レビューの質をモデル化する!

2009年3月10日(火)
竹下 千晶

成長モデルは、自らの改善につながりやすい

 よくある改善手法として、手順を決めて計測しそれを分析する、という方法があります。しかし、この手順重視の手法は、手順やルールに縛られ、やらされ感のもと、形式的/表面的な活動と計測に陥りやすいと思います。そうなってしまうと、計測したデータは、「数合わせ」や「アリバイ作り」の結果となり、事実を示さない、使えないデータになってしまいます。そのようなデータを分析しても効果が薄いため、「計測方法を変えてみたり、ルールを変えて(強化して)計測し直す、そして、また形式的な活動を繰り返す」という悪循環を繰り返すことになり、改善が進まないのです。

 成長モデルでは、各項目に応じてステップ0~5の状態を表現しています。「何をする」「どうする」という「方法論」を定めるのではなく、なりたい姿へのステップという「方向性」を示すものです。そのため、現在の状況をモデルに当てはめれば、どのステップにいるのかが分かります。今のステップが分かれば、次のステップの状態も定義されているので、今後何に取り組んでいけばよいか、という目標がはっきりします。目標が決まれば、その時々の状況に合った納得できる手法を自分たちで決めて取り組むことができます。そして、またモデルに照らしてみて...ということを繰り返し、徐々になりたい姿へと近づくことができるのです(図3)。

 また、各項目それぞれにステップが示されているので、すべての項目が同じステップである(同じステップにする)必要もありません。これも状況に合わせて、取り組むべき項目を絞ってもよいし、項目ごとに目指すステップが異なっていてもよいのです。

内部アセスを活用した、改善につながりやすい運用方法

 改善につながりやすいからといって、モデルを現場に配布すれば、「現場が自主的に活用してどんどん改善が進む」という都合のよい話はありません。弊社では、改善の推進部門が行う内部アセスという仕組みで成長モデルの活用と改善の促進を駆動しています。

 内部アセスでは、モデルに基づいて各プロジェクトのレビューの状態をヒアリングし、現在の位置(ステップ)を診断します。その際に、業務内容、その特性、体制など、さまざまな情報も引き出します。その上で、このプロジェクトにはどのステップを目指すのがよいのか、どこを改善するとよいのか、ということをプロジェクトマネジャーと一緒に考え、共有します。

 内部アセスは、一方的な評定/評価ではなく、「質の診断 → 目標設定 → 手法設計」(図3)のサポートを行うコンサルティングのような位置づけです。

 ここでの注意点は、診断結果の点数でプロジェクトマネジャーを比較/評価してはいけない、ということです。モデルにより数値化されるため、比較/評価したくなるのですが、比較/評価に傾きかけないよう細心の注意が必要です。それには、管理者層への周知と協力なくしては実現できません。

 プロジェクトによって、目指す位置も取り組む順序も違って当然で、「よい」はそれぞれ違います。「成長モデル」を適用した場合には、高得点であることだけがよいとは限らないからです。

 内部アセスは毎月、全プロジェクトマネジャーに実施しています。毎月繰り返していくことで、自然に自分たちの現在の位置に気づき、自分たちが進む方向が分かるようになります。初めのうちは、「あと何をやったら点数が上がるの?」という質問もよく受けましたが、最近ではそのような質問はなくなり、点数を上げることが目的ではなく、必要な改善をすればいい、ということがだんだん浸透してきたように感じます。

 今回ご紹介したのは、効果的な質の高いレビューにするために、なりたい姿としてモデル化し、診断により現在のステップを把握し、自らの改善につなげていく仕組みです。なりたい姿はいろいろあると思いますが、みなさんの活動にも参考にしていただければ幸いです。
 

株式会社デンソークリエイト
プロジェクトセンター 現場改善推進室 所属。
1996年入社後、開発環境ツールやカーナビのソフトウエア開発に携わる。2003年から全社でCMM(I)ベースのプロセス改善に取り組むことになり、当初よりSEPGとして参画。その後、現場密着型SQA機能を立ち上げ、SQAマネジャーとして現場改善を推進。社内の各種トレーニングの企画と開発にも従事。 http://www.denso-create.jp/

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