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  ReadWrite Japan

アップルがSwift 2をオープンソース化。アプリ・メーカーへの影響は?

2015年6月30日(火)
ReadWrite Japan

有名人の登場、OS Xのアップデートなど、アップルはあの手この手でユーザーの財布のヒモを緩めようとしている。そんな中、6月8日のWorldwide Developers Conferenceで、同社はSwiftに関する計画の概要を発表した。―そして、それは最高だった。とりわけ画期的だったのは、次世代のSwiftをオープンソース化するという点である。

つまり、Swiftのソースコードは自由に利用できるようになり、第3者がそれを再配布したり修正したりすることも可能になるということだ。

「弊社は今年、Swift2を加速させます」とアップルの上級副社長、クレイグ・フェデリギは述べている。 「Swiftは、次の大きなプログラミング言語だと考えています。今後20年間、われわれはこの言語でアプリケーションやシステムを開発する予定です。あらゆる場所で、あらゆる人々にSwiftが利用されるようになってほしいと考えています」。

これはアップルの節目の出来事として興味深い。同社が自社プラットフォームのアプリ開発者に対して制限を設けたり、閉鎖的な姿勢をとったりするのはよく知られているところだ。だが、同社は最近、特に昨年から緩和に向かっている。今では、自社のプログラミング言語を解放しようというのだ。このニュースはWWDCで大きく取り扱われることはなかったものの、App Storeでアプリを販売しているメーカーにとっては大きな転換点となる。

速やか(Swift)な動き

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昨年導入されたSwiftは、アプリのコーディングをより迅速化、簡易化することを目指している。自社プラットフォームの大半がアプリで成り立っている同社にとって、アプリ作成の速度を上げるのに特化した言語を作成するのは理にかなっている。アップルによると、LinkedIn、Yahoo Weather、Hipmunkなど、読者も使ったことがあるような話題のアプリもSwiftで書かれているという。

新たに発表されたSwift2によって、アップルはアプリ作成のプロセスがさらに改善されるのを目指している。構文だけでなく、デバッギングやエラー処理が見直されたため、開発者は問題処理ツールを利用することができるし、あるいは問題が発生する前に防止することもできるようになる。

Swift2がオープンソース化されれば、開発者はソースコードを調べられるようになるので、驚くことにはあたらない。独自のソフトウェア開発ツールを作成することもできるようになるだろう。つまり、アップル以外の環境でもSwiftのアプリケーションを運用できるということだ。アップル自身もSwiftがLinuxに導入されると発表しており、このiPhoneメーカーがその線で考えているのを裏づけている。

この動きによって開発者の枷が外れることになったとしても、アップルが後押ししてきた新しい分野に目を向ければ、それは至極当然のことだ。思い出してみよう。昨年以前には、HealthKitや、HomeKit、Apple Watch、そしてSwift自体も、(少なくとも公には)存在していなかったのだ。同社は、今までで最大の新しいiPhoneや、CarPlayシステム、そしておそらく次に発売される新しいApple TV製品とアプリのエコシステムなどの開発を進めてきた。

アップルはそれらを単に羽ばたかせるだけでなく、飛躍させようとしている。おそらく、これまでで最も高いところまで到達させ、軌道に乗せようと考えているはずだ。

解放

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App Storeの承認とiOSの開発に関してアップルがまだ手綱を握っていることには、もちろん注目すべきだ。しかし、開発者に対して同社が次第に歩み寄るにつれ、その強固な鉄の支配は緩やかになっている。

グーグルは最近のGoogle I/Oカンファレンスで多くのAndroidのソフトウェア開発ツールを公開したばかりである一方、アップルはWWDCでこのような新しい動きを見せた。開発者になるには今が絶好のタイミングのようだ。

昨年リリースされたiOS 8により、アプリ・メーカーには今までになくアクセス可能領域が開放された。アップルがサンドボックスの障壁を緩和したため、アプリケーション同士のやり取りができるようになり、iOSのコア機能により多くアクセスできるようになったのだ。開発者がiOS 9を使用する場合は、改良の余地がより大きい。現在では、iOS 9やWatchOS 2のオペレーティング・システムの基本的な機能を見られるほか、センサーやその他のハードウェアに対して、よりアクセス可能になっている。

オープンソースという方法によって、Swiftに注目を集めつつ、開発者の機嫌を伺う新しい手段をアップルは手にしている。これはおそらく、セキュリティの脆弱性を探し出すのに一役買うことになるだろう。(われわれの生活の多くの領域をアップルが支配しようとしているのを考えると、これは重要だ。)Swiftの奥深くまで知ることができるようになれば、開発者が自分の都合に合わせて言語の拡張を行うこともできるし、どう発展させるかの方向づけをしてやることもできる。

機会があれば、多くのアプリ・メーカーはそうするだろう。Stack Overflowが157か国、26086人を対象に行った2015年の開発者統計によると、現在Swiftで開発を行っているか、将来Swiftで開発を続けることに関心のある開発者の中で、「最も好きな」言語にSwiftと回答したのは77.6%だった。

今年の年末にはこの数字がさらに増えるかもしれない。アップルが自らのコードと開発者を解放するためだ。開発者に与えられる自由はわずかではあるが、それでも重要だ。

画像提供:Adriana Lee and Richard Procter for ReadWrite

Richard Procter
[原文]

※本記事はReadWrite Japanからの転載です。転載元はこちらをご覧ください。

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