「DevOpsで日本のエンタープライズを変えたい」de:codeへの意気込みを語るマイクロソフト

2016年4月26日(火)
松下 康之 - Yasuyuki Matsushita
日本マイクロソフトは例年開催されるテクノロジーカンファレンスであるde:codeでエンタープライズに向けてオープンソースを取り入れた新しいDevOpsの世界をみせることを目指しているという。「世界標準ここにあり」をモットーに海外のベンダーなどを招聘して様々なプレゼンテーションを行う予定だ。マイクロソフトが変わることでエンタープライズを変えたいと語った。

オラクルやアップルなどの老舗のテクノロジーカンパニーにとって開発者を自社のエコシステムに呼び寄せて確固たる共栄圏を作るのは常套手段だ。マイクロソフトはWindowsとWindowsに特化した開発者向けツールを使ってそれをもっとも強力に推し進めたリーダーである。そのような企業が年次のテクノロジーカンファレンスで自社製品の次期バージョンを披露したり、自社が持つ新しい技術の方向性を示すことで、開発者をエンゲージ、悪く言えば囲い込むのは当たり前だろう。だが、今回のマイクロソフトのカンファレンスでは様子が違うという。DevOpsを中心にマイクロソフトでエバンジェリスト活動に従事する3人のエバンジェリストにde:code 2016の見どころについて聞いた。

本気で変わったマイクロソフトを見て欲しい

ーー今回、インタビューに参加して頂いたのは、高添修さん、寺田佳央さん、牛尾剛さんですが、それぞれ簡単に自己紹介をお願いします。

高添:私はマイクロソフトに15年在籍している人間ですが、今は主にインフラを担当していまして、これまで主にマイクロソフトのソリューションを使ってきたお客様向けのエバンジェリスト活動をやっています。

エバンジェリストの高添 修氏

寺田:私はマイクロソフトの中でもJavaのエバンジェリストという珍しい肩書なんですが、前はオラクルでもJavaのエバンジェリストをやっていました。

シニア・テクノロジー・エバンジェリストの寺田 佳央氏

牛尾:私の所属は日本マイクロソフトではなくて米国本社ですが、主にDevOpsに関するエバンジェリスト活動を行っています。高添が元からのマイクロソフトの方を担当しているのに対して、私は主にオープンソース系の皆様とマイクロソフトのソリューションの架け橋になりつつマイクロソフトのDevOpsを拡げていくことを担当しているという感じです。

シニアテクニカルエバンジェリストDevOpsの牛尾 剛氏

--今回のde:codeですが、セッションリストを眺めているとDevOps & OSSトラックだけかなり様子が違うなと。社外の人がとっても多い。

高添:それに関して一言で言えば、「世界標準のDevOpsを見せる」ということになりますね。我々にとってはそれがゴールです。「世界標準ここにあり」を日本のエンタープライズの皆さんに見てもらって世界の流れを感じて欲しいと。実際に世界のIT部門はよりアジャイルでDevOps的な環境に変わっていますし、それを見て感じていただくにはそういうスピーカーの声を直接聞いて頂くのが早いということです。

牛尾:ですので、ChefのJames Casey氏やJenkinsでお馴染みのCloudBeeの川口 耕介氏、HashiCorpのMitchell Hashimoto氏、さらにデータセンターOSということで最近注目が集まっているMesosphereのAaron Williams氏などにも来てもらって、世界はもうここまで進んでいるというのを直に見て貰いたいというのが私たちの願いなんです。

寺田:これまでJavaのエバンジェリストをやってきてお客さんに最新の技術を使ってもらうということがなかなかできないでいました。ですので、実際に手を動かすエンジニアとエンジニアの上の経営層の人の両方にメッセージを届けないといけないというのが私個人はよくわかっているつもりなんです。今回のカンファレンスにはそのどっちの方にも来て頂ければと思います。

