、比較的小規模で仕様変更も少なく見通しのよいorganicタイプのプロジェクトでは、工数見積値はおよそ302人月であるが、大規模な開発で、制約条件が厳しく仕様変更も頻発するembeddedタイプのプロジェクトでは、そのおよそ3倍の約904人月が工数見積値となる。

 また、詳細は省略するが、中級COCOMOと呼ばれるものでは、15個のコストドライバ(コスト誘因)がモデルに導入され、ソフトウエアの特性や開発プロジェクトの特性により、工数見積値の補正が可能となっている。さらに、2000年に発表されたCOCOMO II(http://sunset.usc.edu/csse/research/COCOMOII/cocomo_main.html)では、その後のソフトウエア開発形態の変化やプロジェクト評価技術の進歩に合わせ、17個のコストドライバを再定義すると共に、開発規模に影響を与える5個のスケールファクタが、モデルのパラメータとして新たに追加されている。

 しかし、COCOMOなどのモデルが、自分たちのソフトウエア開発プロジェクトにそのまま適用できるとは限らない。適用できたとしても十分な見積もり精度が得られないかもしれない。となると、見積もりモデルを作ることになる。

奈良先端科学技術大学院大学
奈良先端科学技術大学院大学 松本 健一。1989年5月大阪大学・基礎工学部・情報工学科・助手、1993年4月に奈良先端科学技術大学院大学・情報科学研究科・助教授、2001年4月から同大学教授。合同会社EASE創研業務執行社員。ソフトウエア工学、特に、ソフトウエアメトリクスの研究に従事。2007年8月から、ソフトウエアタグの研究開発を目的とした文部科学省STAGEプロジェクト研究代表者。http://se.naist.jp/http://easesoken.com/http://www.empirical.jp/http://www.stage-project.jp

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