教えて! 話題の新教育の実態。自分で進路を決めたプロフェッショナルに問う。その時、親はどうだった?
8月4日(日)、READYFOR株式会社にて、前回大人気につき2回目となる【新教育の最前線】教育業界で話題の「新しい学校」のリアルを在校生&卒業生が語る会が開催された。高校・大学進学を控える現役中・高校生や親御さんに向けて、いま教育業界で話題の「新しい学校」(N高等学校、ゼロ高等学院、灘高等学校、渋谷教育学園渋谷中学高等学校、UWC ISAK JAPAN、ミネルヴァ大学、グリーンスクール)のリアルを、在校生と卒業生から直接聞ける会となった。
会場には、親御さん8割、学生1割、教育・人事関係者1割の約70名が集まり、会場内は猛暑にも負けない熱気で溢れた。
新しい学校の紹介
N高等学校
1校目はN高等学校の卒業生、佐々木雅斗さん。N高等学校は、2016年創立、創始者はカドカワ、現在の生徒数は1万人。言うなれば「インターネットの通信制高校」である。授業はアプリやパソコンを使う映像授業で、確認テストやレポートを提出することで単位をもらう仕組みだ。
「映像授業も短いものが多く、その空いた時間は、留学したり会社で仕事をしたりと、自分のやりたいことに時間を使えていることが最大の利点だ」と佐々木さんは言う。プログラミングやWebデザインなど、特殊な能力を持った人との出会いもN高の良さの一つ。「N予備校」(N高限定のアプリ)というN高生ならではコンテンツがあり、大学受験の勉強ができるほか、会計やプログラミングなども楽しめるようになっている。
ゼロ高等学院
2校目はゼロ高等学院の現役学生、岡本和成さん。鹿島山北高等学校という通信制高校を基盤とし、クラブ活動や部活のような行動に繋がる部分をサポートしている。2018年10月創立、創立者は堀江貴文氏、2019年4月までの入学者は89名となっている。
「ゼロ校に入学するとHIU(堀江貴文イノベーション大学校)の会員になれ、多種多様な大人と一緒に活動できる利点が大きい」と岡本さんは言う。高校を卒業していない大人でもゼロ校に入学が可能で、様々なスキルを得ることで事業が成功するケースもあるそうだ。
灘高等学校
3校目は灘高等学校の卒業生、麻 大輔さん。灘高は「日本一入るのが難しい高校」と言われる中高一貫の男子校で、東京大学 理系学部への進学率がとても高い。1927年創立、創立者は嘉納治五郎氏。生徒数は約1200名の中高一貫校。校則なしの自由な高校で、一味違う文化祭が有名である。
「今の時代『多様性』と言われているが、男子校で女装してステージで踊るなど、奇祭な文化祭が有名でもある。自由な学校で校則がなく、校則がないのが当たり前だと思っていた」と麻さんは言う。創業者の嘉納治五郎さんに習い、体育は柔道がメインの日が多かった。最近は、海外大へ進学する生徒も増えてきているという。
渋谷教育学園渋谷中学高等学校
4校目は渋谷教育学園渋谷中学高等学校の卒業生、倉田芽衣さん。海外の中高に進学する生徒が20名ほどいるという中高一貫の進学校。1995年創立、創立者は田村哲夫氏。
渋谷教育学園渋谷中学高等学校の特長の1つが、帰国子女は帰国枠と一般枠に分けられており、帰国枠では海外の学校のカリキュラムと同じように授業を受けられることだ。「他の学校の入学面接で、帰国子女というバイヤスで見られることもあった。帰国子女を寛容に受け入れてくれた事がとても魅力的だった」と倉田さんは振り返った。
UWC ISAK JAPAN
5校目はUWC ISAK JAPANの卒業生、清原三雅さん。日本初の全寮制インターナショナルスクール。2014年設立、設立者は小林りん氏。生徒数は200名。軽井沢の山奥にあり、近くのコンビニまで徒歩30分の立地にある。ときに、動画を見て生徒だけでディスカッションをしたり、生徒主導で授業を進めるなどの授業が行われ、先生は補佐につく。授業は全て英語で行われ、「失敗しても良いから挑戦を続けよう」という学校のカルチャーの元、生徒は様々なプロジェクトに挑戦している。
「唯一成功したプロジェクトは、最寄りのコンビニまで歩いて30分という学校の立地を考えて、通販サイトから商品を大量に仕入れ、コンビニのようなものを作ったことだ。『同商品を2人で2つ購入したら割安になる、しかも配送もする』と謳ったところ、月6万ほどの売り上げになった。かと思えば、来場者数が少人数だったプロジェクトもあった」と清原さんはいう。
ミネルヴァ大学
6校目はミネルヴァ大学の在校生、斎藤花佳さん。「世界で最も入りづらい大学」と言われている。2012年創立、創立者はベン・ネルソン氏。生徒数は600名程。寮生活をしながら世界7都市を4年間で周り、授業は全てオンラインというキャンパスのない大学だ。オンライン授業の生徒数は15名ほどで講義はなく、ディスカッション形式の授業スタイル。生徒のほとんどは自分のやりたいプロジェクトを実行している。
