カラム指向DBのClickHouseのCTOにインタビュー、コンピューターとの出会いから生成AIによる未来まで語る(後編)
カラム指向DBのClickHouseのCTOにインタビューを実施した。コンピューターとの出会いから生成AIによる未来までを語ってもらった。
6月19日 5:59
分散環境に最適なカラム指向データベースで高速なリアルタイム分析を可能にするClickHouseの創業者でCTOのAlexey Milovidov氏へのインタビューの後編を紹介する。前半では自身のコンピューターとの出会いからPHP、C++によるプログラミング、ゲームとの関わり、そしてClickHouseのプロトタイプ開発に至るまでを紹介した。ここからは現在のClickHouseについて語っている内容になる。
少し歴史の部分に時間を取り過ぎたのでここからは現在の話をしましょう。現在のClickHouseについて何か課題はありますか?
Milovidov:今のところ、特に難しい問題もなく我々は良い仕事をしていると思います。もちろん、やらなければいけないことは多数ありますが。リアルタイム分析のためにClickHouseを作りましたが、その用途以外でも使えるエリアは数多くあります。例えばNetflixや音楽ストリーミングのようなアプリケーションでのレコメンデーションなどにも使えます。また拡張を行うことでストリーミングデータを分析することにも使えると思います。Kafka StreamやRisingWaveのようなストリーミング処理も実装することは可能でしょう。
最初のClickHouseは5名のエンジニアでスタートしましたが、今や500名を超える社員がいます。デベロッパーはアイデアを持って実験を行い、それが良いアイデアだということが自分自身だけではなくチームのメンバーからも認められたら、それを実装することは可能です。そういう実験的なことをする時間を持つことは推奨しています。ここで重要なのは、新しい何かを実装する時にその計画を予め作る必要はないということです。会社としては計画を持って仕事をするのは当たり前ですが、ソフトウェアを書いて実装して検証するというプロセスにおいては、計画を立てる必要はないということを常に社員には言っています。それについてデベロッパーは励みになると言ってくれています(笑)。
それではもうだいぶ時間も経ちましたので別の質問をします。いまでは生成AIが大部分のソースコードを書けるようになりました。生成AIはClickHouseのソフトウェア開発に何か影響を与えていますか?
Milovidov:実際には過去半年の間に多くの状況が変わったと思います。2025年の9月頃まではMeetupなどで「生成AIで開発プロセスは変化しましたか?」と質問されたら「変わっていません」と答えたでしょう。でもClaude Opus 4.5が登場してからすべてが変わりました。現在は、データベースのコアの部分の開発には使ってはいませんが、それ以外のコンテンツを書く業務や社内のツールなどにはかなり使っています。私は多くの新しいテクノロジーを積極的に使って評価するように心掛けていますので、新しいツールはまず使ってみるということを継続しています。生成AIが未熟だった頃はC++のコードをAIに書かせるのは無理でしたが、現在では100%、生成AIがコードを書けると言えます。しかしまだプロンプトを工夫したり何度も対話したりすることが必要ですが、かなりの部分は書けるようになったと言っていいと思います。
この100%という意味をちゃんと理解しておく必要があります。それはコードが意味することをデベロッパーが理解しているか? ということです。それを理解しているなら、生成AIがコードを書いてそれを使うことは可能でしょう。コード生成をAIが行い、そのレビューもAIがやるというようになってきています。この場合のレビューはまだ100%ではなく90%というレベルだと思います。ClickHouseの社内では敵対的エージェントを使ってコードの脆弱性を発見したりコーディングのスタイルをチェックしたりする目的に使っています。現在はOpenAIのCodex 5.3を評価していますが、前のモデルであれば3日かかっていたタスクが5.3では1日半で終わるなんていうことも体験しています。
生成AIによって多くのタスクが短時間で終わるようになりました。将来的に生成AIが自律的に動作することで我々はもっと多くAIを使うようになると思いますか?
Milovidov:なると思います。実際に多くのプロジェクトで使われていますし。Linuxカーネルの開発にも使われるようになったと聞いています。そうなるまでには多くの時間がかかりましたし、変化は徐々にしか現れてはいないと思いますが。不幸なことに生成AIを多く使うためにはベンダーに課金する必要があり、それがハードルになっている面もあるでしょう。そのためにオープンソースのモデルも存在してキャッチアップしていますし、ローカルのマシンで実行できるモデルも徐々に登場していますので、状況は変わっていくでしょうね。
では最後の質問です。ClickHouseにとってのチャレンジは何ですか?
Milovidov:ClickHouseにとってのチャレンジはエンジニアリング側のモノではなく組織的なモノですね。つまりチームがスケールすること、特にコードレビューをスケールさせることです。現在は社内からのプルリクエストもコミュニティからのプルリクエストもコードレビューに制限されてしまっています。生成AIはコードレビューを大量に処理できるように進化することが必要だと思います。開発チームは大きなコードベースで仕事をしていますが、それぞれが小さなスタートアップのような環境で無駄なミーティングなどに時間を費やすのではなく、素早く実験を行って正しい実装をするというサイクルを回すようになることがチャレンジですね。大きな企業で働いているにも関わらず、小さなチームが素早く開発を行うというスタイルを追求していきたいと思います。
1時間以上もインタビューに応えてくれたAlexey Milovidov氏だったが、高速なデータ処理の内部構造やHadoopの評価、コードレビューに関する期待など多くのトピックについても語ってくれた。すべてを書き起こすことは難しいほどの分量になったが、楽しいインタビューとなった。エンジニアが新しいことにチャレンジすることを積極的にサポートし、自身も新しいテクノロジーを使いこんで評価するというのはCTOというタイトルにふさわしい人材と言えるだろう。今後の進化に注目したい。
コンピューターに関わるようになった学生時代からClickHouseのプロトタイプに至る前編は、以下のリンクを参照されたい。
カラム指向DBのClickHouseのCTOにインタビュー、コンピューターとの出会いから生成AIによる未来まで語る(前編)
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