第1回:セキュアOSの動向 (3/4)

Linuxディストリビュータが紐解くセキュアOS
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第1回:セキュアOSの動向

著者:Linuxコンソーシアム セキュリティ部会リーダー
才所 秀明
   2005/11/2
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導入利用までの問題点

   セキュアOSは商用(Trusted OSを含む)を中心として、公官庁や金融機関などで利用されてきました。また、最近は一般企業でも利用が広がりつつあり、商用セキュアOSだけでなく、SELinuxの利用もはじまってきています。

   このように、セキュアOSの利用に向けた動きはますます加速しています。しかし実際に導入・利用するまでには、様々な問題があります。
導入決定までの問題点

   まず、導入検討および決定の段階で問題があります。これはセキュアOSの導入事例情報の不足が原因でしょう。

   先ほど説明したようにセキュアOSはすでに利用されていますが、これらの導入事例の情報はほとんど公開されていません。セキュリティ製品全般にいえることですが、「導入している製品や導入事例などの情報を公開したくない」という顧客がほとんどです。

   一方、これから導入や利用を考えている方は、以下の要求からこれらの情報を必要としています。

  1. 他社がどのような所に導入して活用しているのか知りたい
  2. 現在利用しているアプリケーションの動作実績を知りたい
  3. システム構築の際に参考となる情報が欲しい

表1:これから導入する顧客の要望

   多くの場合は導入事例などの情報が得られないため、導入や利用に対する不安などを解消することができず、一歩踏みだせない状況になっていると考えられます。


実際の導入利用における問題点

   また、表1の3にも関わるのですが、導入・利用時にも問題があります。

   「個人情報保護法から見るセキュアOSの必要性:第2回」では、セキュアOSが「強制アクセス制御」と「最小特権」という2つの仕組みを実現するものと説明しました。しかし、セキュアOSはこれらの仕組みを提供しているに過ぎません。

   実際にセキュアOSを利用して高度なセキュリティを実現するためには、セキュリティ設定を行う必要があります。逆にきちんとしたセキュリティ設定を行わなければ、セキュアOSを利用する意味がありません。セキュアOSにとって最も重要なのは、セキュリティ設定です。

   しかしセキュアOSのセキュリティ設定は、非常に煩雑なことが多いです。なぜならセキュアOSは、従来のOSに比べて詳細な権限設定を可能にすることで、高度なセキュリティを実現しているからです。

   したがって導入・利用においては、特に「セキュリティ設定をどうするか?」という問題が非常に大きくなります。しかし「具体的に何が必要なのか?」という部分がわからないこともあるでしょうし、解決する方法の情報も少ないのです。そのため導入決定以前も問題になりますし、導入・利用時にも問題になります。

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Linuxコンソーシアム セキュリティ部会リーダー 才所 秀明
著者プロフィール
Linuxコンソーシアム セキュリティ部会リーダー  才所 秀明
日立ソフトエンジニアリング(株) 技術開発本部研究部にて、セキュリティ関連研究に従事。現在セキュアOS「SELinux」の調査研究を担当。セキュアOS「SELinux」の普及推進を目指し、講演、執筆、WG活動などにおいて活動中。
日本オープンソース推進機構 SELinux専門委員会メンバー
Linuxコンソーシアム理事兼セキュリティ部会リーダー


INDEX
第1回:セキュアOSの動向
  はじめに
  商用ディストリビュータのセキュアOSサポート
導入利用までの問題点
  セキュアOSに望まれるソリューション
Linuxディストリビュータが紐解くセキュアOS
第1回 セキュアOSの動向
第2回 Red Hat Enterprise Linuxセキュリティの概要と特徴
第3回 MIRACLE LINUXのセキュリティへの取り組み
第4回 Turbolinuxのセキュリティに対する取り組み
個人情報保護法から見るセキュアOSの必要性
第1回 個人情報保護法とセキュリティ対策
第2回 セキュアOSとは
第3回 セキュアOS紹介(1)〜 MIRACLE HiZARDとLIDS
第4回 セキュアOS紹介(2)〜 Trusted SolarisとPitBull
第5回 セキュアOS紹介(3)〜 SELinux

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