地方の空き家・空き地はビジネスのチャンスの場。地域おこし協力隊の制度を活用した起業支援がある茨城の魅力に注目!
9月6日(金)、いいオフィス上野 by LIGにて地方で自分らしく働く― 移住×インバウンド×観光-地域おこし協力隊の制度活用した起業支援が開催された。
開催に先立ち、NPO法人まちづくりGIFT事務局の稲田佑太郎氏によるアイスブレイクがあった。2、3人のグループに分かれ、呼ばれたいニックネーム・今の気持ち・参加した理由等を共有した。
日本を地方からより格好良くしたい!
アイスブレイクに続いて、NPO法人まちづくりGIFT代表の斎藤潤一氏より、本イベントの趣旨は「茨城県の起業型地域おこし協力隊の募集」であることが伝えられた。
以前、シリコンバレーのITベンチャーでブランディング・マーケティング責任者として働いていた経験がある斎藤氏。海外から見た日本は格好良く見えていたが、日本に帰ってきて見えた世界は、シャッター通りや耕作放棄地が広がり、地域が衰退している様子に、とても危機感を覚えたそうだ。東日本大震災を機に現在は地域にビジネスの仕組みを取り入れ、持続可能な町づくりや全国各地で起業家育成・ソーシャルビジネスを教えている。
ミニマムライフの保証あり
斎藤氏は、「移住したい、けど移住しない」理由として「仕事とお金の問題だ」と指摘する。そこで、茨城県北ローカルベンチャーラボでは、月額166,000円・滞在中の家賃・起業に際する活動資金が最大3年間支給される、という3点を地域おこし協力隊への支援として採用している。「ミニマムな金額ではあるが、一緒に仕事を創っていきましょう」というのが今の気持ちだ」と語った。
また、金銭的な援助だけでなく、移住するための順序として、まず「どのようにしたら起業できるのか」を学ぶ勉強会の実施や、「実際に自分とフィットするのか」を確認する現地視察、そして「現地の起業家と会い繋がりを作る」など現地でのネットワーキングに至るまでサポートするという。
今回、茨城県内で起業型地域おこし協力隊を募集しているのは2つの市町村だ。1つは日立市。日立市の課題は「山側住宅団地におけるコミュニティビジネスの企画プロデュース」と「中国・台湾インバウンド向けシティプロモーション」である。もう1つは大子町。大子町の課題は「地域支援を活用した空き家・廃校再生、商店街活性化プロジェクト」「体験型コンテンツの企画プロデュース」「地域資源の有効活用や地域課題の解決に繋がる地域に根差したビジネスプロジェクト(自由提案)」である。
茨城県北地域の現状と課題、日立市・大子町の特徴
斎藤氏によるイベントの趣旨と起業型地域おこし協力隊の解説後、茨城県政策企画部 県北振興局 飯村勝輝氏より、茨城県北地域の状況と抱えている課題について説明があった。
茨城県北地域の大きな課題として、人口減少・少子高齢化・若者の地域外への流出・担い手不足が挙げられる。茨城県の人口は約290万人、そのうち茨城県北地域の人口は約35万人だ。茨城県の面積の3割ほどを占める県北地域に、人口の1割以上が住んでいる計算になる。
飯村氏は「このような人口減少は今後20~30年に日本全国で起こりうる問題であり、行政としては今のうちから善後策をとっておきたいという思いがある。県北地域の強みとしては、地域コーディネーターの和田昴憲氏等と連携しながら起業をサポートできることだ」と強調した。
飯村氏の説明に続いて、いよいよ日立市と大子町のプレゼンテーションとなった。
日立製作所発祥の地、日立市
日立市は人口176,000人、海岸から5Kmほどのところに市街地と工場地帯が立ち並ぶ都市だ。「日が登るところの美しさ」が日立市の名前の由来である。上野駅から約1時間半で行ける、海と山に囲まれた場所だ。高齢化による地域活力の低下と、空き家・空き地の急激な増加が課題だが、その課題をビジネスチャンスへ転換する方策の提案を促した。
また、インバウンド向けプロモーションとして、日立市は世界的に有名な日立製作所発祥の地であり、また、海鵜が獲れるのは日本で日立市のみ、という2点を強調。インバウンド向けの政策は未開拓。ぜひ、外国から日立市へ誘致してほしい、日立市を世界の人に知ってほしいとアピールした。
豊かな自然に抱かれ資源も豊富な大子町
続いては、大子町だ。人口は17,000人、町の8割は山に囲まれており、人口の44%以上を超高齢者が占める。日本三名瀑の袋田の滝や月待の滝が観光スポットとなっており、年間50万以上の観光客を集めるが、街の中心部にある商店街までは観光客の足が伸びず、商店街はシャッター通りとなっている。
