NTTComの女性エンジニアに、働きやすさについて訊いてみた
インフラストラクチャーやデータセンターの領域で活躍する女性エンジニアにフォーカスするインタビューシリーズ、今回はNTTコミュニケーションズ株式会社のエンジニアとその上司そして広報の担当者に話を聞いた。
参加したのはプラットフォームサービス本部に所属する下公真美氏、担当課長の鈴木昭徳氏、経営企画部の広報室からは苅谷舞氏だ。
下公さんに伺います。最初にコンピュータに触ったのはいつ頃ですか?
下公:私が幼稚園か小学校の頃には自宅にMacがありました。それを使ったのが最初かな。でもすぐにWindowsに置き換わったと思います。そのPCでインターネットにダイヤルアップでつなげてブラウズするみたいなことをやっていたと思います。
それから高校を経て大学ということになると思いますが、大学ではどんなことをやっていたんですか?
下公:大学はSFCなんですけど、ネットワークに関する研究をやってました。高校生の頃になんとなくですけど、これからは手に職を付けないといけないなと感じていまして、それで理系に行って大学でもネットワーク、それからそれをさらに追及できる就職先としてNTTコミュニケーションズを選んだという感じですね。
大学ではネットワークの研究ということですが、その前にもうWebに関してはある程度、知っていたんですよね?
下公:そうですね。高校の部活でマンドリンとクラシックギターをやっていたんですけど、部員が使えるネット掲示板の設置などを担当していて、もう普通にCGIを使ったプログラミングもやっていましたね。なのでコンピュータには自然になじんでいたと思います。
NTTコミュニケーションズに就職を決めたのはどうしてですか?他にも外資系とかも選択肢はあったのでは?
下公:外資系は、最初から選択肢にありませんでした。英語が苦手だったので(笑)。日本の会社に絞って就職活動しましたけど、ネットワークをやれる会社ということで決めたのがNTTコミュニケーションズでした。コンピュータやネットワークの資料を読む程度の英語力はありましたが、社内のコミュニケーションで使えるっていうレベルではなかったんですよ。
経歴からみれば、家庭にPCがあってなじんでいた、そこから理系に行ってネットワークの研究、そしてNTTコミュニケーションズということで自然と移行している感じですね。男女差みたいなものを感じたことは?
下公:特にないかなぁ。常に回りには理系の男子がいて、その中でコンピュータを使ってるっていう感じでしたから。
鈴木さんに伺います。今はどんなチーム構成なんですか?
鈴木:うちのチームは今8名、経歴は10年選手もいれば、下公さんのように6年目という人もいますし、もう少し若い人もいますね。チームにはもう一人女性がいて下公さんのちょっと先輩だったかな。
下公:そうですね。だいたい男性が多くて女性は私一人、いてももう一人ぐらいの感じだったので職場でも同じ感じですね。女性が少ないとは感じますけど、実際に女性だから特に不便であったり困ったりということは特にないですね。
別の女性エンジニアに「データセンターの仕事で配線をキレイにするのとかは凄く好きなんだけど、冷房がキツイのが辛いと聞いたことがあります。
下公:あー、そうですよね。今のサーバーってだいたい前面吸気、背面排気なので後ろに行くと風がスゴイです。配線の仕事もInteropのNOCの関係でやってましたけど、もうなんか髪の毛を三つ編みにする感じで「キレイになって!」とかそういう感覚でやってます(笑)。
女性エンジニア特有の不便という意味では男性エンジニアがグループで話し合ってる時に女性がその輪に入っていくと途端に会話が弾まなくなるっていう現象があると。さっきまでワイワイ話してたのに。たまたまその中に女性と面と向かって話すことが苦手な男性がいるとそうなるらしいですが。
下公:あー、それありますね。ただ男性に囲まれているのが普通というのが私たちの当たり前なので、男性も周りが男性なのが当たり前なのに突然女性が目の前に来ることが普通じゃないってことかもしれません。でも周りが男性ばかりだとすぐに顔と名前は覚えてもらえるっていう利点もあることはあります。
あとこれも女性エンジニアから聞いた上司に関する話ですが、女性エンジニアが男性の上司に相談すると、すぐに解決策を提案しようとすると。いや、そうじゃなくて30分でイイから私の話を黙って聞いて欲しい、実際に解決策は自分の中にあるんだから、という男女の違いみたいな話もありました。そういうことは感じますか?
鈴木:感じますね。とりあえず話を聞いてくれっていう場合もあるのは感じるんですが、答えを出しちゃいがちですね。
下公:私は答えを出して欲しいです。話を聞いて欲しいんだったら、相談って言うより「飲みに行きましょう!」って言いますね(笑)。男性でもそういう場合もあると思うんですが、うちの夫が実はそういうタイプかもしれません(笑)。
鈴木さんからみてインフラストラクチャーやネットワークの領域に女性エンジニアが増えるためには何をしたらいいのか、なにかヒントはありますか?
