連載 [第10回] :
  Gen AI Times

【完全解説】プロが見たWWDC24、Appleが導くAIの未来とは

2024年7月25日(木)
前田 優希
本記事は、生成AIコミュニティ「IKIGAI lab.」に所属するメンバーが、生成AIに関するニュースを紹介&深掘りしながら、AIがもたらす「半歩先」の未来に皆さんをご案内します。

はじめに

本連載は、生成AIコミュニティ「IKIGAI lab.」で活動している6名で運営しています。注目されている生成AIに関するニュースを収集し、個性豊かなメンバーによる記事の深堀りから、半歩先の未来の想像を共有していきます。この記事を通して、ぜひ皆さまも各々の半歩先の未来を想像しながら、色々な価値観を楽しんでいただけると嬉しいです。

Appleは、ソフトウェア開発者向けイベント「WWDC24」を6月10日~14日(米国時間)に開催し、その中でAppleが独自開発したAI「Apple Intelligence」を発表しました。さらに今回発表された新OS「iOS18」には、ChatGPT-4oがアカウント作成しなくても無料で使えるようになることも発表しました。

そもそも、WWDC24とは?

ハッシュタグ: #Apple#開発者会議#新機能の発表

WWDC(Worldwide Developers Conference)とは、毎年Appleが開催する開発者向けのイベントです。世界中のソフトウェア開発者が集まり、Appleの最新技術や製品について学ぶことが目的です。新しいiPhoneやiPadのソフトウェアアップデート、開発ツール、APIの発表が行われ、開発者は新機能を体験し、Appleのエンジニアから直接サポートを受けることができます。

また、基調講演ではAppleの最新の製品や技術革新が紹介され、世界中のメディアからも多くの注目を集めています。今年のWWDC24では「iOS18」そして「Apple Intelligence」の発表が中心となりました。さらに6/28(金)から日本でもAppleVisionProの販売を開始することを発表しました。

WWDC24で明かされた新OSの機能を
製品ごとにピックアップ!

ハッシュタグ: #カスタマイズ#手描き補正#端末間連携#ヘルスケア

【iPhone】
ホーム画面のアプリ配置や色を自由にカスタマイズできるように。またApple純正のパスワードアプリが搭載されました。

【iPad】初めて計算機アプリが搭載されただけでなく、手書きの数式にも回答。手書き文字の傾きやクセを自動で補正します。

【Mac】
iPhoneの画面をMac上で操作でき、​ファイル、写真、ビデオなどをシームレスに。ドラッグ&ドロップで移動可能に。

【AppleWatch】
心拍数や呼吸数などの健康データをより詳細に表示できるようになり、ワークアウトの強度を測定する機能が追加されました。

Apple IntelligenceとChatGPTが搭載、
これまでのAIと何が違うのか?

ハッシュタグ: #新しいAI体験#パーソナライズ#Siriパワーアップ

Apple IntelligenceはApple端末(iPhone、iPad、Mac)に搭載されたパーソナライズAIです。このシステムにより、ユーザーの行動や状況に基づいて最適な情報や機能を提供できるようになりました。

例えば、写真アプリで写真を検索する際に「友達とピクニックしている写真」といった自然な言葉で検索でき、Apple Intelligenceが該当する写真を見つけ出します。Appleの特徴的な絵文字は「Genmoji」として、ユーザーがオリジナルの絵文字を作成できます。

さらにApple IntelligenceによりSiriがパワーアップ。これまでSiriは音声にしか反応できませんでしたが、これからはタイプ入力して指示を出せるようになり、Appleと他社製のアプリ内やアプリを横断して、何百もの新しいアクションを実行できます。例えば、ユーザーは「土曜日のバーベキューで撮った写真を○○に送って」と言えば、Siriがやってくれるようになるのです。

【独占取材】プロフェッショナルから見た
WWDC、Appleの凄さとは?

ハッシュタグ: #プロの目線#シームレスなAI体験#生成AIのこれから

筆者は現地の様子をリアルタイムで知るためにカリフォルニアへ渡航し、サイドイベントに参加してAppleの新製品発表会「Keynote」を視聴しました(WWDCには開発者やメディアなど限られた方しか参加できません)。日本からWWDCに参加された方の中で、try!swift Tokyoコミュニティの懇親会を開催するという情報をキャッチし、開発者ではないのですが筆者も参加させていただきました。

今回、取材にご協力いただいたお2人とは、実際に懇親会でお会いしました。後日、WWDCに参加されて感じた会場の様子、そしてAppleがWWDCでの発表に込めた思いをお聞きする機会をいただきました。なお、インタビューの内容は会社ではなく個人の見解によるものです。

