図解からユースケース抽出する!
ビジネス寄り視点からシステム寄り視点への転換
前回は、SBVA法の5つのプロセスのうち、「1. 記述」と「2. 総合」までの作業の流れについて具体的な例を交えながら解説した。今回は残りの分析プロセスである「3. 編集」から「5. 構成」までを詳しく解説していく。
ここで、「2. 総合」までの分析プロセスを簡単におさらいしておこう。まず、非技術者にとっても扱いが簡単な自然言語により、As-Isの業務の流れをシナリオで記述する。次に非常に単純な記法とルールにより、記述したシナリオから業務全体を鳥瞰できる図解を得る。
「3. 編集」から「5. 構成」では、業務鳥瞰図における作業要素の粒度を調整して業務を理解しやすくし、鳥瞰図上でシステム境界を決定してユースケース図を導出するという流れになる。
SBVA法において、この「3. 編集」が一番のキモとなる。業務を一覧できるこの図の編集を通してドメイン全体とシステム化への過程を理解し、ステークホルダ全員が「あるべき姿」への合意を形成していくのである。最終的には、ユースケース図という成果物を得ることができる。ユースケースを得ることも重要であるが、この合意を形成していくプロセスこそが重要であると著者は考える。
業務鳥瞰図の編集
「第2回:図解化が生むメリットとは?(http://www.thinkit.co.jp/article/43/2/)」でも述べたが、分析の目的によってビューポイントや抽象度、粒度の調整が必要になる。SBVA法では、業務鳥瞰図の編集により、VGA空間の調整を行っていく。この各座標の調整において、分析者の試行錯誤が必要となる。
「3. 編集」では、さらに「3.1 配置」「3.2 統合」「3.3 分解」「3.4 境界」の4つの手順を踏んでアクターとユースケース、システム境界を決定する(図1)。
まずは分析者が作成した業務鳥瞰図を眺め、現在の業務を理解することから始める。これはすでに前回述べた「2. 総合」作業において、業務手順書を業務鳥瞰図へ変換していく過程である。今一度、完成した鳥瞰図を俯瞰・視認することで業務全体を把握する。この段階で把握・理解した業務内容に基づいて粒度の調整を行っていく。
「3.1 配置」では、分析者が業務鳥瞰図における各要素の配置を変更し、見やすく整理する。
「3.2 統合」では、分析者が業務鳥瞰図における粒度の細かい要素について統合し、粒度を粗くする。「3.3 分解」では、「3.2 統合」とは逆に粒度の粗い要素を分解し、粒度を細かくする。前回、シナリオを記述する時には粒度を意識せずとも良い、と述べたのはこの「3.2 統合」と「3.3 分解」により調整が可能だからである。それ以外にも、粒度を意識してシナリオを記述するのは技術的にも難しく、非技術者である記述者への配慮という意味もある。
そして最後の「境界」では、分析者が記述者とともに業務鳥瞰図の上にシステム化の対象となる範囲を設定・変更する。以上のような操作で、ユースケース図を構成する要素を分析していく。