【注目】パリ五輪に学ぶ、生成AIの進化と課題
はじめに
本連載は、生成AIコミュニティ「IKIGAI lab.」で活動している6名で運営しています。注目されている生成AIに関するニュースを収集し、個性豊かなメンバーによる記事の深堀りから、半歩先の未来の想像を共有していきます。この記事を通して、ぜひ皆さまも各々の半歩先の未来を想像しながら、色々な価値観を楽しんでいただけると嬉しいです。
私たちの日常に浸透しつつある生成AI。その進化のスピードは目覚ましく、私たちの想像をはるかに超えるペースで社会を変革しつつあります。
2024年、世界中の注目を集めるパリ五輪。この一大イベントは、AIの可能性と課題を如実に映し出す鏡となりそうです。華やかな演出を彩る革新的なAI技術。その裏で潜む新たな脅威。そして、それらに対応しようとする法規制の動き。
今回は、パリ五輪を舞台に繰り広げられるAIの活躍と課題、そして、それらを取り巻く状況への対応について解説します!
パリ五輪におけるAI活用事例
インテル、オリンピックでAIプラットフォームのイノベーションを実現
●2024年4月17日 intel
Intel Brings AI-Platform Innovation to Life at the Olympic Games
インテルは2024年パリオリンピック・パラリンピック競技大会の公式AIパートナーとして革新的な変化を起こしました。それによりファン、主催者、アスリート、視聴者に次世代のエンゲージメントと新しい体験を提供しました。その主な内容は下記のとおりです。
- データ収集と解析:
競技場に設置されたセンサーやカメラを通じて、選手の動きやバイタルデータをリアルタイムで収集します。これにより、選手のパフォーマンスや健康状態を詳細にモニタリングできます。 - パフォーマンス向上:
収集されたデータはAIによって解析され、選手の動きや技術の改善点を特定します。これにより、トレーニングプログラムが個別に最適化され、選手のパフォーマンスが向上します。 - 自動ハイライト生成:
インテル Getiプラットフォームを活用し、AIによる自動ハイライト生成システムを導入。複数競技のカスタマイズされたハイライトを即時に作成・配信しています。 - オリンピックの遺産の保存:
オリンピックの貴重な映像を3Dデジタル化してインタラクティブな展示を実現し、観覧者は歴史的瞬間を360度回転させて探索できます。これにより、オリンピックの遺産を臨場感ある形で未来へ継承が可能になります。
インテル、パリ2024オリンピック選手向けAIチャットボットを発表
●2024年7月19日 ITBrief
Intel unveils AI chatbot for Paris 2024 Olympic athletes
インテルが発表したアスリート向けのAIチャットボット「Athlete365」は、アスリートが大会期間中に必要な情報を迅速に得るため、下記のようなサポートを提供します。
- リアルタイムな情報提供:
アスリートが大会期間中に必要とする情報(例:競技スケジュール、交通情報、宿泊情報など)をリアルタイムで提供します。 - 多言語対応:
このチャットボットは多言語対応しており、世界中のアスリートが自分の母国語で情報を得ることができます。 - パーソナライズドサポート:
アスリートの個別のニーズに応じたパーソナライズドサポートを提供し、個々のアスリートが最適な環境で競技に集中できるよう支援します。
このように、AIの技術発展によりパリ五輪は変化を遂げました。ただ、技術発展には光もあれば闇もあります。次項では、闇の部分を紹介していきます。
パリ五輪を標的にしたサイバー攻撃の増加
パリ五輪に便乗したICO詐欺サイトとAIの利用
●2024年6月27日 Trend Micro
ICO Scams Leverage 2024 Olympics to Lure Victims, Use AI for Fake Sites
パリ五輪をテーマにしたICO詐欺サイトが急増しています。これらの詐欺サイトはAIを駆使して生成された画像やテキストを使用し、信憑性を高めています。
生成AIを活用することで、ICO詐欺サイトに下記のような影響を及ぼしています。
