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「プロジェクト管理基盤」整備のススメ〜対症療法に陥らないために〜
第2回:プロジェクト管理の前提条件
著者:
ウルシステムズ 本園 敏文
2007/8/17
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多方面にわたる「人」の問題
「
第1回:プロジェクト管理基盤とは何か
」では、一般的なプロジェクト管理手法や知識体系に頼ってプロジェクトを進めていくことの難しさをみてきました。そして同時に、その知識を有効に活用するためには前提条件があるということを主張しました。
では、その前提条件とは何でしょうか。それは「人」の問題の解決です。
マネジメントの知識を有効に活用することの難しさは、プロジェクト管理の問題の多くが「人」の問題であり、定石や方法論だけで解決できるものばかりではないところに原因があります。形式的な知識が有効に活用されるためには、形式的にはおさまらない「人」の問題を解決しなければなりません。この問題の解決こそが、知識の有効活用のための前提条件といえるでしょう。
「人」の問題と一言でいっても、顧客との交渉から政治的圧力に関するものまで、その範囲は膨大です。それだけで分厚い本が書けてしまうくらいの大きなテーマであり、本連載で扱うには少々荷が重すぎます。
そこで今回は、「人」の問題を開発チーム内の話に絞り、顧客との関係や政治の話は除外して考えようと思います。後者も重要であることは間違いありませんが、まずは足元を固めるという意味で、前者に絞って考えます。
本稿では、知識の有効活用のための前提条件として、以下の3つの課題解決を提案します。
スキルを持つ個人
個人のモチベーション
チーム連携
表1:解決すべき3つの条件
それでは、以降この3つの条件についてみていきましょう。
第1の前提条件「スキルを持つ個人」
成功したプロジェクトというものは、システムの開発自体がうまくいっているプロジェクトです。もちろんプロジェクトには様々な目的があり、システム開発の成功がそのままプロジェクトの成功に直接結びつくとは一概にはいえません。
しかし少なくとも低品質なシステムが目的に据えられることはありません。成功のためには質の高いシステム開発が必須の条件になります。
さて、システム開発は、余程小さな規模でない限り、多くのメンバーによるチーム作業となります。当然、最終成果物であるシステムは、チーム内の個人成果物から成り立っています。
最終的なシステムの品質は、この個人成果物の品質に依存します。質の低い個人成果物が全体の一部に過ぎなければ、あるいはそれほど重要な機能ではないのであれば、その質の低さは目立たないかもしれません。
しかし目立つか目立たないかはここでの議論のポイントではありません。ここで重要なのは、
システムの品質は個人成果物の質に依存するという事実
です。
では質の高い個人成果物はどのようにして実現されるのでしょうか。最も重要なポイントは高いスキルを持つ個人です。ゆったりとした作業スペースや優秀なプロジェクトリーダーの存在、あるいは高スペックの開発マシンや高価な開発ツールといった具合に、プロジェクトを取り巻く開発環境がどれほど理想的なものであったとしても、スキルを持つ当の個人がいなければ質の高い成果物は期待できません。
モノを作るスキルがなければ、モノが出来上がることはありません。ところが失敗しているプロジェクトほど、この重要な点が軽視されているのです。
どれほど優れたプロジェクトマネージャーがどれほど優れたマネジメントツールを使っても、新人やスキルの低いメンバーばかりで構成されたチームで、プロジェクトを成功に持っていくのはとても難しいことです。
プロジェクトスタート当初は十分なスキルを持っていなくても、モノを作っていくうちに徐々にスキルが身につき、最終的にはモノを完成させることができるかもしれません。それは有効な手段の1つであり、事実、多くのプロジェクトではそのような学習効果を見込んでメンバーをプロジェクトに投入しています。
しかしそうであっても、スキルアップのための時間が無限に使えるわけではありません。スケジュールに間に合うくらいのスピードでスキルアップが達成できる程度には、その個人に元々の優秀さが備わっていなければなりません。
そうしたポテンシャルを含めて、スキルを持つ個人が重要です。
スキルを持つ個人
、これが前提条件の1つです。
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著者プロフィール
ウルシステムズ株式会社 本園 敏文
シニアコンサルタント。既存のプロジェクト管理手法と知識体系をベースに、曖昧・不確実な世界から目に見える結果を引き出すための、トータルなナレッジの確立および現場へのフィードバックが目下の関心事。
INDEX
第2回:プロジェクト管理の前提条件
多方面にわたる「人」の問題
第2の前提条件「スキルを持つ個人のモチベーション」
第3の前提条件「チーム内の質の高い連携」
これからどうするか