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| はじめに | ||||||||||||
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日本のITの特徴を言い表そうとすると、「顧客至上主義」「完璧主義」「実績主義」という3つの言葉が思い浮かぶ。そして、これらの思想は微妙に関連していると考えられる。 この時代、どこの企業でも顧客至上主義を実践しようとしている。大量生産で価格を抑えるのみならず、顧客のニーズに合わせ、キメ細かな製品やサービスを提供することは、企業の存続に欠かせない常識になっているだろう。 筆者は、日本のホテルやスーパー、レストランなどのサービス業界の高いサービスレベルと、メーカーが提供する豊富かつ斬新な商品ラインナップに対し、一消費者として、日常生活の中でとても感心している。 だが一方で、顧客至上主義に走りすぎると、暴走の危険性もある。数年前、某スーパーマーケットで食肉産地の偽装工作が明るみにでた時、顧客至上主義の考えに基づいて、該当商品を購入した顧客全員に購入代金を返金したことがあった。ところが、実際に購入したかどうかわからない顧客にまで返金したため、世間の失笑を買ってしまった。これは、現場の顧客至上主義が暴走して企業に損害をもたらし、結果的にその利益に反することになった例だ。 |
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| ユーザは神様か?顧客要件を丸呑みし過ぎ | ||||||||||||
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日本のITプロジェクトの現場を見ると、ベンダー対ユーザ企業、あるいは情報システム部門対ユーザ部門の関係に、強い「お客様意識」を感じる。「お客様=神様」と捉えがちになり、場合によっては、本当に必要なのかわからない要求まで、完全に満たそうとする傾向が見られる。 企業のITを管理する上で、顧客至上主義を信奉しすぎると、以下のような落とし穴に陥りやすい。
表1:顧客至上主義の落とし穴
こういった表面的なニーズしか見ない顧客至上主義と、顧客に「迷惑をかけない」という意識から、必要以上の「完璧主義」が生まれる。具体的には、システムの設計段階に多大な時間をかけ、現場から管理者レベルのユーザまでが望む機能をすべて揃える。また構築時には、さらなる時間とコストを投入し、完璧なバグレスを追求することだ。 表面的な顧客至上主義と、完璧主義に基づいて意思決定をすると、リスクの回避だけに重点が置かれる。その結果、プロダクトの選択やベンダー選定などの判断基準は、どれほど実績を持つかという「実績主義」になってしまう。こうした環境では、イノベーションを起こすような文化は、なかなか育まれない。 |
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| 国内プロジェクトで活かせないタイム・コストボックス手法 | ||||||||||||
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欧米や中韓のプロジェクトでは、「タイムボックス」や「コストボックス」の手法が頻繁に使われている。だが、日本ではなかなか応用できないのが現状だ。 これらは、プロジェクトの期間または予算にあらかじめ固定値を設定し、プロジェクトにおける業務上の達成目標(ビジネスオブジェクティブ)を明記した上で、要件と機能を変動値として調整するプロジェクト管理手法(図1参照)だ。本来プロジェクトの目的は、決まった機能仕様を「パーフェクト」に達成することではない。限られたリソースの中で、ビジネスオブジェクティブを「必要十分」に満たすソリューションを模索して作ることだ。 日本のITプロジェクトではコンサルやSE達は、各レベルのユーザから細かい機能や課題を、完璧に聞き出すことに終始。ヒヤリングの結果を自慢し、かかる時間とコストが品質に対してトレードオフする関係を、軽視する傾向が見える。 |
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