牛尾:私はどちらかと言えばオープンソースのほうから来た人間なんですが、オープンソース系の人にとってはマイクロソフトが何をやろうがあんまり興味が無い。まぁ、それはそうですよね。そしてもともと企業のIT部門でマイクロソフトのソリューションだけを使ってきた人にとってもオープンソース系の話は興味が無いんじゃないかと思います。なので、オープンソース側からみたマイクロソフトのソリューションの良さや凄さ、簡単さを伝えられたらと思います。オープンソース系の人が知らないスゴイものがいっぱいありますから(笑)。オープンソースのツールを色々組み合わせて出来たことがマイクロソフトのツールなら簡単に実現できるなんてことはホントに沢山あるんですよ。

OpenStackとAzure Stackは比べ物にならない

--DevOpsと言えば開発部門とインフラの運用を行う部門双方に興味がある部分だと思います。インフラ側で特に注目するマイクロソフト製品としてAzure Stackが挙げられますが、これはプライベートクラウドを構築するOpenStackとは競合する製品になるのでしょうか?

高添:我々がこれまでパブリッククラウドのAzureで培ってきた経験を全部盛り込んだのが今回の大きな目玉であるAzure Stackです。これはAzureを動していたものオンプレミスで使ってもらえるようにしたものですが、IaaSがベースのOpenStackとは違うものだと思っています。

牛尾:Azure Stackとは比較になりませんね。

高添:これはパブリッククラウドだけをやっているベンダーには絶対に真似できないことなので、その辺の違いを今回のカンファレンスではじっくりご説明出来ればと思います。正直、下から色々なコンポーネントを積み上げてクラウドを作り上げて行ったものの、ゴールが仮想マシンだけというのはありえないのではないでしょうか。もうそんな時代ではないと。Azure Stackはその辺の要らないものを省いています。そういう意味でいうと全く違う発想なんですよね。(OpenStackは)オープンソースの技術者目線で言えば面白いプロジェクトだとは思いますが、エンドユーザーには届いてないんじゃないでしょうか? 私はクラウドのプラットフォームという意味ではマイクロソフトのやり方のほうが正しいと思っています。

牛尾:オープンソース側の開発者の立場で言えば、一度、Azureでパブリッククラウドを経験しておけば、そのままの知識をオンプレミスのクラウドに使えるんですよね。そういう意味での学んだことが無駄にならないというところは他のパブリッククラウドとは大きく違うところかなと思います。

高添:これまでは仮想マシンだけをターゲットにインフラを考えておけばよかったと思うんです。これからはコンテナーもありますし、PaaSの上で動くアプリケーションもあるわけです。ですので、IaaSとPaaS、それに仮想マシンという分離した形ではなくて一体になって管理できるそういう方向に向かうのだと思います。そういう意味で仮想マシンだけをターゲットにするような時代ではなくなってきていると思います。

寺田:今のマイクロソフトは、かつての囲い込みをやっていたような会社ではなくてオープンソースもお客様の要望に従って取り込んでいきます。コンテナーひとつをとってもDockerにも対応しますし、マイクロソフトが作るWidnows Containerもありますし、適材適所で必要な技術を提供できるようなプラットフォームを目指しています。そういう姿をカンファレンスで見て頂ければと思います。

最近マイクロソフトに入社したお二人

今回のde:codeに向けてマイクロソフトのDevOpsエバンジェリストの熱意が伝わっただろうか。インタビューの中では日本のIT業界で大きな位置を占めるシステムインテグレーターに対しても熱いメッセージを覗かせた3名のエバンジェリストだったが、カンファレンスでは普段聞けないようなディスカッションも行われるという。現地のレポートはまた別途公開する予定だ。ご期待頂きたい。

編集部からのお知らせ

日本マイクロソフトより、Think ITの読者向けに「de:code 2016」の招待券を3枚ご用意いただきました! 抽選方法などの詳細は以下の申し込みページをご覧ください。

「de:code 2016」招待クーポン抽選申込ページ

(更新)抽選は終了し5/12(木)に当選者の方々へメールでご連絡致しました、たくさんのご応募ありがとうございました。残念ながら漏れてしまった方は本登録をご検討ください。5/13(金)まで早期割引実施中です。

著者
松下 康之 - Yasuyuki Matsushita
フリーランスライター&マーケティングスペシャリスト。DEC、マイクロソフト、アドビ、レノボなどでのマーケティング、ビジネス誌の編集委員などを経てICT関連のトピックを追うライターに。オープンソースとセキュリティが最近の興味の中心。

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