第15回:世界に知られるオープンソース言語「Ruby」を作った、まつもとゆきひろ

第15回:世界に知られるオープンソース言語「Ruby」を作った、まつもとゆきひろ
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第15回:世界に知られるオープンソース言語「Ruby」を作った、まつもとゆきひろ
編者:Tech総研  2007/2/14
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我ら“クレイジーエンジニア”主義 vol.19 世界に知られるオープンソース言語 「Ruby」を作った、まつもとゆきひろ
今や世界に知られるオープンソースのプログラミング言語「Ruby」を開発した、まつもとゆきひろ氏。シンプルで利便性に優れたオブジェクト指向のスクリプト言語は、世界各国のプログラマたちに愛用されている。カリスマプログラマを生んだ背景とは?
(取材・文/上阪徹 総研スタッフ/宮みゆき 撮影/栗原克己)作成日:07.02.14
クレイジー☆エンジニア
(株)ネットワーク応用通信研究所
基盤研究グループ 特別研究員
まつもとゆきひろ氏
 オープンソースソフトウェア技術者として最も成功した日本人は誰か?という質問をプログラマにしたとするならば、多くの人が、この人物の名前を口にするであろう、まつもとゆきひろ氏。オブジェクト指向スクリプト言語「Ruby」の開発者である。自ら作ったソフトウェアが、国内はもちろんのこと、今や海外でも広く使われている。こんなエンジニアは、おそらく日本では彼くらいではないだろうか。実際、海外では、Matzのニックネームで通っているのが、まつもと氏なのだ。「Ruby」の特色は、シンプルで利便性に富んでいること。世界中のプログラマの心をつかんだソフトを生んだことはもちろん驚きだが、彼が開発をスタートさせた1993年、実はソフトハウスに勤務する一介のサラリーマンプログラマだったのだ。そしてもっと驚くべきは、彼が実は高校生のころから、プログラム言語を自分で作ることを考えていたことである。
高校時代、既に自分のデザインした言語でのプログラムを書いていた
 コンピュータとの最初の出合いは、小学校6年生のとき。父親が買ってきたポケットコンピュータ「L-Kit16」でした。といっても、コンピュータなんて認識はなくて、ダンプリストを打ち込んで、LEDが光るのを見て喜ぶ程度でしたけど。それから中学3年で、また父親が今度はシャープのポケットコンピュータ「PC-1210」を買ってきたんですよね。ここで初めてプログラミングというものを知るんです。機械にこう命令すると、こう動くんだ、と。BASICを理解して、サンプルを打ち込んだりして。面白かった。父親は、建材関係の会社に勤める普通のサラリーマンでした。実はポケットコンピュータは、会社の事務計算に役立てようとしてたようなんですが、僕が取り上げてオモチャにしてしまった(笑)。

 子どものころといえば、とにかく本をよく読んでいました。というのも、家の目の前が本屋さんだったから。ずっと本屋にいたので、あるとき友だちが遊びに来て家に入れようとすると、「お前の家はあっちじゃないのか」と本屋を指さされたりして(笑)。SFでもマンガでも何でも読みました。活字が好きだったんですよね。それこそ、百科事典も頭から全部読んだし、薬の説明書も読んでた。

 高校に入ってからは、コンピュータへの関心が高まって、コンピュータ雑誌にのめり込みました。自分が考えたとおりにコンピュータが動くのが面白かったんです。既に、持っていたコンピュータの性能に不満を持っていました。特にプログラミング言語に興味があって。どうも、アセンブラは好きになれないなぁ、とか。BASICでプログラミング言語は作る気になれない、とか(笑)。それで、自分でプログラミング言語を作ろうと思い始めていたんです。実際、自分のデザインした言語でノートにプログラムを書いていました。残念ながら、そのノートは残ってないんですけど。ついでにいうと、名前も決めてたんです。「Ruby」じゃないです。まったく違う名前。あまりに恥ずかしい名前だから、絶対に明かさないです、これは(笑)。
図書館と研究室に通いつめていた大学時代
 大学は情報系に進んだんですが、ようやくちゃんとしたプログラム環境に出合えたのがうれしかった。それまでは触れてなかったUNIXや、書籍の中でしか見たことがなかったソフトウェアや言語などに直接触れることができて。高校時代に読んだ本の著者が研究室の先生だったというのも、うれしい出来事でした。プログラミング言語の研究室です。でも研究室のテーマは言語処理系の実装方法についてだったので、私一人先生の言うことを聞かないで、自分で言語をデザインしたりしていましたが(笑)。

 バブルの時代でしたけど、遊んだりしていた記憶はないですね。ずっと図書館にいて、やっぱりいろんな本を読んでいました。遊びに行くとすれば、映画館か、それともやっぱり本屋か(笑)。運動は得意じゃないし、みんなで何かやることにも関心がなかった。本は子どものころから本当にずっと読み続けていましたね。最近になって、ネットのおかげで昔ほど読まなくなりましたけど。でも、いろんな分野の本を読んできたことは、自分に大きな意味があったと思う。

 あとは、研究室によくこもっていましたね。一晩中、研究室でコンピュータをいじって過ごして朝、家に帰ってシャワーを浴びて、また研究室に来たりとか(笑)。80年代後半でしたけど、既に研究室ではインターネットが走っていたので、ネットニュースとか掲示板とかも見てましたね。面白いなぁと思いました。世の中には頭のいい人がいるんだな、と。

 当時はまだコンピュータは黎明期。実は父親は、情報系の学校に行くのは反対していました。コンピュータやプログラムは趣味にしとけ、と。メカなどの技術者にしたかったみたいですね。でも、僕はとにかくコンピュータが好きでしたから。先のことなんて全然考えていませんでした。


リクナビNEXT 1990年に大学を卒業してソフトハウスに入社した、まつもと氏。バブル崩壊の影響で仕事が減ったそのとき「できることをやろう」と考えたことから「Ruby」の開発がスタートした。
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