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Ajax時代到来
Ajaxではじまるサービス活用

第3回:老舗の意地 Yahoo!のリッチなAjax技術体系

著者:ピーデー  川俣 晶    2007/2/9
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大艦巨砲主義〜大ブランドの栄光と挫折〜

   Yahoo!といえば、インターネット上でもトップクラスの知名度を持つ大ブランドである。今回は、この圧倒的な存在感を持つブランドとAjaxの関わりについて見てみよう。

   さて、まずYahoo!というブランドの位置づけから確認してみよう。Yahoo!の歴史は、インターネットの歴史とは切り離すことができない。特に、1995年にインターネットの利用が学術研究限定から商業目的に解禁されてから以後、初期の段階において両者の発展は強い関連があったといえる。

   なぜ、ネットワークそのものと、その上で稼働するたかが1サービスであるYahoo!に強い関連が生まれたのだろうか。その理由は、まだコンテンツが少ない極初期の段階においてすら、すでに必要な情報がどこにあるか探すのが困難という状況が発生していたためだ。

   Yahoo!は、情報を探すための手助けを行うディレクトリとそれに対する検索機能を提供した。それはインターネットを使っていく上で、事実上必須の機能だったのである。ちなみに日本のYahoo!は、米国のYahoo!とソフトバンクが合弁で日本法人ヤフー株式会社を設立したもので、1996年にサービスを開始している。非常に早い時期にスタートしたといえるだろう。

   さて、初期のYahoo!を特徴づけるのは、情報を得るための手段として「ディレクトリ」という手法を採用したことである。ディレクトリとは、どこにどのような情報があるかを整理分類してまとめたもので、作成するのに手間と時間を要するが、非常に情報を探しやすい環境をユーザに提供する。

   例えばコンピュータという項目の中に「ハードウェア」と「ソフトウェア」という小項目があり、ハードウェアの中には「本体」や「周辺機器」といった分類が存在するわけである。そのような分類を辿っていくことで、容易に必要な情報にたどり着くことができる。分類がわからなくても、ディレクトリに対する検索を行えば、はずれが少ない良好な結果を得ることができる。

   一方、情報を探すもう1つの代表的な手段は「キーワード検索」である。あらかじめ、多数のコンテンツを集めておき、それに対して指定されたキーワードを持つWebサイトを探し出す仕組みである。この方法は、たまたま文字列が一致しただけでヒットしたと見なされるため、検索結果に多くの「ゴミ」が入り込みやすい。下手をすれば検索結果はゴミの山となり、膨大なゴミの中から自分が必要とするサイトを探し出さなければならないのだ。

   両者を比較すれば、Yahoo!が採用したディレクトリの優位性は明かだろう。Yahoo!は、より多くのサイトの情報を集め、ディレクトリを充実させていった。それだけではあきたらず、Yahoo!はディレクトリと並べ、ショッピング、オークション、ニュース、天気予報などの様々なサービスを拡充していったのである。

   とりあえずYahoo!に行けば必要なサービスはほとんど揃い、揃わないものも「ディレクトリ」を辿ればすぐに見つけ出せるという最強のサイトとして君臨することになった。

   いわばYahoo!黄金時代の到来である。

   貪欲に拡大していったYahoo!は、容易に覆せない絶対的な地位を比較的早い時期に獲得していたといえる。このハイペースな環境整備は、Yahoo!が優秀な才能に支えられた企業であることを示していると見てよいだろう。だが、そのことは逆にYahoo!をピンチに陥れることになる。そして、そのピンチこそが、現在のYahoo!のAjax戦略に強い影響を与えるのである。


GoogleとAjaxという危機

   Yahoo!はハイペースな成長により、完成度の高いシステムを比較的早い時期に作り上げることに成功した。これがYahoo!ブランドの躍進に役立ったことは間違いないだろう。だが、同時にこれは致命的な弱点にもなってしまったのだ。

   つまり、早期に完成度の高いシステムを作り上げるということは、その後のニーズと技術の変化に取り残されることを意味するのである。

   事実として、誰も予想しなかったインターネットの爆発的な規模の拡大によって「ディレクトリ」方式は破綻へと追いやられた。あまりにも新規に生まれるサイトが多くなりすぎ、それらを全て整理分類することができなくなっていたのだ。これは、Yahoo!がニーズの変化に対応できなくなっていたことをあらわしている。

   一方、Yahoo!のサービスは、そのほとんどが古典的なHTML技術によって構築されており、処理の大半はサーバ側で実行されていた。膨大なサービスの大半が、そのような構造ですでに稼働していたのだ。サービスが多いだけに、ユーザに対してストレスの少ないAjaxという新技術がでてきたからといって、そう簡単に切り換えることはできない。つまり、技術の変化への対応も困難であったのだ。

   これらの問題をテコにYahoo!をピンチに追い込んだのがGoogleだといえる。Googleは非常に優れた「キーワード検索」の技術で「ディレクトリ」に勝ち、そして開発中の新しい自社サービスに率先してAjaxの技術を取り入れていった。サービスの数も限られ、サイトも飾り気がなくシンプルなGoogleは、身軽にいつでもすぐに変わることができたが、自らを巨体に成長させることで勝者となったYahoo!は、巨体であるがゆえに容易には変われなかったのである。

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株式会社ピーデー 川俣 晶
著者プロフィール
株式会社ピーデー   川俣 晶
株式会社ピーデー代表取締役、日本XMLユーザーグループ代表、Microsoft Most Valuable Professional(MVP)、Visual Developer - Visual Basic。マイクロソフト株式会社にてWindows 3.0の日本語化などの作業を行った後、技術解説家に。Java、Linuxなどにもいち早く着目して活用。現在はC#で開発を行い、現在の注目技術はAjaxとXMLデータベース。


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INDEX
第3回:老舗の意地 Yahoo!のリッチなAjax技術体系
大艦巨砲主義〜大ブランドの栄光と挫折〜
  王者の反撃
  開発を支援する「Yahoo! User Interface Library」
Ajaxではじまるサービス活用
第1回 サービスを活用するAjax時代の到来
第2回 GoogleはWebの常識を塗り替えた
第3回 老舗の意地 Yahoo!のリッチなAjax技術体系
第4回 Windows Liveで見せるMicrosoftの懐の深さ
第5回 Flashを取り込んだAdobeのユニークAjax戦略
第6回 決定的勝者のいないAjax
第7回 Ajaxはどこへ行くのか