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  インタビュー

現役エンジニアによるマンツーマン指導でモチベーションを維持し、挫折させないサポート体制が特徴「侍エンジニア塾」代表 木内 翔大氏インタビュー

2020年5月20日(水)
望月 香里(もちづき・かおり)

現役エンジニアによるマンツーマンで、プログラミングやアプリ開発、転職など多種多様なニーズに対応したオーダーメイド指導・支援を行なっている「侍エンジニア塾」。独学では約9割がエンジニアになるまでに挫折するというデータもある。

一方で、侍エンジニア塾は受講生の挫折率が8%未満、転職率は94%以上、講師満足度も95%以上と結果を出している。受講生は小学生~70代までと幅広く、個々の趣味嗜好・進捗状況への柔軟なサポートが強みだ。

4月21日、小学5年生からプログラミングをはじめ、自身もエンジニアとして講師を務めた侍エンジニア塾の代表取締役社長 木内翔大氏に、創業の背景や今後の展望についてオンラインインタビューを行なった。

侍エンジニア塾 代表取締役社長 木内翔大氏

― 創業の背景を教えてください。

【プログラミングのスキルは「特権」】
大学1年生のころフリーランスエンジニアになり、複数のWeb系スタートアップに従事していました。周囲が就活を始めた大学3年生のとき、ITリテラシーのない就活中の友人から「プログラミングを教えてほしい」と相談されて教えたのですが、半年でプログラミングスキルを身につけ、フリーランスエンジニアになりました。その経験から「プログラミングのスキルは他人の人生をも変えうる、このスキルを広げたい」と思い、2013年に侍エンジニア塾を創業しました。

世界をより良くするために、このスキルを持つエンジニアが増えたら良いなと。かつて侍は特権階級で様々な恩恵を受けていましたが、それはお上やお国のためでした。同じように、現代のIT業界に力を注ぐ集団を作りたいと思い「侍」と命名しました。

当時19歳の私がフリーランスエンジニアとして20~30代の優秀なビジネスマンやプログラマー、デザイナーと対等に話せたことで、プログラミングのスキルは年齢やキャリアに関係ない武器になると実感しましたし、「特権」のように感じています。

そもそも、プログラミングを始めたきっかけは、小学5年生のときに「ゲームが好きだったら、ゲームを作ってみたら?」という先生の一言でした。とは言え、当時は教えてくれる人もいなかったので、独学で勉強をはじめました。

― 独学では挫折しやすいとのことですが、指導する上での留意点など教えてください。

【独学では時間管理とモチベーションの維持が難しい】
独学での挫折率が高い理由は、主に3つあります。

1つ目は、プログラミングの習得には非常に時間がかかること。特に初めてプログラミングを習得する際は、まず、どの言語からどのようにはじめるべきか分からないというところで躓きます。また学習を開始しても、プログラミングはエラーの連続なので、同じエラーにより3日も先に進めない、なんてこともよくあります。

2つ目は、モチベーションの維持が非常に困難なこと。エラーの連続で思うように学習が進まず、何のためにプログラミングを勉強していたのか分からなくなってモチベーションが下がってしまう傾向があります。

そして、3つ目はオリジナルアプリケーションの開発は難しいこと。最近の未経験エンジニアの採用市場でもポートフォリオ(技術力の証明)の提出を求める企業が増えており、自作のオリジナルアプリケーションの有無は転職採用に大きく関わってきます。多くのプログラミングスクールでオリジナルに近いアプリケーションの作成は可能ですが、教科書を見ながらの制作と自分が考えたアプリケーションを作り込む体験とはまったく異なるので、マンツーマンサポートが非常に有用なのです。

【現役エンジニアによる実践指導】
この3点を押さえた上で、侍エンジニア塾では、4つのことに注力しています。

1つ目は、現役エンジニアインストラクターによるマンツーマン指導です。講師の90%以上が実務経験3年以上の現役エンジニアです。現役エンジニアの副業として業務委託しているので、プロの指導が受けられる上に実質OJT(実務を伴う従業員職業訓練)のような生きたアドバイスが好評です。さらに、講師と相性が合わない場合には途中で講師を変更可能なベストマッチ保障も付いています。

2つ目は、オリジナルアプリケーション開発を重視していることです。基礎は教科書で学び、オリジナルアプリケーション開発に時間を多く時間を割くようにしています。ここでもモチベーションが非常に重要で、入塾前に自分の作りたいアプリケーションを明確にし、基礎学習と平行しながら企画や設計・制作といった実地学習による実務経験ができるように設定されています。

― 入塾時に自分の作りたいアプリケーションが明確でない受講生もいるのですか?

