押さえておきたい選定の重要ポイント
導入対象システムによる選定ポイント
システムのオープン化と運用管理のベンダー依存度による違いを図3に示します。
まず、システム構成による違いからみていきましょう。システムで利用しているハードウエアの種別によっても、選定するソフトウエアに違いがあります。
大手ベンダー製品の場合、システムが同社製のハードウエアで統一されている場合はハードウエア、OS、アプリケーションなどを含めて一元的に監視、管理することが可能です。しかし、他社製品のハードウエアについては監視できないこと多いため、マルチベンダーのシステムでは、逆にデメリットになってしまうことがあります。この点は監視システム構築時点では問題にならなかったとしても、システム統合や部署間にまたがって監視システムを増強するなどの場合に問題になりやすいため、ある程度長期的な計画を立てた上で選択する方が良いでしょう。
一方、すでにシステムがマルチベンダーの場合、専業ベンダー製品やオープンソースソフトウエアといった、もともとハードウエアベンダーの依存がないソフトウエアを選択することになります。この場合、ハードウエア監視などは監視システム構築の際に調査を行ったり、設定を作成する必要があるため、カスタマイズのコストが発生します。オープンソースのソフトウエアではハードウエア監視のプラグインや設定が公開されているものがあり、そういったコミュニティの成果を利用することで、構築の手間を低減できる場合があります。
続いて、運用形態の違いからみていきましょう。システムには、ハードウエアやソフトウエアベンダーのサポートを活用して日々の運用を行っているようなシステムもあれば、オープンソースを積極的に採用し、自社のエンジニア内で問題の解決まで行っているシステムもあります。
これは業種や企業によっても変わるものですが、そういった方針や慣例とったものはシステム監視ソフトウエアの選択においても強く影響することでしょう。特にシステム監視ソフトウエアを活用する立場にある運用管理の現場では、ソフトウエア/ハードウエアのサポート企業とのこれまでの実績や、技術面での経験の蓄積が非常に重要な決定要素になることが多くあります。
当然ですが、ベンダーへの依存度が高い運用形態の場合は商用製品を選択した方がトラブルが少なくて済みます。オープンソースのソフトウエアを選択する場合、その性質上ソフトウエアに不具合があった場合でもサポート企業が対応できない場合があるなど、利用者側にも自己責任を負うことへの理解が必要です。この点は非常にトラブルになりやすいため、運用管理についても考慮してソフトウエアを選定する必要があります。
選定の重要性
数年前までは、システム監視ソフトウエアは商用のソフトウエアしか存在せず、中小規模のシステムでは導入が難しいことがほとんどでした。近年は専業ベンダーの安価なソフトウエアが登場し、オープンソースのシステム監視ソフトウエアでも商用利用にも十分に耐えうるようなったことから、選択肢の幅は大きく広がったといえます。
また、近年のシステムは拡大を続け、ハードウエアのマルチベンダー化やソフトウエアのオープン化も進むなど、より複雑化しています。監視ソフトウエアの導入にあたっては、各監視ソフトウエアで監視可能な項目や実現できる機能などを比較、選定する必要があります。選択の幅が広がったことにより、システムに適切な監視ソフトウエアを導入する際の選定は、重要かつ複雑になってきています。
本連載では、オープンソース、商用のシステム監視ソフトウエアをとりあげ解説と比較を行いました。各ソフトウエアの特徴と、選定の際のポイントをお分かりいただけたのではないかと思います。システム監視ソフトウエア選定の際の参考になれば幸いです。