ネイティブ講師インタビュー② ここが変だよジャパニーズ・イングリッシュ!
はじめに
皆さんは英語を話しているときに、「ジャパニーズ・イングリッシュ」を使ってしまった経験はありますか? 日本語では多くのカタカナ英語が使われていますが、その中には英語としては全く通じない「ジャパニーズ・イングリッシュ」という和製英語があります。また、日本語の単語や文を英語に直訳しようとして不自然な訳になってしまうということもよくあります。
「ネイティブ講師インタビュー① ここが変だよジャパニーズ・イングリッシュ!」では、イギリス出身のキティ先生に「ネイティブだからこそ気になるジャパニーズ・イングリッシュ」について話してもらいました。
今回は、ニューヨーク出身の法人英会話講師で、テレビや映画で俳優としても活躍するダニエル・レトン先生にインタビューを行いました。「あ、これ使っているかも!」というジャパニーズ・イングリッシュがないか確認してみてくださいね。
本文に入る前に、2点だけあらかじめお伝えしたいことがあります。1つ目は、今回の内容が間違いを馬鹿にすることを目的にしたものではないということです。言語は間違えて覚えることもとても大切です。よって、この記事はそのような間違いを馬鹿にしたりするものでは決してありません。ただ、知識を増やし、不要な間違いを減らすことも重要なので、ぜひそのための参考にしていただければと思います。
2つ目は、今回はニューヨーク出身のダニエル先生の英語を基準に書かれているという点です。英語圏の英語と言っても、アメリカ英語、イギリス英語、オーストラリア英語等、世界中には様々な英語が存在します。同じ英語でも地域によって単語の使い方や意味が異なる場合があります。よって、ここで不自然と表現しているものでも、場所によっては必ずしも間違いではない可能性もあります。
これら2点を踏まえた上で、楽しみながら読み進めていただければと思います。
1. 発音によって生み出される
ジャパニーズ・イングリッシュ
ダニエル先生が真っ先に挙げたのは、発音の間違いによって生み出されるジャパニーズ・イングリッシュです。英語自体が間違っているというよりも、発音を正しく認識できていないために起こる誤解です。例を3つ見てみましょう。
家族の問題?
ダニエル先生がよく聞く間違いで「問題」という単語があります。レッスン中に休みについて話を聞いていたとき、突然生徒さんが「家族の問題」について楽しそうに話し始めたので、ダニエル先生は困惑してしまったそうです。しかし、途中で大きな発音の問題で誤解していたことに気付きました。
My family trouble…
最初は、生徒さんがこのように言っていたと思っていましたが、言いたかったのはMy family travel…だったのです。そう、カタカナで書く「トラブル(問題)」と「トラベル(旅行)」を間違えて発音していたのです。
この場合、特にbとvの違いが大きく影響していて、ネイティブが気付くには難易度が高い発音の間違いでした。日本人でも「家族問題」と言われたけど、実は「家族旅行」という意味だと気付くには相当苦労するのではないでしょうか。
bとvは、日本人からすると似た音に聞こえますが、このような誤解に繋がる可能性があるので注意しましょうね。
会社に向かって働く?
何だかなぞなぞのようですが、これは発音で生まれるジャパニーズ・イングリッシュの代表格と言っても過言ではありません。
I work to my office.
これが生徒さんの言った文ですが、すぐにピンと来た方もいるのではないでしょうか。そう、本当はwork(働く)ではなく、walk(歩く)と言いたかったのですが、rとlを間違えたことで、全く異なる単語に聞こえてしまったのです。
また、workのwoは「ウォ」という発音になり、waは「ワ」のような音になります。カタカナ英語では、歩くことを「ウォーキング」、仕事を「ワーク」と書きますよね。そう、実際の英語の音とカタカナ英語が逆なんです。それに釣られて間違ってしまう方も多くいます。発音に注意すると同時に、カタカナ英語の発音を参考にしないように意識することも大切ですね。
敷布をどうぞ?
3つ目も、発音によって生じるジャパニーズ・イングリッシュの代表例です! ダニエル先生は、レッスンの中で「敷布をどうぞ」と言われ混乱したときのことを話してくれました。
Please have a sheet.と聞こえたそうですが、実際に生徒さんが言おうとしていたのは、
Please have a seat.
(どうぞお座りください)
日本人が苦手とする発音にsとshがあります。例えば「彼女」であれば「she」(シー)という発音になりますが、これをsで言ってしまうと(スィー)でsee(見る)やsea(海)のように聞こえてしまいます。
この音の間違いには、他にも「座る」を意味するsitと言うつもりがshで発音してしまうと、とても恥ずかしい、しかしよく耳にする間違いにも繋がるので注意しましょうね(答えは記事には書けないような単語なので、興味があったら調べてみてください)。
2. 当たり前のように使っている
ジャパニーズ・イングリッシュ単語
ダニエル先生が次に挙げたジャパニーズ・イングリッシュは、日本で当たり前のように使われている「カタカナ英語」の単語です。これは面白いくらいに例が出てきましたが、今回は3つ例を紹介します。正しい英語が何かを考えながら読んでみてください。
クーラーでは部屋は冷えないよ…
日本の夏はクーラーなしでは過ごせないほど蒸し暑くなりますよね。私の部屋にはクーラーがないので、結構大変なときがあります。皆さんは、この文を読んでも全く問題なく、私が伝えたいことが理解できるのではないでしょうか。
ただ、「自分の部屋にクーラーがない」ことを英語で言うと不思議がられてしまいます。なぜだか分かりますか?
I don’t have a cooler in my room.
