負けないERP提案

2005年11月18日(金)
鍋野 敬一郎

似て非なるもの

ERPの基本的な機能として、財務管理、販売管理、生産管理といった個々の業務システムの機能を内包していることがあげられます。そして、すべての機能は業務プロセス(ビジネスプロセス)で繋がっており、マスターの統合と全社のデータを一元管理するための統合データベースが完備されています。

この統合マスターと統合データベースというところがERPの特徴でもあり、別にERPパッケージと呼ばれるパッケージベンダーが開発したソフトを使わなくても、このコンセプトが採用されたシステムはERPであると呼んでもよいと私は考えています。

しかし実際には、業務ソフトを寄せ集めて無理やりERPと呼んでいる製品も世の中には存在します。こうした製品は、販売情報と財務情報の同期にタイムラグがあったり、受注から出荷、請求から回収に至る業務プロセス(ビジネスプロセス)に一貫性がなくデータに不整合が生じることがあります。

正直こうした製品はERPと呼べないと思うのですが、ERPという名称のほうが売りやすいので勝手にセールストークとして使っているようです。見ている目線が違っているのですから、やはり業務ソフトとERPパッケージでは「似て非なるもの」といってよいと思います。

大企業ではERPパッケージを業務システムの一部として活用することもあります。その理由は、ERPが業務システムとしても十分な機能を備えておりかつ短期間での導入が可能だからです。

しかし、本来10ある機能を1、2しか活用していないわけですからコストパフォーマンスがよい使い方とはいえないのが事実です。業務ソフトとしてERPパッケージを採用した場合、他システムとの連携のためインターフェースのアドオン開発費が必要になります。

また保守サポートのためのメンテナンス費用やアップグレード費用も業務ソフトより高額です。お金や人員に余裕がある大手企業には可能な使い方ですが、信頼を失いかねないので中堅・中小企業のお客様に提案する際には真似しないことをお勧めします。

お客様へのメッセージ

ERPパッケージは、業務ソフトの機能を内包しており特定の業務システムとしても機能させることも可能です。しかしERP本来の強みは、経営者の視点で全社にまたがった業務プロセス(ビジネスプロセス)の切り口で情報を統合管理することにあり、部門間の情報共有・統合を意識した仕組みが特徴です。

ERPパッケージの強みは、部門間の壁をなくしガラス張りにできるマスターの統合と全社のデータを一元管理するための統合データベースを備えているところにあります。したがってERPパッケージを導入するためには、関係する全部門の参加と協力が必須となります。当然のことながら経営者が最高責任者となり、経営を良くするためのITという位置づけが重要です。

ERPパッケージの導入を成功させる秘訣は、異なる部門が協力してERP導入を行うことです。間違っても、「ERP導入作業はすべて我々コンサルタントにお任せ下さい。」などとはいわないほうが良いと思います。お客様の部門間の壁を取り払えるのは、やはりお客様だけだと思います。

次回は、ERP導入効果を最大化するというテーマで「BPRとERP導入」について説明します。

1966年生まれ。同志社大学工学部化学工学科卒業後、米国大手総合化学会社デュポン社の日本法人へ入社。農 業用製品事業部に所属しマーケティング責任者などに従事。1998年よりERPベンダー最大手SAP社の日本法人SAPジャパンに転職しマーケティング担 当、広報担当、プリセールスコンサルタントを経てアライアンス本部にてmySAP All-in-Oneソリューション立ち上げを行った。現在はERPベンダーのマーケティング・アライアンス戦略の支援や、ERP導入業者のビジネス活動 の支援に従事。

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