第6回:企業トップとの積極的な対話で経営戦略とITを効果的に連係する (4/4)

情シスマネージャの挑戦!
IT部門の改革に取り組む人必見!ある情シスマネージャの挑戦

第6回:企業トップとの積極的な対話で経営戦略とITを効果的に連係する

著者:有田 若彦   2007/4/5
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トップとIT部門がいいたいことをいえるところからすべてが始まる

   実際に経験するとよくわかるのだが、オフサイトミーティングでは怒鳴られたり文句をいわれたりと、かなり大変な目に遭う。額に青筋を立てて論議したことも、1度や2度のことではない。

   例えば、バッチ処理主体の汎用機が、いかに業務のリアルタイム化を阻害しているかを説明した時のことだ。「技術論は聴きたくない!」といって暴れる役員がでて沈静化が大変だった。その役員は、ITが現場の変化を阻害していると考えており、現実は逆だと信じていた。そのため、変化したがらない現場が、ITによる抜本的変革を拒んでいるとの説明が信じがたかったようだ。その後は、反証に次ぐ反証で参加者一堂が、かっかと熱くなってしまったほどだ。

   一方で日頃、社内政治の犠牲になってきたITにとっては絶好の訴求の場だと感じた。彼らもやはり同じ人間であり、論理的に切実に訴えれば理解してくれる。今までまったく理解してもらえなかったことでも、何かの拍子にストンと落ちるように、理解してもらえたときは驚きすら感じるほどだ。

   つまり、お互いにいいたいことをいえるところから、すべてがはじまるのだと考えておきたい。

   オフサイトミーティングは、上記のようなものであるため、それが効果を発揮しやすい企業はある程度絞られてくる。要するに、対話できる土壌が必要だということだ。

   そのためには、次のような点が大前提となる。

  • 経営者が「対話」に関して関心と信念を持つこと
  • 互いに聞こうとする耳をもつこと
  • IT部門に確固たる決意があること
  • オフサイトミーティングが認知されていること

表5:オフサイトミーティングを行う情報部門側の前提条件

   何を隠そう、筆者の会社でも対話がはじまるまでに何年もの歳月を要した。

   いくら現場の人間が対話したいと思っても、経営者にその器量がなければ機会は生まれず、また開催しても効果はあらわれない。この点については、そうした経営者の出現を待つ以外に手はない。不幸にして経営者と対話できない企業のIT部門では、来るべき時に備えて実力を蓄えておくほかはない。

   この地道な取り組みはすぐには報われないかもしれないが、先々になれば必ず効いてくる。多くの企業が奮起することを期待して止まない。

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有田 若彦
著者プロフィール
有田 若彦
製品開発技術者やFAエンジニア、SEなど、一貫して製造業のエンジニアリングを歩む。現在は、某化学メーカーの情報システム部に所属。グループウェアの全社展開やDWH/BI、汎用機ダウンサイジングなどのプロジェクトのほか、EUCやEUDの案件を経験。目下は、IT企画やITマネジメント、IT教育、システム監査など多方面を担当。システムアナリスト、CISA公認システム監査人、ITC公認ITコーディネーター、経営品質協議会認定セルフアセッサー、行政書士。


INDEX
第6回:企業トップとの積極的な対話で経営戦略とITを効果的に連係する
  IT側と経営者のギャップ
  経営者と直接対話し活路を開く
  日常業務と隔離された開催場所とする
トップとIT部門がいいたいことをいえるところからすべてが始まる
IT部門の改革に取り組む人必見!ある情シスマネージャの挑戦
第1回 IT部門は変わる!業務現場も変われ!
第2回 社内のIT要員を使える「エンジニア」に変える
第3回 オーナーシップの発揮とビジネスモデルの構築が必要
第4回 アウトソーシング成功の秘訣は協業&マネジメント体制の構築
第5回 IT部門主導型の業務部門の変革を考える
第6回 企業トップとの積極的な対話で経営戦略とITを効果的に連係す
第7回 利用部門が「情報を使いこなす」ための正しいBIツール導入方法

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