【プロフィール】
  • 岩井 雅幸さん:
    ユニティ・テクノロジーズ・ジャパン /シニア・デベロッパー・サポート・エンジニア。フリーランスとしてWebデザインからサーバーバックエンド開発、FlashやSilverlightによるインタラクティブコンテンツ制作など幅広い業務に携わる。iPhoneの登場以降は数多くのiOSアプリケーションを開発。2012年にはAppBank Games株式会社設立に参画し、スマートフォン向けのゲームを開発。Unityではイベントアプリ「Unity Meetup」の開発を担当、現在はUnity Editorの開発に携わっている。著書に『uGUIではじめる Unity UIデザインの教科書』
  • 松館 大輝さん:
    東京を拠点に活動するiOS Developer。世界中からSwiftの開発者が集まる「try! Swift Tokyo」のメインオーガナイザーを務める。またスタートアップ数社、内閣官房IT総合戦略室(デジタル庁準備室)を経て、現在ではデジタル庁エンジニアユニット長を務める傍ら、さまざまな企業でアプリ開発の支援や技術顧問・アドバイザリーを行う。著書に『iOSアプリ設計パターン入門』
Q:今回のWWDCで、AppleはOSに組み込まれたAI=Apple Intelligenceを発表しました。AI搭載のOSであることで、今までのApple製品とは何が違ってくるのでしょうか?
  • 岩井さん:Appleの強みは、iPhoneやiPadなどデバイス間で連携できるため、使いやすく一貫した体験を提供する「エコシステム」を持っていることです。そしてApple Intelligenceがユーザーの行動やニーズに合わせたサポートが可能になるため、これからのApple製品は「デジタル秘書」のような役割を果たし、より生活が便利になると思います。
  • 松館さん:これまでAppleはAI技術の活用を示唆しつつも、その詳細を明らかにしていませんでしたが、今回のWWDCで初めて「AI」という言葉を使用しました。これは、ユーザーにAIを意識させることなく新しい体験を提供したい、という思いがあると感じました。例えば、Siriを使ってアプリが操作できたり、アプリ間での自動連携がシームレスにできるようになります。
Q:具体的に、新しいOSでは何ができるようなったのでしょうか?
  • 松館さん:例えば、iPadには純正の計算機だけでなく、手書きの数式にも即座に回答する機能が搭載されました。この機能が発表されたとき、会場は大盛り上がりでしたね! さらに、ユーザーの手書き文字を真似る機能や数式をタップして変更する機能も評価されています。 ベータ版ではまだ全ての機能を試すことはできませんが、正式版のリリースに向けて大きな期待を寄せています。
  • 岩井さん:昨日使ったファイルをAIに尋ねることができたり、天気などの日常的な情報も簡単に取得できるようになります。これによりデバイスとユーザーとのコミュニケーションが一層円滑になり、生活がより便利になることが期待できますね。さらに、AIはユーザーの習慣や好みに合わせた情報提供も可能になり、まるで専用のアシスタントがいるかのようにサポートできるようになるでしょう。
Q:岩井さんは、AIの進化がエンジニアリングの現場に与える影響についてはどう思われますか?
  • 岩井さん:生成AIによりエンジニアの仕事はもっと楽になると思います。例えば、実際に私も使用していますが、技術ドキュメントの翻訳やエラー対応、コード生成などをAIがサポートしてくれています。こういった進化により、多くの人にとってエンジニアリングはより身近なものになるでしょう。一方で、AIが生成したコードだけでは不十分だったり、オリジナリティが求められる場面では人が手直しする必要もあるので、あくまでAIは一緒に開発するサポーター的役割になるのではないかと思います。
Q:松館さんは生成AIに関して、国としての必要な整備や環境についてどうお考えですか?
  • 松館さん:生成AIに関するセキュリティ対策は、企業だけの努力では不十分です。例えば、AIを使ったシステムの安全性を確保するためには、国全体での法律整備が必要です。しかし、規制を厳しくしすぎると産業の成長が妨げられる恐れがあります。したがって、適切なバランスを保つことが重要です。現在、技術の進化は非常に早く、法律がその変化についていけていないのが現実なので、新しい技術が安全に使えるようにするために、迅速で柔軟な法整備が求められると思います。

【今回の深掘り】
WWDC24で発表されたAppleの「Apple Intelligence」と「iOS18」によって、私たちの生活はどのように変わっていくのでしょうか。個人に最適化されたAI体験が日常に溶け込み、より直感的・効率的にAIを使う時代が来るのかもしれません。

特に注目すべきは、AIが端末に直接組み込まれる点です。これにより、写真の検索や複雑な計算をする際、私たちはスマートフォンを使うように当たり前にAIを活用し、AIを意識せずに自然に活用できるようになるでしょう。

しかし、この技術の進化は私たちの生活や社会にどのような影響を与えるのでしょうか。AIが単なるツールから、生活を豊かにするパートナーへと進化していく中で、プライバシーの問題や人間関係の変化など、新たな課題もありそうですね。

おわりに

AIの技術は日々進化しており、私たちの生活に大きな変革をもたらす可能性を秘めています。今後もAIの動向や最新技術に関する記事を継続的にお届けしていきますので、ぜひご期待ください。

皆さまは、AIと共に歩む新しい時代の幕開けに、どのような期待や不安を感じていますか? ぜひ一緒に考え、議論を深めていければと思います。皆さまのご意見もお待ちしています!

富士フイルムビジネスイノベーションジャパン株式会社
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