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| SaaSビジネスは儲かるのか? | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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セールスフォース・ドットコムのサービスが日本郵政公社に採用されたことは、各種メディアで取り上げられ、大きな話題となった。また、最近ではさまざまなベンダーから「〜のSaaS形式での提供を開始」といったニュースがメディアを賑わす機会が多くなっている。 このように多くのソフトウェアベンダーがSaaSビジネスに参入し、一見バブルとも呼べるような状況がある。しかし、果たしてSaaSビジネスはそこまで魅力のあるものなのだろうか? ここでは、SaaSの代表的なベンダーであるセールスフォース・ドットコムとネットスイートの損益計算書から、実際のところSaaSビジネスは儲かるのかどうかについて検証してみたい。 図2にセールスフォース・ドットコム、図3にネットスイートの直近の売上推移を示す。 ![]() 図2:セールスフォース・ドットコムの売上推移 ![]() 図3:ネットスイートの売上推移 これらをみると両社共に右肩上がりで順調に売上を伸ばしていることがわかる。次に、売上原価、粗利益、営業経費を含めてみていくとしよう(表3)。
表3:セールスフォース・ドットコムとネットスイートの直近3年間の損益計算書 表3の最下段を見ればわかるように、セールスフォース・ドットコムの場合は、2005年度、2006年度は営業利益率はプラスになっているものの、2007年度に関しては僅かながら、マイナスである。ネットスイートは直近3年間、営業利益率はプラスになっていない。 両社ともに、粗利はプラスであるものの、営業経費、中でも販売・マーケティング費用の売上に占める割合が高いため、このような営業利益率となっている。特にネットスイートの場合、2004年度、2005年度と売上を上回る販売・マーケティング費用が計上されている。2006年には、ようやく売上を下回ったものの、依然として売上に占める販売・マーケティング費用の割合は65%と高い。 セールスフォース・ドットコムの場合も、販売・マーケティング費用が売上に占める割合は毎年おおよそ50%前後である。オラクル、SAPなどのソフトウェアベンダーの場合は、売上の約20%程度であることを考えると、SaaSベンダーの販売・マーケティング費用の割合がいかに突出した数字であるかがわかる。 しかし、これには理由がある。現在は「SaaS」という新しい市場の黎明期であるため、とにかく顧客を獲得しなければならない。このため、SaaSというコンセプトを顧客に理解してもらう、自社のブランドを認知してもらう、あるいは顧客のセキュリティへの不安を払拭するために、営業・マーケティング費用がかさむ。これには、営業マンの人件費のほか、オンライン広告やオンラインマーケティングなどの費用も含まれる。これが第1の理由である。 第2に、中小企業を主要なターゲットとすることが多いSaaSベンダーは、1社あたりのユーザ数が限られるため、できるだけ多くの企業に対してアプローチしていく必要がある。これは、多くのユーザを抱える大企業をターゲットとする場合に比べると手間がかかる。ここにもコストがかさむ。 第3に、SaaSの場合、新規顧客獲得のための営業・マーケティング活動だけでなく、既存顧客を維持するための活動も必要となる。顧客はサービスに不満があれば容易に契約を打ち切ることができ、ライセンス型のソフトウェアに比べて、顧客が別のベンダーに乗り換える確率は高くなるためだ。新規顧客を獲得するための費用よりは低いものの、こうした顧客維持のためのコストも販売、マーケティングコストを押し上げる一因となっている。 このように、販売・マーケティング費用が売上を上回る、あるいは売上を圧迫している状態では、当然ながら利益率は低下する。しかし、SaaSベンダーが今の勢いで顧客数、売上を伸ばしていけば、次第に改善される可能性が高い。 実際、2007年に入ってからは、セールスフォース・ドットコムは第一四半期、第二四半期ともに、わずかながらも、営業利益率はプラスになっており、ネットスイートも第一四半期の営業利益率は大幅に改善されている(表4)。
表4:セールスフォース・ドットコムとネットスイートの2007年の損益計算書 一般的にSaaSは、ライセンス販売を行うソフトウェアとは異なり、初期の段階でよほど多くのの顧客を抱えない限り、短期間で膨大な売上は期待できない。このため、開発費用などを回収するまでの期間は長期化する傾向にある。この点は資金に乏しいベンチャー企業にとって乗り越えなければならないハードルの1つである。その反面、ユーザが契約を継続する限りは安定した売上が見込め、契約期間に比例して、利益が増加していくという特徴がある。 現状では、SaaS市場はまだまだ立ち上がってばかりであって、市場のリーダーであるセールスフォース・ドットコムでさえも、市場の開拓にコストがかかり、まだそれほど儲かってはいない。これからSaaSビジネスへの参入を考える企業は、こうした現状を理解した上で、検討を進めるべきである。 |
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