当事者が語る!パラレルワーカーやフリーランスが企業の人材課題を解決するヒント
10月31日(水)、AP東京八重洲通り11階にて、関東経済産業局主催のイベント「人手不足に打ち勝つ!新時代の外部人材活用セミナー ~兼業・副業・フリーランス活用のススメ~」が開催された(参考:関東経済産業局における「兼業・副業による人材の受け入れニーズ調査報告書」)。
近年、企業における人材確保が困難を極めており、これからは正社員以外の人材、フリーランスやパラレルワーカーなどの社外の人材と協力していく必要性が強まると予想されている。
しかし、その一方で、企業が外部の人材と手を組むことに対して、漠然とした不安や疑問を抱えているのも事実であり、一歩を踏み出せない企業も多い。
本イベントでは、社員以外の外部人材を積極的に活用している企業3社と、自身もフリーランスとしてさまざまな企業で活躍する一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会 代表理事 平田 麻莉氏が登壇し、フリーランスと企業が上手にパートナーを組む秘訣についてさまざまな意見が交わされた。
副業や兼業は新しい概念ではない
トークセッションに先駆けて、2つの基調講演が行なわれた。1つ目は株式会社クオリティ・オブ・ライフ 代表取締役 原 正紀氏による「兼業・副業による人材の受け入れニーズ」というテーマの調査報告だ(参考:関東経済産業局における「兼業・副業による人材の受け入れニーズ調査報告書」)。
原氏は講演の冒頭で「兼業と副業は新しいようで当たり前の考え方である」と前置きし、「兼業・副業による人材受け入れニーズ調査報告書」をもとに企業が抱えている人材課題を紹介。「大企業が抱える人材育成や生産性向上に関する人材課題も、中小企業が募集しても人が集まらないという課題も、外部人材の活用でおおむね解決されるものであり、実際に多くの事例がある。今後は外部人材の活用可能性を啓発すること、人材マッチング支援の推進、受け入れ企業の負荷軽減等に向けた施策が必要」と話した。
これからの人材獲得にフリーランスはマストな存在
続いて、平田 麻莉氏が「兼業・副業・フリーランスの未来と中小企業での活用法」とテーマで講演を行った。
自身もフリーランスとして働く平田氏は「以前はフリーランスというと、ライターやデザイナーなどのクリエイティブ系が圧倒的に多かった。しかし、今ではハンドメイド作家などの職人フリーランス、広報や事務などを担うビジネスフリーランスなどフリーランスの種類も多様化しており、それに伴って契約単位もスポット型からプロジェクト型、ミッション型など多様化している」とフリーランスを取り巻く現状を説明。今後フリーランスと手を組みたいと考えている企業の人材担当者を頷かせていた。
また、近年パラレルワーカーやフリーランスが増えていることから、「厚生労働省や経済産業省などではフリーランスを守るための施策が日々検討されている」として、このような追い風を受けて「今まさに人材獲得競争の戦場は、転職マーケットからフリーランス・複業マーケットへ拡がっているところです」と結論付けた。
副業で得られる効果とその課題
基調講演に続いて行なわれたトークセッションでは、原氏と平田氏に加え、専業禁止を掲げる株式会社エンファクトリー 代表取締役社長 加藤 健太氏、柔軟な働き方ができると話題のサイボウズ株式会社 執行役員 カスタマー本部長 関根 紀子氏がパネリストとして登壇。ファシリテーターは法政大学大学院政策創造研究科教授 石山 恒貴氏が務めた。
Q:副業社員や外部人材を導入して得られた効果とは
- 原:例えば中小企業が「社内のグローバル化を進めたい」と考えた場合、外国人を一人雇うのが一番早いと思っています。まず一人を受け入れることで、やるべきことや整えるべきこと、ミッションや職務が見えてきます。
あとは、プロを一人呼んでくることでも同じですが、社内のメンバーが良い方向に引っ張られるので、成長スピードも上がるんですね。プロであれば月に数回程度の出社にすればフルタイムの正社員を雇うより給与を抑えられますし、そういう意味で副業的に入ってもらうことのメリットを感じています。 - 関根:副業を許可する会社側の立場で感じる一番のメリットは、今まではやりたいことのために辞めざるを得なかった社員が、やりたいことをしながらも会社員でいられるので辞めないんですよね。あとは、新しい働き方を認めているところに目を付けて、外資系の大企業から転職してくる方も増えました。逆に採用に関しては「ビジョンに共感してくれているか」ということを大切にしています。
Q:副業社員を受け入れることでの課題とは?
- 平田:企業側が副業社員やフリーランスを「外部人材」や「よそもの」といった見方をする傾向がまだまだ強いのかなということです。フリーランスの立場から言うとあまり自分を外部人材だと思っていないんですよね。仕事を掛け持ちしているだけで、どの会社にも忠誠心があるので、社員の一人として扱うこと、ミッションに応えられているかの評価制度をきっちりと整えることが大切かなと思います。
Q:では、受け入れ側として注意をしなければいけないことは?
- 加藤:実は受け入れること自体は簡単なのですが、いざ入ってもらっても期待値にそぐわないときにどうするか、という問題があります。そういうことを避けるために、最初の1ヶ月はお試し期間とすることで解決できたように感じます。
この後、会場からの質問を受けてトークセッションは終了。最後に登壇者より副業人材を受け入れたいと考えている中小企業の人事担当者に向けてメッセージが投げかけられた。
- 加藤:ものすごく期待をするのではなく、「とにかくやってみる」というのがおすすめです。飲み会でも良いのですが、人間同士の関係性が出来上がると、情報漏洩といった問題は起こらないと思っています。とにかく心配する前にまずは受け入れてみてください。
- 関根:変える覚悟と変わる覚悟が必要だと思っています。これはうちの会社が成長していく中で意識したことでもあるのですが、変えるのはすごく嫌でも、時代の移り変わりで個人や組織も変わって行かなければならないのは当然のことなので、変わることにも覚悟を持つのが良いのかなと思います。
- 原:加藤さんと同じで、「まずやってみる」ことだと思います。PDCAのDoから始めて、試行錯誤したほうが得るものも多いでしょうし、スピード感も速いと思いますね。
- 平田:皆さんのおっしゃる通りで、小さくても良いので始めてみることが重要だと思います。そうしていく中で大切なのは属人化しないで、数名のメンバーで仕事をすることです。うまくいくためにはメンバーが同じ方向を向いていることが重要ですから、信頼関係を作るためにも、外部人材が中に入り込めるようなきっかけ作りをしていただきたいと思います。
* * *
「とにかくやってみよう!」とのメッセージと共にイベントは終了。副業やフリーランスを受け入れる企業、送り出す企業、受け入れられる個人それぞれの立場から、ざっくばらんな意見交換が行われていた。
もし副業やフリーランスとしての働き方に悩んでいたら、今回のイベントでの各意見を参考に、まずは小さなことから実践し、自分なりのやり方を模索してみてはいかがだろうか。
なお、12月13日(木)には、さまざまな分野での専門的な知見や豊富な業務経験のある人材と、その知識・経験を求める企業との交流会「兼業・副業・フリーランス Meetup2018 vol.3」が開催される。参加企業も人材も募集中とのことなので、気になる方はぜひWebサイトを覗いて見てほしい。
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