「ミネルヴァの中でもったいないと思っていることは、世界7都市には行くけど、その土地の言語を学ぶ機会がプログラムに普及されていないこと。企業と掛け合うなど、今後のミネルヴァ生が現地の言語を学び、各都市でより多くの機会に携われるような仕掛けを作っていきたい」と斎藤さんは今後の抱負を語った。
グリーンスクール
最後の7校目はグリーンスクールの卒業生、三反田祥哉さん。「世界一エコな学校」と言われる幼稚園から高校までの学校で、インドネシアのバリ島に位置する。2008年創立、創立者はジョン・ハーディ氏。生徒数は現在500名。建物は全て竹で作られ、環境を考えた上でテクノロジーが取り入れてられており、約80%はエコシステムでまかなっているそうだ。メディテーションなど自然環境の中で精神を整えながら教育するスタイルで、母子留学で来ている方もいる。
「DJをしたりチョコレート作りをしたりなど、一風変わった授業コンテンツを自分で選択できたり、自分で授業を作ったりもできた。6週間6学期の中で1学期を丸々(6週間)使ってプロジェクトを行うことができ、無人島で自給自足生活をやってみた。結果は成功しなかったが、そこからどのような学びが得られたかをレポートし単位申請するなど、自分で選択できる自由はとても良かった」と三反田さんはいう。
新しい学校に通った生徒の生の声
各学校の紹介後には、2部構成でメンバーを変えたパネルディスカッションが行われた。各質問で、印象に残った発言を紹介する。
Q:なぜ今の選択をしたのか
- 岡本:自分は机に向かって勉強するという概念が苦手だった。義務教育期間中は「行かされている」感があったが、周りに流されて人生を選択するのでなく、自分の責任で選ぶことは勉強とは違う努力が必要だから、自分で自分の人生を選択していく道を選んだ。
Q:自分の子どもに日本で教育を受けさせたいか
- 倉田:「みんな違ってみんないい」という土台となる多様性の概念が当たり前の中にいた方が誰とでも仲良くなりやすく多様な人を受け入れやすいので、海外で教育を受けさせたい。
- 斎藤:自分が日本の教育の中でたくさん転校し、その1つ1つの経験の積み重ねが自分にとって良かったので、日本でも教育を受けさせたい。
Q:親からの教育信念は何歳まで自分に影響を与えたか
- 麻:今も影響を受けている。一番良かったのは、自分が学びたい・知りたいという時に親が惜しまず本を買ってくれ、自分の好奇心に蓋をしないでいてくれたこと。自分の経験から、干渉しすぎないことが子どもにとって大切だと思った。
Q:親御さんとの関わりで印象に残っていることは
- 倉田:子どもの頃に海外行きが決まった際、どこに行っても楽しもうとすることや、新しいことに自ら価値を見出そうとする両親の姿勢があったことが印象に残っている。
Q:学校の選択を親に反対されたか
- 三反田:親が与えてくれた選択肢の中から自分で選び、それを選んだのは自分の責任というスタンスだった。
- 清原:親は全く反対しないどころか、『頑張るな。自由に生きろ。人と同じ事はするな。「THINK DIFFERENT」』と言ってくれて、その選択により今がある。
- 岡本:英語を話せる様になりたいという目標もあり「ゼロ校に行きたい」と親に伝えたところ、「自分が子どもだったらゼロ校に行きたいと思う。自分で責任を持って進学するなら行きなさい」と背中を押してくれた。
- 佐々木:小学校から高校まで一貫教育で受験のない中、高校2年の3学期で編入したため、初めは反対された。学校に通いながら未踏ジュニアというプロジェクトにも関わっていたが、ある時帯状疱疹ができてしまい病院通いを余儀なくされた。学校へいくこともやりたいこともできない状態よりも、学校を卒業でき、からだも健康にいられる方法を選びたいと親を説得した。
Q:通信制学校の良いところは
- 佐々木:自立意識が芽生えること。高校生のうちに自立意識を培っておくと、その後大学に行っても、遊びすぎずに時間を有効に使うことができるという利点がある。特に通信制の高校に入学してくる人は、社会で面白いことをしている大人と繋がりたいという人が多く、好きな時に会いに行けたり、その出会いから様々なことが始まったりすることもあるのが、とても面白いところだ。
パネルディスカッションの終了後、本イベントを主催する三鷹のGrow Rich English School 塾長 畑 公人氏は「中学受験よりも早い段階で、あらゆる選択肢の中から子どもが自分で自分の進路を選択できるように応援して行きたい」と挨拶し、セミナーを締めくくった。
* * *
イベント終了後、参加された親御さんに話を伺ったところ、「親ができることは、子どもと一緒に新しいものに関心を持つこと、いかに子どもに様々な選択肢を提示できるかだろう」という声を聞けた。視野を広く持ち、様々な選択肢の中から最良のものを選べる環境を整えていくことができるよう、子どもだけでなく、大人も共に自分の可能性に蓋をしない世の中を創り出していきたいと思った。
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