文法的に問題はないのですが、「クーラー」をcoolerと訳してしまったことが問題でした。そう、coolerという単語は英語にもありますが、「エアコン」(これもカタカナ英語ですが…)という意味にはならないのです。
英語のcoolerは「冷却器」か「アイス・ボックス」という意味です。日常会話では、後者として使うことが多いですね。それなら「部屋にアイス・ボックスはありません」と言えば不思議がられてしまうのも理解できますよね。
クーラーは、エアコン=air conditionerなので間違いないようにしましょう。長い!と思う場合にはACでもOKです。
赤ちゃんの車?
日本には、ベビーカーやベビーベッドのように「ベビー〇〇」という単語がありますよね。しかし、これらの多くは実はジャパニーズ・イングリッシュです。
例えば、ベビーカーは「赤ちゃんの車」(小さい車)や「赤ちゃん用の車」なのかなと思われてしまいます。ベビーベッドも同じように理解される可能性があります。正しくは、ベビーカーがstroller、ベビーベッドはcribです(他にも言い方はあります)。
当たり前のように使っているこういった単語にも、実はジャパニーズ・イングリッシュだったというものが多くあるので注意しましょうね。
北欧人の先祖を食べる?
これも日本語ではよく使われるジャパニーズ・イングリッシュですが、ダニエル先生が初めて聞いた時には全く意味が分からず、慣れるまで相当時間がかかったそうです。その単語は「バイキング」です。生徒さんが楽しそうに「バイキング」の話をしたときは、頭の中でクエスチョンマークが1万個くらいあったそうです。
日本語では「食べ放題」をバイキングと言っても通じますが、英語では「buffet」や「all-you-can-eat」と言うので、そもそもの単語が違います。加えて「バイキング」はbikingで「自転車に乗ること」という意味になります。また、bをvの音に変えるとVikingとなり、北欧にいた武装集団のバイキングを指します。
いずれにしても「食べ放題」からはかけ離れているので、意味が全く通じないジャパニーズ・イングリッシュですね。このような単語は、日本のことをある程度理解している外国人であれば理解できるかも知れませんが、そうでない人達には通じない可能性が高いので注意してください。
3. 日本人がやってしまう
その他のジャパニーズ・イングリッシュ
ここまでに紹介したジャパニーズ・イングリッシュ以外にも、日本人がよく使うジャパニーズ・イングリッシュと言える間違いや勘違いがいくつかあるので、ダニエル先生が気付いたものを例に挙げてみます。
WhatとHowは同じではない
1つ目の例は、WhatとHowを間違えて使ってしまうというものです。
これは実際に私自身もよく聞く間違いで、英語を上手に使える上級者でも間違えるようなものです。まずは次の2つの質問を見てください。
- How do you think about that?
- What do you feel about that?
「この質問文は使っている!」と思った方も多いのではないでしょうか。一見正しく思えるこれらの質問ですが、両方とも間違いなのです。1.は「それについてどのように考えますか?」、2.は「それについて何を感じますか?」と訳してしまうかもしれませんが、実はこの文ではそのように言うことはできないのです。
thinkの場合は「何を考えるか」なのでWhat、feelの場合は「どのように感じるか」なのでHowと組み合わせて質問することになっています。
よって、正しい形は次のようになります。
- What do you think about that?
- How do you feel about that?
これらは相手の意見を聞く際にとても便利な表現なので、このまま覚えてしまいましょう。
凍った氷
2つ目の例は、詳しく物事を説明し過ぎて不自然になるというジャパニーズ・イングリッシュです。
frozen ice
この単語を見て、何かおかしいという点はあるでしょうか。これを訳すと「凍った氷」になりますよね。英語で見るとOKそうに見えてしまうかも知れませんが、日本語で考えると「氷は凍ってるのは当たり前じゃん」と思いますよね。
日本人の学習者の多くは相手にたくさん情報を伝えることを強く意識するため、説明が多くなり、実は必要のない単語や文を入れてしまうことがあります。 このfrozen iceも単純にiceと言えば良いのですが、frozenを入れても気付かないことがあります。
英語の会話で単語や文が長くなってしまう方は、「その情報や説明は必要?」と考えてみると良いですよ。
初対面だったはずだけれど…
3つ目は、英単語としても存在するけれど、カタカナ英語として使うときには意味が異なったり、使い方(または使う対象)が限定される単語です。ダニエル先生が挙げたこの例の1つに「キュート」(可愛い)がありました。キュートをカタカナ英語で使う場合、子どもや女性(特に若い女性)に使いますよね。
しかし、実はこのcute、女性だけでなく、男性について話すときにも使えるのです。例えば、「かっこいい」という男性にもHe’s really cute.(彼とてもかっこいいよね)のように言うことができます。日本での使われ方のみで理解していると、いざ英語の会話でcuteと聞いたときに「あれ? 何で男性にcuteと言っているのだろう?」と混乱してしまったりしますよね。
単語を正しい意味で使うことはもちろんですが、他にも使い方や使える対象の人やものにも注意してみましょうね。
おわりに
今回は、ニューヨーク出身のダニエル先生に、日本人が英語で間違えてしまうことが多いジャパニーズ・イングリッシュについて聞いてみました。言語を習得する上で、間違いや勘違いは避けて通ることはできません。むしろ間違えた方が頭に残り、絶対に同じ間違いはしないという気持ちに繋がります。
ダニエル先生自身、日本語の「反対」をずっと「変態」と発音して恥ずかしい思いをしたそうですが、今では笑い話にしていました。そんな笑い話にできるような経験をいくつもして、是非英語でコミュニケーションが取れるよう頑張ってください!
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