実は、はじめの段階で受講者の7割ほどが自分の作りたいアプリケーションが明確ではありません。そんな彼らには「好きなこと・趣味・仕事と日頃使用している既存のアプリケーションを掛け算」することで自分のつくりたいアプリケーションが明確になるよう促し、モチベーションを維持しやすいようにアプローチしています。例えば、パンが好きでインスタグラムを使用している場合なら、パン屋さんがひと目でわかるサイトなどです。 要件定義から設計・納品まで現役エンジニアの指導のもとで行われるため、納品するころには現場で通用するスキルが身についています。

【オーダーメイド指導でモチベーションを維持】
3つ目は、生徒の目的に応じたオーダーメイドで、多種多様な言語から学習するカリキュラムを選べることです。受講者のライフプランやキャリアプランに合わせて学習計画を立てるので、無理なく学習を進めることができます。入塾前にカウンセリングやヒヤリング(最低90分×2回)を行い、最適な講師をアサインした上で入塾してもらうようにしています。

侍エンジニア塾の指導・支援実施イメージ。授業も9割はオンラインで海外の受講生も多いとか

4つ目は、挫折させないサポート体制です。学習コーチングを重視して「なぜ、プログラミングをやりたいのか?」というモチベーションを下げないように、受講中も学習コーチングをしながら臨機応変に対応しています。さらに、転職に関してはアドバイザー・インストラクターのほかに転職キャリアアドバイザーを加えた3名のトリプルアドバイザー体制で丁寧にサポートしています。

― 最後に、今後の展望などを教えてください。

【IT人材不足の解消がミッション】
私たちのミッションは、2030年に80万人が不足すると言われているIT人材不足の解消が根底にあり、その実現に向けて3つのことを柱に進めて行きたいと考えています。

1つ目は、学習コストを圧倒的に下げることです。20年前に私自身がぶつかった、どこから勉強すれば良いか質問すらできなかった環境を変えたいと、4年前からブログを通してプログラミング学習のいろはや教材を提供しています。さらにブログで配信したハウツーや自社オリジナル教材を動画化したYoutubeを開設しました。

2つ目は、やりきれる場の提供です。学習コストが下がり、様々な教材やスクールのオプションがあっても、実際に最後までやりきれなければ意味がありません。「挫折しない・やりきる」を軸にマンツーマン指導の品質改善を極めつつ、やりきる場に特化した月額制の学習コミュニティサービスのローンチを準備しております。スクールに通わなくても質問ができ、親切に答えてくれるような空間を作りたいと思っています。

3つ目は、企業と連携・協力して積極的にエンジニアを増やしていることです。2019年にリリースした「転職コース」では、一部のデポジットを除き、実質無料で約2ヶ月のスクールを提供しています(各コースの詳細と料金についてはhttps://www.sejuku.net/price/?cid=lp_top_topriceを参照)。また、エンジニア未経験者や初心者向けIT研修を行ない、企業の資産でエンジニアの育成を促進しています。企業側からIT研修コースの要望も増えています。エンジニア経験者だけでは人材不足なため、未経験者の採用市場も年々拡大して間口も開かれつつあります。

リモートワークやIT業界で働くことに興味を持つ人が非常に増えてきている昨今、弊社としてもIT業界で生産的かつクリエイティブに働ける人材を増やしていくチャンスであると捉え、一層邁進していきたいと思っています。

― ありがとうございました!

【参考資料】
2019年1番学ばれた人気プログラミング言語を発表 1位は「PHP」次いで「Ruby」が人気の結果に!

* * *

この新型コロナウイルス禍でも、リモートで支障なく働くことができるエンジニア。幕末のように、侍エンジニア塾から誕生した現代の侍が世界で活躍する21世紀が楽しみである。ウィズコロナの今こそ、侍エンジニア塾の門を叩いてみてはいかがだろうか。

著者
望月 香里(もちづき・かおり)
元保育士。現ベビーシッターとライターのフリーランス。ものごとの始まり・きっかけを聞くのが好き。今は、当たり前のようで当たり前でない日常、暮らしに興味がある。
ブログ:https://note.com/zucchini_232

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