鈴木:私は会社として何ができるかというよりも、もっと早い段階で何かをしないとダメなんじゃないかなとは思います。そういうところから始まって理系に進む女性が増えれば、その中からコンピュータに関わるエンジニアが増えると思うんですよね。
もっと早い段階から女性が理系の道を選べるようになるべきだと?
鈴木:そうです。
下公:私もそう思いますね。理系文系という選択が始まる前からなんかしないといけないと思います。なので今始まってる小学校からプログラミングを始めるといった試みは凄く良いと思います。私も周りにプログラミングとかをやっている仲間というか輪があれば、ひょっとするとプログラミングのほうに行っていたかもしれないなとは思います。
過去に行ったインタビューで女性は男性に比べて安全や安定を指向しがちだから冒険をしない、だからコンピュータとか新しいことに挑戦しないのかも?という話もありましたが、下公さんはどうですか?
下公:新しいことに挑戦するのは好きですね。チームの他の女性とも「何か新しいことしたいよね」っていつも言ってます。安定とは違うのかもしれないですけど、私は手に職を付けたいとは思ってました。
鈴木:うちはチームのエンジニアが常に新しい技術や動向について勉強してくれているので、管理する側から「こうしろ」と言ったことはないですね。
下公:ただ新しい技術と言ってもそれがすぐに使えるわけでもなくて、ネットワークの仕事では「それがどうして必要なのか?」「今の技術じゃダメなのか?」「運用するとしたら何が必要なのか?」というところまで考えないといけないんですね。これはキャリアとしての発想かもしれませんね。
鈴木:ネットワークだけじゃなくてインフラストラクチャーの仕事って、何かを作ることも大事ですけど、それを使う、運用するっていう観点が常に必要なんですね。なので新しい技術は今の運用する人たちが使うために凄く時間がかかる場合というのも考えないといけないんですよ。うちのチームは運用をやっている他の部署と交換留学的なことをやっていて、エンジニアが運用の現場の経験を積んでもらえるようにしています。これに関しては新人のうちはまだできるんですが、だんだん年次が上がって経験を積んでくると、できるエンジニアは手放せないという事情も絡んでくるので難しくはなるんですけど。
男女とはもう関係ない話ですが、新人の配属っていうのは変わってきていますか?
苅谷:広報の立場で言うと時代によってどんどん変化しているとは言えると思います。かつては配属されたら、最初は現場を知るために全員営業部門に配属ということもありましたが、今は違いますね。
下公:私の年代だと全員が技術部門でした。営業に行くって言う人はいなかったかな。
苅谷:ただ新人が配属されやすい部署というのはあるんですよ。私の経験だと新人が音声のフリーダイヤルとかナビダイヤルをやっている部門に配属されることはまずないです。今は、ソフトウェアというかもっとニーズが高い部署に配属されることが多いですよね。でも音声系は会社にとっては大事なインフラストラクチャーなので重要ではあるんですが。
管理職としてもっとチャレンジしろ、失敗しても良いという感じですか?
鈴木:チャレンジすることは推奨されていて、失敗しても個人が責められることはないので、そこはどんどんチャレンジして欲しいとは思っています。女性の方が失敗を恐れるかどうかは性格や経験によっても違ってくるので一概には言えないですけど、どの職場でも男性の中で鍛えられている女性が多いのでしっかりしてるのは確かです。
後輩にネットワークの仕事を勧めるとしたら何を伝えますか?
下公:難しいですよね、ネットワークって。概念としても理解しづらいかなぁ。今の人はインターネットはつながっていて当たり前っていう世代なので。でも一歩踏み込んでみるとネットワークっていろいろなことがあって難しいんですよね。
鈴木:そういうことを噛み砕いて伝えようとすると細か過ぎて飽きられちゃうって言う(笑)。
下公:でも私の同期で日本全体のファイバーケーブルに関する仕事をやりたいって言って異動していった人がいますね。そういうことなのかもしれません。
NTTコミュニケーションズはパンデミックの影響でリモートワークが前提となっているが、今回のインタビューは丸の内のオフィスに出社をお願いして行った。かつては会議室の予約が取れなくてベンダーのほうに出向いてミーティングをしていたという会議室フロアーには人影がなく、広い受付デスクも無人となっていた。
約1か月ぶりに出社、久しぶりに顔と顔を合わせたという鈴木氏と下公氏は「髪が伸びた?」とコメントするほどにリモートワークが当たり前になっていることを感じさせる一幕も。広報の苅谷氏によれば、パンデミック以前から始まっていた働き方改革とリモートワークの影響で自由度が増したことで、女性にとっての働きやすさが増しているということだけではなく、男性も働きやすくなることが同時に女性にとっても働きやすい職場となっていることを実感しているという。女性エンジニアが働きやすい職場であることを端々から感じることができるインタビューとなった。
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