SMB市場におけるSCMの導入実態

2006年1月30日(月)
伊嶋 謙二

SCM導入の予定がないユーザが全体の6割弱

ノーク・リサーチが実施した「中堅・中小企業のIT/ソリューションの導入・利用実態調査」によると、2005年のSCM導入状況は図1のように なった。2004年と比較して大きな変化はないが、「関心はある」という回答が減り、「予定はない」という回答が増えるというSCM導入についてネガティ ブな傾向が目立つようになった。

SCM導入状況
図1:SCM導入状況

さらに年商別(図2)/従業員数別(図3)に区切って細かく見ると、規模が小さくなるほどSCM導入に対してネガティブな回答が多くなる傾向が見られる。
 

年商別SCM導入状況
図2:年商別SCM導入状況
(画像をクリックすると別ウィンドウに拡大図を表示します)
従業員数別SCM導入状況
図3:従業員数別SCM導入状況
(画像をクリックすると別ウィンドウに拡大図を表示します)

SMBにSCMが浸透しない理由

ここで、SMBにSCMが浸透しない理由について整理する。

SMBユーザのSCMに対するイメージの不明瞭性

「SCMとは何なのか」ということがわかりにくく、SCMを敬遠するSMBユーザが多いのではないかと思われる。第2回「SMB市場におけるERPパッケージの導入実態」ではイベントやセミナーの増加でERPという言葉にSMBユーザが触れる機会が増えたと述べた。

それはSMBユーザのERPに対するリテラシーの向上につながった。しかし、SCMについてはまったく逆である。筆者が足を運んだイベントなどにつ いていえば、SMB向けのSCMソリューションに関するコーナーはみあたらなかった。このような状況では、SCMに対するSMBユーザのリテラシの向上は 難しいだろう。

SCMソリューションの絶対数が少ない

SMBユーザがSCM導入を検討し、ベンダーの選定段階に入ったときにある問題が発生する。SMB向けのSCMソリューション自体が少なく、選択肢として外資系ベンダーによる大企業向けのソリューションが多くなる。

そのため、高価格のソリューションであるSCMはSMBのユーザにとって手が届きにくい存在になってしまうのだ。ERPのように多数のプレイヤーが競い合い、ソリューションの品質が向上かつ低価格化していくという構図がSCMではできにくくなっている。

日本型ソリューションの問題

外資系ベンダーでは日本の商習慣に完全にカスタマイズしたソリューションを提供するのは難しいと思われる。しかし、現状では日本の商慣習を完全に理 解できる国産ベンダーが少ないため、ユーザが自社のスタイルに合ったSCMソリューションを見つけられないことが多い。

SMBがSCMに対する関心がないというわけではないことは、先の図1〜3から明らかである。しかし、現状は「SCMソリューションの導入検討段階 に入ったのに、ニーズを満たすソリューションがない」という状況であり、そのような需要の芽を摘むような事態だけは避けるべきである。

SMBはITシステムを選定する際、ソリューションにあわせて業務を変更するよりも、自社の業務プロセスに適合するソリューション導入を望んでいる。実はこの点こそ、日本型ソリューションの本質であり、国産ベンダーに期待するのはこの点にかかっている。

有限会社ノーク・リサーチ

1956年生まれ。1982年、株式会社矢野経済研究所入社。パソコン、PC(IA)サーバ、オフコンなどを プラットフォームとするビジネスコンピュータフィールドのマーケティングリサーチを担当。とくに中堅・中小企業市場とミッドレンジコンピュータ市場に関す るリサーチおよび分析、ITユーザの実態を的確につかむエキスパートアナリスト/コンサルタントとして活躍。1998年に独立し、ノーク・リサーチ社を設 立。IT市場に特化したリサーチ、コンサルティングを展開すると同時に、業界各誌への執筆活動も積極的に行っている。
ホームページ:http://www.norkresearch.co.jp/

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