第2回:ナレッジマネジメントを具現化するツール (3/3)

エンタープライズ・サーチ
社内の情報資産を最大限に活用するエンタープライズ・サーチ

第2回:ナレッジマネジメントを具現化するツール
著者:アイ・ティ・アール  上村 陽子   2006/4/19
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ナレッジマネジメントを具現化するツール

   ナレッジマネジメントとはもともとは暗黙知を形式化することに重きが置かれていたと述べましたが、新たな商品・サービスの開拓に向けて研究・開発の現場の効率化や他部門との情報交換を進める必要があります。そして、新たなアイデアを創出する環境を作っていく場を提供することも、ナレッジマネジメントの重要な要素です。

   また昨今では情報過多の傾向もあり、膨大な情報から有益な情報を発見し活用することが重要視される傾向がみられ、エンタープライズ・サーチがナレッジマネジメント・ツールとして注目される理由といえるでしょう。

   市場にはナレッジマネジメント・ツールが多数存在しますが、ナレッジマネジメントが特定の機能を示す言葉ではなく広い概念を指す言葉であるため、各ツールが提供する機能はばらばらです。

  • グループウェア
  • SFA(注2)ツール
  • PDM(注3)
  • 文書管理サーバ
  • SFAシステム
  • 企業ポータル
  • コラボレーション・ツール
  • FAQシステム
  • 文書管理製品
  • イントラネット用blog
  • 検索エンジン

表1:ナレッジマネジメントを具現化するツールの例

※注2:SFA(sales force automation)ツール
営業支援のために使う情報システム、またはそのシステムを使って営業活動を効率化するツール

※注3:PDM(Product Data Management)
概念設計から製造全般にわたる各種のエンジニアリングデータを一元的に管理するというコンセプト、あるいはそれを実現するシステム

   ITRではナレッジマネジメントには3つのアプローチがあると考えています。

タイプ 説明
(1)プロセス重視型 ナレッジを蓄積するプロセス、ナレッジを取り出すプロセスを定型化することでナレッジ活用を促進する
日々の業務プロセス(ルーチンワーク)の中に、アプリケーションを埋め込む形で利用
蓄積されたナレッジが比較的そのままの形で再利用されるケースに向く
(2)コンテンツ重視型 業務の高度化により、1人がすべての関連情報を理解するのが困難な状況下で既存のナレッジを業務遂行の補完として利用する
非定型に関連情報を検索する形で利用される
ナレッジを定型化するのが困難なケース、重要だが次にいつ必要になるかわからない情報を扱うケースに向く
(3)コミュニケーション
重視型
個々の従業員が得たナレッジを他の従業員へ知らせるための「場」を提供する
イントラネットの情報配信、blogを活用した情報交換など同様の目的をもつ利用者間で、タイムリーに情報共有するケースに向く

表2:ITRが考えるナレッジマネジメントへの3つのアプローチ

   このように分類すると、前述した各ツールは3つのタイプのうち1つか2つを支援する機能を提供しています。言い方を変えれば、単独のツールで企業のナレッジマネジメントのニーズを100%満たすことは困難でしょう。

   本連載で取り上げているエンタープライズ・サーチはナレッジマネジメントに有効なツールであることは間違いありませんが、その導入だけでは企業に100%の満足を与えるものではありません。

   重要なことはそれぞれの企業が自社にとってのナレッジとはどのようなもので、それらをどうやって共有/循環させるべきかを知ることです。自社のナレッジマネジメントへのアプローチを明確にし、その中でエンタープライズ・サーチをうまく活用していけば、生産性の向上/従業員のスキルアップ、さらには新たなナレッジの創出といった大きな付加価値を得ることができるでしょう。

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アイ・ティ・アール  上村 陽子
著者プロフィール
株式会社アイ・ティ・アール  シニア・アナリスト
上村 陽子(かみむら ようこ)

データウェアハウス、BI、CRM、コンテンツ管理分野の市場調査を担当する。慶応義塾大学理工学部卒業後、ユーザ企業の情報システム部門を経て、1999年より現職。


INDEX
第2回:ナレッジマネジメントを具現化するツール
  業務の分類とエンタープライズ・サーチの役割
  ナレッジマネジメントとは
ナレッジマネジメントを具現化するツール
社内の情報資産を最大限に活用するエンタープライズ・サーチ
第1回 エンタープライズ・サーチが求められる背景
第2回 ナレッジマネジメントを具現化するツール
第3回 エンタープライズ・サーチの機能を見極める
第4回 各社エンタープライズ・サーチの機能を見極める
第5回 企業導入における留意点

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