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顧客の声を活用するテキストマイニング
第5回:顧客の声を経営に活用するための課題解決法
著者:
野村総合研究所 神田 晴彦
2007/3/2
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経営層は顧客の声を知りたがっている
最近では「CS経営」や「顧客視点経営」などのスローガンを掲げている企業が多く見受けられる。これはCS(顧客満足度)が、重要な経営指標になりつつある1つの兆候といえる。しかし実際にはこのような「CS経営」を具体的に実行に移すことができている企業は非常に少ない。残念ながら、多くの企業は単なるスローガンの連呼でとどまっている。
ここで、CS経営の実現に悩んでいる企業から寄せられる代表的な悩みをまとめてみた。読者の皆様の所属する企業では、どの程度当てはまるだろうか。
経営への報告がない/遅い/フィルタがかかっている
経営層が具体的な指示ができない
事業部が顧客の実態を把握できていない
表1:CS経営の実現に悩んでいる企業から寄せられる代表的な悩み
それぞれについて個別に解説していく。
経営への報告がない/遅い/フィルタがかかっている
「経営層の6割は、顧客の声を把握できる環境にない」。これは過去NRIが実施した従業員500人以上の企業の経営層向け調査において明らかになったことである。これでは「CSだ」「顧客視点だ」と徹底させようとも、経営層は具体的な方針や施策を打ち出すことが難しい。
また経営層に適切なタイミングで報告がされていないという実情もある。当月分のコンタクトセンターに寄せられた声の報告を受けるのが、1ヶ月後になってしまっているという企業も多い。
これは
第1回
でその理由を取り上げたように、顧客の声は定量化しにくい情報であるため、集計に時間がかかってしまうためである。このような状態では経営層が品質上の課題を早期に発見したり、市場の動向をスピーディに判断することは困難であることはいうまでもない。
さらには経営層までの報告の間にフィルタがかかってしまうという悩みもある。何階層にもわたって報告の場や承認の場を設ける際に、介在したメンバーによる主観的な判断が加わってしまった結果、実態と乖離のある報告がなされてしまう傾向も事実として非常に多く見受けられる。また報告の確認や承認が滞ってしまい、必要なときに情報が手元にないという状況もある。
経営層が具体的な指示ができない
経営層に顧客の声が共有されていない場合や経営層にサマリレポートのみが報告されている場合、経営層は具体的な指示ができない。
例えば「製品Aは先月と比較して、苦情件数が1.2倍増加している」という報告があがってきたとしよう。その際に経営層は「件数を減らせ」という指示に留まらざるを得ない。または「なぜだか理由を調査せよ」という指示が飛び、再び報告と取りまとめるまでに時間がかかったり、再度フィルタがかかるなどの問題が発生する。
事業部が顧客の実態を把握できていない
アクションプランの実行に移す部署の社員の意識に関してもいくつか課題がある。経営層のみならず、社員が顧客の具体的な悩みや要望を把握できる環境にないと、「いざCS経営」といわれても、現場は何もできず、これまでと何も変わらない。事業部のメンバーがいつでも顧客に生の声に耳を傾けることができ、企業の視点とは異なる視点で自社の商品やサービスについて考慮できる環境が望ましいといえる。
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著者プロフィール
株式会社野村総合研究所 神田 晴彦
野村総合研究所ビジネスインテリジェンス事業部にてテキストマイニングを活用したCS調査や、データマイニング分析コンサルティングを数多く手がける。近年はテキストマイニングによるBlog分析やFAQ構築、品質管理・経営層向けのポータルサイトの構築を実施している。また人材育成プロジェクトも担当し、日本で最初となるテキストマイニング認定試験の企画に携わる。高度情報処理技術者(上級シスアド)。
INDEX
第5回:顧客の声を経営に活用するための課題解決法
経営層は顧客の声を知りたがっている
顧客の声を経営に活用する「顧客の声ポータル」
声の活用体制の構築