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IT部門のための日本版SOX法対応準備
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今やらなければ間に合わないコト
著者:鍋野 敬一郎   2006/5/9
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現状調査と内部統制プロジェクト管理ツール

   2008年4月期以降の決算が対象ということは、3月末決算の企業ならば2009年3月までに対応すればよいということになり、あと約3年あると思われるかもしれない。しかし現実は甘くない。

   この2009年3月までに実際に内部統制対応が完了できているかどうかを企業は自己評価する必要があり、自己評価を踏まえた改善対応が行われている必要がある。つまり、こうしたテスト、評価、改善の時間的な余裕を見ると最悪でも半年以上前には対応を完了しておく必要がある。

   さらに内部統制は「2000年問題」などクリアしておしまいの課題ではなく、その後も決算期ごとに継続的に改善、変更を報告し続ける必要がある。

   内部統制対応の成果物は、職務記述書、業務フローチャート(業務プロセス管理)、リスクコントロール・マトリックス、テスト評価・改善書といった実施報告書など主に4つの文書(ドキュメント)になるが、特に業務フローチャートとリスクコントロール・マトリックスは継続的に運用することを考えて文書化を効率的に行うITツールを賢く選択する必要がある。

   筆者がこれまでに、米国のSOX法対応を目的として作成した文書を見せてもらったところでは、圧倒的にExcelが文書作成ツールに使われていた。しかし、正直このツールは記述の自由度は高いが変更管理には適していない。最も作業負荷が高いといわれる業務フローチャートとリスクコントロール・マトリックスの作成作業には、こうした改定作業も考慮したツールを賢く選択したい。

   業務プロセス管理をメインとして、その変更管理を効率的に行うツールにはBPMツールを検討することをお勧めする。現在では多数のBPMツールがあり、それぞれ機能や特徴や価格に幅広い開きがあるが、筆者が実際に触って今回の内部統制対応という課題に対して有効であると考えるツールを以下に紹介する。

Visio 2003(マイクロソフト社)
最も安価であり、内部統制テンプレートが無償提供されている

iGrafy FLOWCHARTER 2005 SOX+(コーレル社、販売:株式会社サン・プランニングシステム)
BPMソフトとして機能が高く、内部統制対応機能、操作性に優れる

ARIS Toolset、ARIS SOX Audit Managerなど(IDSシェアー社)
BPMソフトの最高級品、SAPやOracleEBSなど基幹系との連携が可能

表1:BPMツールと推奨理由

Microsoft Visio 2003の内部統制テンプレート
図4:Microsoft Visio 2003の内部統制テンプレート
(画像をクリックすると別ウィンドウに拡大図を表示します)


IT活用が成功と効率化の鍵である理由

   最近、セミナーやITベンダーの日本版SOX法対応に関する取り組みは積極的であり、見方によると過剰であるともいえるが、IT活用が内部統制対応に有効であることは確実である。しかしITはあくまでも手段でありツールであり、自社にとって有効に使いこなせるものを購入する必要がある。

   IT部門は経営を支える重要な部門とよくいわれるが、予算の自由度やその作業負荷に比べた役割や責任の重さは、苦労の割には過小に評価されているように感じる。今回の内部統制対応は「ITへの対応」がフォーカスされており、IT活用が導入負荷、導入後の運用負荷をクリアする鍵であることは間違いない。

   文書化の効率化やプロジェクト進捗管理、内部統制に関係するエンドユーザの意識向上を支援するプレイヤーとしてIT部門は積極的な役割を果たすことが可能である。ぜひともこれを機会に、IT部門の真価をアピールすべきチャンスと前向きに提えていただきたい。

   先にあげた経営破綻した米国企業のアニュアルレポートにかかれていた文章は、「内部統制を行うエンドユーザーの理解度、習熟度が低く十分な内部統制が整備されていない。経営主導で内部統制対応の弱点を改善する組織を設置し、速やかな対応を行うべきである」というものであった。これは、米国においても内部統制対応が重要としながら、現場ではないがしろにされていることを意味しているのではないだろうか。

   一過性の課題として文書化やシステム対応を乗り切っても、継続的なレベルアップや改善が考慮されていなければ結局会社は守れない。IT活用の本質は継続的な利用と運用にあり、電子化・自動化・ノウハウ共有といった課題に最も強みが発揮できるのがITである。従って内部統制対応を進めるにあたって、どれだけ幅広く早い段階でIT部門が参画し積極的に対処するかによって、内部統制対応の成否は大きく変ると考えられる。

   IT活用こそが膨大な作業とコスト、そして継続的に会社を守る最も有効な鍵なのである。そして、その鍵を握るのはIT部門やこれにかかわる我々の取り組み姿勢にかかっている。

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鍋野 敬一郎
著者プロフィール
鍋野 敬一郎
1966年生まれ。同志社大学工学部化学工学科卒業後、米国大手総合化学会社デュポン社の日本法人へ入社。農業用製品事業部に所属しマーケティング責任者などに従事。1998年よりERPベンダー最大手SAP社の日本法人SAPジャパンに転職しマーケティング担当、広報担当、プリセールスコンサルタントを経てアライアンス本部にてmySAP All-in-Oneソリューション立ち上げを行った。現在はERPベンダーのマーケティング・アライアンス戦略の支援や、ERP導入業者のビジネス活動の支援に従事。


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