- 信憑性の向上:
AI生成の高品質な画像やテキストを使用することで、詐欺サイトがより信頼性を持つようになりました。 - 迅速なサイト作成:
AIを利用することで、短期間で大量の詐欺サイトを生成・運営できるようになりました。 - ターゲットの効果的な欺瞞:
ソーシャルメディアでのマーケティング活動がAIによって強化され、より効果的に投資家を騙すことが可能になりました。
偽動画でIOCの信用失墜
●2024年6月4日 CNN.co.jp
トム・クルーズのAI音声使う偽動画も、パリ五輪狙うロシアがプロパガンダ強化か
俳優トム・クルーズの音声をAIで模倣し、国際オリンピック委員会(IOC)を批判する偽ドキュメンタリーが確認されています。 また、米国務省報道官の発言を改変した動画も出回っており、これは報道官の異なる動画を合成し、AIで唇の動きを修正することで作成されたとみられています。
このようなディープフェイクは、パリオリンピックに対する妨害工作や、ウクライナ支援に対する西側諸国の結束を弱体化させることを目的としている可能性があります。また、この事例は生成AIが悪用され、偽情報拡散に利用される危険性を示唆しています。
このAIを活用したパリ五輪へのサイバー攻撃はあくまで一例で、脅威の一部に過ぎません。こうした状況を受け、AI技術の健全な発展と人権保護の両立を図るため、EUは2024年8月1日、世界初の包括的AI規制法「AI法」を施行しました。
各国のAIへの対応
世界初の包括的AI規制法の発効
●2024年8月1日 産経ニュース
EU、世界初の包括的AI規制法が発効 段階的にEUで活動する企業に適用、日本企業も
EUが世界初の包括的AI規制法を発効させました。この法律は生成AIを含むAI技術に対する規制を定め、EUで活動する企業に段階的に適用されます。最も危険性の高いAI使用は2025年2月から禁止され、他の規則は2026年から適用開始予定です。法律の目的は偽情報拡散防止や未成年者保護などで、違反企業には制裁金が科されます。
本法律の内容は以前にまとめていますので、下記の記事をご確認ください。
【革新と規制】生成AIの未来はユートピアかディストピアか、その答えは? | Think IT (シンクイット)
日本、生成AIの法整備へ
●2024年7月31日 読売新聞オンライン
生成AIの法規制、首相が検討要請へ…8月2日に有識者会議の初会合
政府がAI制度研究会で生成AIの法規制に向けた議論を開始。村井英樹 官房副長官によると、岸田政権は官邸主導でAI対策を進め、G7の「広島AIプロセス」の議論をリードしました。法規制の検討理由は「現行のガイドラインでは不十分との指摘があり、リスクの大きさに応じた対策と柔軟な制度を目指すため」と発表しました。また、イノベーションとの両立も重視。偽・誤情報対策として、日本発の技術「オリジネーター・プロファイル」の実用化に期待を寄せています。
【今回の深掘り】
パリ五輪の事例から、アスリートのサポートや観客体験の向上、さらには大会運営の効率化まで、AIは多岐にわたる分野で革新をもたらすと同時に、ディープフェイクなどの脅威は私たちに警鐘を鳴らしています。
EUの「AI法」は、こうした現状にいち早く対応するために定められた法律です。しかし、そんなEUでも、すでにAIを活用した様々な影響を受けているのが現状です。
AIの進化はさらに加速していくことが予測されます。そんな社会で「事後」でしか対応できない法律で規制する対策のみが果たして正しいと言えるのでしょうか。
今後の変化の早い社会においては、法律などの対応に併せて、その時代を生きる人の「モラル」も重要になると考えます。あなたはどういった対策が必要だと考えますか?
おわりに
今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。今後も、生成AIに関する最新情報とその深堀りを発信していきます。次回の投稿をお楽しみに!
※本ニュースは「IKIGAI lab.」が配信しているコンテンツです。
IKIGAI lab.はこちらをご覧ください。
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