オープンソースのストレージプロジェクトSODAがコミュニティミーティングを実施。最新のリリースなどを解説

2022年11月1日(火)
松下 康之 - Yasuyuki Matsushita
オープンソースのストレージプロジェクトSODAのチェアマンが来日し、コミュニティミーテイングを開催した。

オープンソースのストレージプロジェクトであるSODAが、2022年12月7日に開催されるSODACONに先駆けてコミュニティミーティングを開催した。トヨタ、NTT、ソフトバンクなどのメンバーが参加して、プロジェクトの最新情報を紹介したほか、12月に行われるSODACONに関する意見交換などを行った。この記事では来日したSODA FoundationのガバニングボードのチェアマンであるSteven Tan氏のプレゼンテーションを引用して、SODAの現状を紹介する。

ミーティングルームはトヨタの丸の内オフィスで開催された

ミーティングルームはトヨタの丸の内オフィスで開催された

参加者はトヨタ、ソフトバンク、NTTなど、エンタープライズの情報システムをよく知る企業のエンジニアなどだ。Tan氏によるSODAの最新情報に続いて各自が自己紹介、続いて12月のイベントに関する意見交換などが行われた。

参加者はマスク着用、アクリル板の仕切りがある環境で意見交換を行った

参加者はマスク着用、アクリル板の仕切りがある環境で意見交換を行った

SODA FoundationはThe Linux Foundation配下の組織として構成されており、CNCFと同じような組織構成でコミュニティの醸成を行っている。以下の組織構成は全体を統率するガバニングボード、技術的な方向性などを管理するTOC(Technical Oversight Committee)、エンドユーザーからのリクエストを吸い上げるEUC(End User Advisory Committee)などが構成されており、CNCFで成功した方法論を踏襲しているのがわかる。

CNCFによく似た組織構成

CNCFによく似た組織構成

CNCFでも存在感を示していたCheryl Hung氏がアドバイザーとして参加することも組織のトピックだろう。

SODAはオープンソースのソフトウェアデファインドストレージとして当初はOpenSDSと呼ばれていたが、2020年に名称をSODAに変更した。すでに多くのリリースを行っているが、リリース名はアルファベットのAから始まって土地の名前を付けていくという方式を採用している。OpenStackが街の名前を、Automotive Grade Linuxが魚の名前をアルファベット順に付けているのと同様の方式だ。2022年6月の時点で、Madagascarというリリースが発表されている。

SODAの概要。ベンダーロックインをしない、拡張が可能などのゴールを掲げる

SODAの概要。ベンダーロックインをしない、拡張が可能などのゴールを掲げる

フレームワークを紹介するスライドでは単にオープンソースというだけではなく、マルチクラウドを睨んだ横断的な利用を想定したデータ管理機能を組み込もうとしていることがわかる。

SODAはその機能ごとにサブプロジェクトに分かれており、次のスライドではSDSのコントローラーであるTerra、モニタリングのDelfin、マルチクラウドのデータマネージャーStrato、コンテナのデータ保護を行うKahu、複数のストレージを横断的に管理するデータレイクのComoなどが紹介された。

SODAのサブプロジェクト

SODAのサブプロジェクト

ここからはサブプロジェクトの中で目新しい機能をいくつか紹介しよう。

Delfinはモニタリングを担当

Delfinはモニタリングを担当

Delfinはモニタリングのためのプロジェクトだが、単にモニタリングするだけではなく予測分析と自動修復などがユースケースとして挙げられていることから、最近のトレンドに沿っていることがわかる。

KahuはKubernetesのバックアップとリストアを行うプロジェクト

KahuはKubernetesのバックアップとリストアを行うプロジェクト

Kahuはクラウドネイティブなシステムにおけるバックアップとリストアを担当。EMCやNetAppなどのエンタープライズ向けストレージとパブリッククラウドのストレージを対象として機能することを目的としている。

Comoは複数のストレージをまとめてストレージプールとして扱うためのプロジェクト

Comoは複数のストレージをまとめてストレージプールとして扱うためのプロジェクト

バーチャルデータレイクとして紹介されたComoのスライドにソフトバンクのロゴが使われているのは、主にソフトバンクがコードを提供していることを表しているのだろう。Comoはまだ新しいプロジェクトのためか、現状ではGitHubのリポジトリにはほぼ何もない状態だ。

SODAはマルチクラウドを強く意識しているが、その理由はサーベイの結果として、80%のエンタープライズ企業が複数のパブリッククラウドを利用していることが背景にあるという。そして複数のパブリッククラウドを利用する際に発生するコストの高騰、セキュリティの分断、運用の難しさ、などの問題点を解決するために、単一のAPIを通して管理が行えるようにすることがSODAのマルチクラウドに対するゴールであることを紹介した。

単一のAPIで複数のクラウドストレージを包括的に管理するのが目的

単一のAPIで複数のクラウドストレージを包括的に管理するのが目的

サブプロジェクトがそれぞれマルチクラウド実装に向けて進んでいる

サブプロジェクトがそれぞれマルチクラウド実装に向けて進んでいる

また、ただ横断的にストレージを管理するだけではなく、その上にデータプールを作って抽象化しようというのがData Poolのコンセプトであると紹介。ここではAWS、GCP、Azureにそれぞれ確保されたストレージから、用途に合わせて横断的に利用することを想定しているようだ。

クラウドをまたいだデータプールのコンセプト図

クラウドをまたいだデータプールのコンセプト図

ソフトウェアに関する解説はここまでで、ここからは過去のコミュニティ活動を振り返って2022年12月以降の活動に対する意見交換を行った。2019年のSODA Forum、KubeCon NA 2021の活動、インドでのカンファレンスなどが紹介され、日本におけるテクニカルなカンファレンスの状況、コンテンツとして発信したい情報などについて各社からも意見が出されていた。特に日本の感染対策の観点からパーティなどの交流をどうやって実施するのかなどについて、すでに多くのカンファレンスが新型コロナウイルスによるパンデミック発生以前の姿に戻りつつある北米と対比して、意見交換が行われていた。

12月7日の開催までそれほど時間はないが、多くのフィードバックが行われたことは貴重だったと言える。12月5日と6日のOpen Source Summit Yokohama 2022に併催されるSODACONに期待しよう。

登録は以下から。

SODACONへの登録ページ:https://events.linuxfoundation.org/sodacon-japan/register/

Open Source Summit Japan 2022公式ページ:https://events.linuxfoundation.org/open-source-summit-japan/

著者
松下 康之 - Yasuyuki Matsushita
フリーランスライター&マーケティングスペシャリスト。DEC、マイクロソフト、アドビ、レノボなどでのマーケティング、ビジネス誌の編集委員などを経てICT関連のトピックを追うライターに。オープンソースとセキュリティが最近の興味の中心。

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