奥久慈しゃも、鮎、りんご、茶など特産品が豊富なほか農林業も盛んな地域であり、林業界で良い木材とされる八溝杉があるが、商品開発に繋がっていないという。また、ゆたかな森林の中での結婚式やセラピーなどへの活用を進めているとのことだった。
トークセッション ―茨城県のために自分ができること
日立市、大子町のプレゼンテーションに続き、トークセッションが行われた。まずは、登壇者の自己紹介から。
1人目は、ADDress代表の佐別当隆志氏。ADDressは2019年4月より始まった、月額4万円で全国24箇所(年末には50箇所になる予定)の多拠点に住めるコリング(シェアハウスとシェアオフィスを融合したもの)サービスを提供する。地方の少子高齢化の課題を目の当たりにしたことから、シェアリングシティ(シェアを活用した街づくり)で地方の課題を解決できないか活動している。
2人目は、旅するおむすび屋の菅本香菜氏。2019年3月からフリーランスとして食の仕事を中心に活動。実店舗はなく自ら地方に出向き、その地域の食材を使い地元の方と一緒におむすびを結んだり、総務省の「地域力創造アドバイザー」にも任命されており、地域の食材の魅力を都市へ発信するなど、自治体とともに幅広い層の人たちとおむすびを通して縁を結んでいる。
※かおりさん:菅本さんだけ分量が少ないので、何か内容を追加できますか(他の人の文量を調整)?
3人目は、ローカルベンチャースクールの卒業生で、二級建築士の加藤雅史氏。一級建築士の資格取得の困難さからコンプレックスを持っていた加藤氏は、「一級建築士とは違う職能で活躍できないか」と水戸市で商店街に店舗を誘致し、商店街を活性化。「見返してやる!」から「面白い!」に気持ちが変化する中で、地域活性化に携わるようになったという。
最後は、本イベントのコーディネーターでもある日立市出身の和田昴憲氏。「ただいま」と言える場所がある幸せや、忙しい中でも家族との時間の大切さに気づいたことが起業に至った経緯から「地元に貢献したい」と思うようになったとか。自分の強みであるコーヒーを、家族で楽しんで飲んでもらう時間を増やしてほしいという思いで活動している。
トークセッション「茨城県のために自分ができること」
- 佐別当:空き家をイノベーションして、シェアハウスなど人の集まるコミュニティ作りをしていきたい。ADDressでは地域それぞれのシェアハウスに家守(シェアハウスの管理者)がいて、その地域と滞在者を繋げ、地域のコミュニティに密接に関われるような仕組みになっている。最終的には、全国を移動しながら住めるような分散型のコミュニティを作ることで、これから増えると言われている多拠点生活者の拠点を茨城でも作りたい。
- 菅本:大子町のコシヒカリを観光コンテンツにして、森で湧き水を使って炊いたコシヒカリでシャモの炊き込みご飯を作り、名水を使った日本酒があれば紅葉の時期にみんなで乾杯できるなと、今話を聴きながら思いついた。
- 斎藤:話を聞いていると、以前は本当にマネタイズできるのか? と思われるようなアイディアでも、現在では可能な世の中になっていると実感する。特に体験型のコンテンツはビジネスになってきている。
- 加藤:正直、「何をやっても角は立つ」のが現実で、トラブルもつきもの。そこでどう折り合いをつけていくかが大切だ。よそ者を受け入れる人もいれば、受け入れない人もいる。地域の困りごと(掃除や建て付けの修繕など)を助けるなど、地道なことの積み重ねで徐々に信頼関係を築いたことが商店街の活性化に繋がったので、今後も継続していきたい。
- 斎藤:様々な課題に対して、行政と相談しながら進めたり、個人に助けを求めたりというのは、地域との繋がりを構築する上での醍醐味の1つだ。和田さんにお聞きしたいのですが、新しいことに挑戦するには「おそれ」があると思うが、どのように向き合ってきましたか。
- 和田:最低限の暮らしを支援してくれた人がいたこと、挑戦することを後押しし、何をしても裏切らない仲間やコミュニティ・文化があったことが、自分にとっては大きかった。
* * *
最近では千葉や長野、福島等で大きな台風被害が発生するなど、日本は災害大国である。全国の空き家問題を拠点作りに活用する取り組みは、災害時等でも頼れる居場所作りにもなりうるだろう。地域ごとに様々な顔を持つコミュニティがあり、助け合える関係は人生の深みや価値にもなってくるのではないかと感じた。茨城県の地域活性化の課題は、全国の課題でもある。
自分で体験することに勝ることはない。少しでも本記事で茨城県北に興味が出てきたという方は、ぜひ一度自らの足で訪れてみてはいかがだろうか。きっと新しい発見があるはずだ。
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